王者野尻は“変化”を実感。「良かった」「変わらない」「抜ける」とさまざまな声も【SF23インプレッション】

2023年3月6日(月)12時24分 AUTOSPORT web

 3月6日から鈴鹿サーキットで行われている全日本スーパーフォーミュラ選手権の第1回公式テストに先立ち、3月4〜5日に同地で開催されたモータースポーツファン感謝デーで今年から導入される新型車両SF23の走行セッションが設けられた。昨年までのSF19と比べてダウンフォース量が減っていたり、前走車により接近しやすいマシンになるように設計、開発されたのだが、実際に乗ってみた印象はどうだったのか。そのファーストインプレッションを数名のドライバーに聞いてみた。


 ファン感謝デーでは、4日(土)にシェイクダウンセッションとして1時間走行が設けられたが、全チームともにSF23のパッケージでは初走行ということもあり、細かなトラブルを抱えるチームもいた。セッション後半にラウル・ハイマン(B-MAX RACING TEAM)がヘアピンでストップしてしまい赤旗中断となる場面があったが、それ以外は順調にセッションが進行した。


 5日(日)午前9時から30分間のフリー走行でも、各車が積極的に周回を重ねデータ収集を行なっていたが、セッション終盤にリアム・ローソン(TEAM MUGEN)が1分36秒721でトップタイムを記録。今季デビューを果たすルーキーがいきなりの速さをみせた。


 そのローソンは、SF23について比較的良い第一印象を持っているようだ。


「第一印象は良かった。最初は、ダウンフォースが減っていると予想はしていたけど、実際に乗ってみたら昨年テストした時(12月のルーキー/合同テスト)と似ている印象だった。最初のセッションから周りと遜色ないタイムを出せているので、月曜日からのテストに向けては良い準備ができた。そこは良い驚きだった。あとは、今回からレッドブルのフルカラーリングになって、すごく良い感じだなと思っている」


 フリー走行でのトップタイムだったこともあり、SNSなどではローソンのパフォーマンスに驚くファンの声も多数あったが、当の本人は「トップタイムではあったけど、一番重要なのは月曜と火曜のテストだ。このフリー走行でもみんな違うことをやっているから、この結果だけで喜ぶことはできない」と冷静に分析。


「今年からエアロパッケージが変わったとはいえ、僕自身はまだまだスーパーフォーミュラで経験しなければいけないことがある。とにかく2日間のテストでたくさんのものを収穫したい」と、開幕前に2日間しかないテストで、可能な限り経験値を積みたいと語った。


 今年もP.MU CERUMO/INGINGから参戦する阪口晴南も「あまり変わらない」という感想だった。


「良くも悪くも、あまり変わらなかったです。逆になじみやすかったなという感じです。でも、他の関係者に聞いたら『同じだった』という人と『全然、昨年とは違う』という人がいて、面白いなと思いました」


「昨年良くなかったので、変わってほしかったところはありますけど……逆に昨年のように突き詰めていけるので、『イチからやり直さないといけないというわけではないんだな』というのが分かりました。昨年のデータがまったく参考にならないという感じではないですし、改善したいポイントは昨年までとすごく似ている印象でした」


 いずれにしても課題を抱えているのは確かな様子の阪口。「この2日間のテストが、開幕に直結すると思っています。課題となっているところが直らなかったら結構厳しいと思うので、そこはしっかりと直して、頑張りたいなと思います」と気を引き締めていた。


 これらに対し、“変わった”という感想を口するドライバーもいた。なかでも一番違いを感じている印象だったのが、2年連続王者に輝いた野尻智紀(TEAM MUGEN)だ。


「僕が乗っていたSF19と比べるとダウンフォースが少ないなという印象です。周りの選手とかチームとか、特にダウンフォースがそこまで多く取れていなかったチームは『あまり変わらない』という印象を持っていると思いますけど、昨年僕たちが速かったことを含めて考えると(昨年は)ダウンフォースがしっかり取れていたのにたいして、今はまだ取りきれていないのかなという感じです」


 本格的なセットアップの作業に入っていくのは、月曜からの公式テストになると思われるが、現時点での野尻の感想は「(昨年と比べると)けっこう違うという印象ですね。ここから先がけっこう大変だなと感じています」とのこと。3連覇に向けて、ここからどう合わせ込んでくるのかが、テストでの見どころとなりそうだ。


■「おいしいところが変わっている」と牧野任祐


 同じくホンダエンジン搭載車で戦う牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)も、空力の部分で違いを感じている様子だった。


「エアロは変わっていますし(ダウンフォースの)出し方と出方はけっこう違うなと思います。特にエアロの出し方が難しいのかなと思いました。昨年までと比べて、ピークというか美味しいところがけっこう変わっているなという印象があるので、そこの美味しいスポットを見つけないといけないかなと思っています」


 このSF23ではバトルの機会を増やすために、前走車の背後につきやすいようなマシン作りをテーマに開発が行われてきた。早速、牧野もそういったシチュエーションがフリー走行中にあったというが「やっぱりエアロは抜けますね。まだレースをやっているわけではないので、実際のところは分からないですけど、後ろにつくシチュエーションでは全然抜けていたので、そこに関しては正直変わらないのかなと思いました」と語った。これに関しては、シーズンが始まってみないと分からない部分もありそうだ。


 さまざまな第一印象があるのだが、ファン感謝デーでの走行時間が限られていることもあり、SF23の特性を正確に理解できていないチームやドライバーが多いということも事実。昨年、鈴鹿サーキットで行われた第9戦と第10戦では予選2番手を獲得する速さをみせた宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)は、新パッケージについて「第一印象は……分からないです」とコメント。SF19と比べて大きく変わったという印象は受けていないようだ。


「何か変わった感じはないです。ダウンフォースが減ったという話も聞いていましたけど、タイムもそんなに遅くないですからね。ただ、前のクルマの後ろについた時にダウンフォースが抜けるというのは(ファン感での走行では)まだ経験していないので、そこは分からないですね」


「ストレートスピードでやたら速いクルマもいれば、逆にスピードが出ていないクルマもいるので……分からないですね。あとは、タイヤもちょっとよく分かっていないので、そこも含めてうまくやれればなと思います」


 今年は新パッケージが導入されたのだが、3月から4月にかけて国内レース界で問題となっている過密スケジュールの対策として、富士スピードウェイでの開幕前公式テストがなくなった。その分、鈴鹿テストの2日間で開幕戦に向けた理解を進めなければいけないということもあり、各チームとも大忙しのテストセッションとなりそうだ。

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