優勢ドゥカティ勢にホンダ・ヤマハの逆襲なるか。22名のライダーとチーム紹介【2024年MotoGPをイチから学ぶ/後編】

2024年3月7日(木)10時55分 AUTOSPORT web

 3月8日から10日にカタールで開幕戦を迎える2024年シーズンのMotoGP世界選手権は、今年も5メーカー22台が参戦。開催レース数は、昨年を上回る全21戦と史上最多のシーズンとなる2024年シーズンの見どころを前編・後編のふたつにわけてお届けする。


 レギュレーションについて紹介した前編に引き続き、後編では今シーズン参戦する5メーカーの注目ポイントをそれぞれ解説。マルク・マルケスのホンダ離脱など大きく変わった2024年のライダーラインアップを紹介する。


* * * * * *


■2024年のチャンピオン候補と戦力図


 2023年は、最終戦バレンシアまでチャンピオン争いが繰り広げられたMotoGPクラス。今シーズンの戦力図はどう変わるのか? 各メーカーごとに今季の注目ポイントを紹介しよう。


■2024年MotoGPクラスエントリーリスト














































































































































No.RiderTeamMotorcycle
1フランセスコ・バニャイアドゥカティ・レノボ・チームドゥカティ
5ヨハン・ザルコLCRホンダ・カストロールホンダ*
10ルカ・マリーニレプソル・ホンダ・チームホンダ
12マーベリック・ビニャーレスアプリリア・レーシングアプリリア
20ファビオ・クアルタラロモンスターエナジー・ヤマハMotoGPヤマハ
21フランコ・モルビデリプリマ・プラマック・レーシングドゥカティ*
23エネア・バスティアニーニドゥカティ・レノボ・チームドゥカティ
25ラウル・フェルナンデストラックハウス・レーシングアプリリア*
30中上貴晶LCRホンダ・イデミツホンダ*
31ペドロ・アコスタレッドブルGASGASテック3ガスガス
33ブラッド・ビンダーレッドブルKTMファクトリー・レーシングKTM
36ジョアン・ミルレプソル・ホンダ・チームホンダ
37アウグスト・フェルナンデスレッドブルGASGASテック3ガスガス
41アレイシ・エスパルガロアプリリア・レーシングアプリリア
42アレックス・リンスモンスターエナジー・ヤマハMotoGPヤマハ
43ジャック・ミラーレッドブルKTMファクトリー・レーシングKTM
49ファビオ・ディ・ジャンアントニオプルタミナ・エンデューロVR46レーシング・チームドゥカティ*
72マルコ・ベゼッチプルタミナ・エンデューロVR46レーシング・チームドゥカティ*
73アレックス・マルケスグレシーニ・レーシングMotoGPドゥカティ*
88ミゲール・オリベイラトラックハウス・レーシングアプリリア*
89ホルヘ・マルティンプリマ・プラマック・レーシングドゥカティ*
93マルク・マルケスグレシーニ・レーシングMotoGPドゥカティ*


*はインディペンデントチームライダー


■ドゥカティ
 昨年シリーズを席巻したドゥカティは2022年に引き続きコンストラクターとチームも制覇して主要3タイトルを独占。ファクトリーのドゥカティ・レノボ・チームは、3連覇を目指すフランセスコ・バニャイアがディフェンディングチャンピオンとして、ゼッケンナンバー『1』で参戦。チームメイトは、昨年チームに加入したエネア・バスティアニーニが務める。


 昨シーズンは、7勝を挙げ激しいチャンピオン争いを制したバニャイア。2016-18年のマルク・マルケス以来の3連覇となるだろうか。一方、移籍1年目となったバスティアニーニは苦戦を強いられたが第18戦マレーシアで待望の移籍後初勝利を挙げ、今シーズンの巻き返しに期待がかかる。


2024MotoGP:フランセスコ・バニャイアとエネア・バスティアニーニ(ドゥカティ・レノボ・チーム)

2024MotoGP:フランセスコ・バニャイアとエネア・バスティアニーニ(ドゥカティ・レノボ・チーム)


 最終戦までバニャイアとタイトルを争ったホルへ・マルティンは、今年もプリマ・プラマック・レーシングから参戦。チームメイトには、新たにヤマハから移籍してきたフランコ・モルビデリが務める。昨年は4勝を挙げたマルティン、今シーズンもチャンピオン候補のひとりとして活躍が期待される。マシンはファクトリー仕様のデスモセディチGP24を使用。


2024MotoGP:バーレーン・インターナショナル・サーキットで行われたプリマ・プラマック・レーシングの体制発表会の様子

2024MotoGP:ホルヘ・マルティン(プリマ・プラマック・レーシング)


 今シーズン、いちばんの注目チームがグレシーニ・レーシングMotoGPだ。2022年からドゥカティのサテライトチームとして活動するこのチームは、昨シーズンからアレックス・マルケスがライダーを務めているが、今年はホンダを離脱したマルク・マルケスがチームに加入し、兄弟で参戦することとなった。6度のチャンピオン獲得経験があるマルク・マルケスがドゥカティでどんな走りを見せるのか? そして2021年以来の勝利を獲得できるのか? 使用するマシンは2023年型のデスモセディチGP23だが、開幕戦から大きな注目が集まるだろう。
 

2024MotoGP:アレックス・マルケスとマルク・マルケス(グレシーニ・レーシングMotoGP)


2024MotoGP:マルク・マルケスが駆るグレシーニ・レーシングMotoGPのドゥカティ デスモセディチGP23

 もうひとつのサテライトチームが、バレンティーノ・ロッシがチームオーナーを務めるプルタミナ・エンデューロVR46レーシング・チームだ。今季は新たなスポンサーのサポートを受け、2022年のルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得したマルコ・ベゼッチが参戦。新たにファビオ・ディ・ジャンアントニオが加入。ディ・ジャンアントニオは最終戦カタールGPで初優勝を遂げており、今年も若いイタリア人コンビの活躍に期待だ。

2024MotoGP:マルコ・ベゼッチとファビオ・ディ・ジャンアントニオ(プルタミナ・エンデューロ・VR46レーシング・チーム)


■ヤマハ
 昨年からサテライトチームがなくなり、YZR-M1を使用するのはファクトリーチームであるモンスターエナジー・ヤマハMotoGPの2台のみとなったヤマハ。今年はエースのファビオ・クアルタラロのチームメイトに、ホンダからアレックス・リンスが加入。リンスは今までスズキ、ホンダに在籍して勝利を収めており、MotoGPクラスで史上初の異なる3メーカーでの優勝を成し遂げるチャンスがある。


 2024年型のヤマハYZR-M1をお披露目した。マシンのカラーリングに大きな変更はなく、モンスターエナジー・ブラックとヤマハファクトリーレーシング・ブルーを引き続き採用。カウルには2023年同様に、モンスターエナジーのロゴが掲げられている。


 2023年は厳しい戦いを強いられたが、今シーズンは、テストやエンジン開発の制限が軽くなる優遇措置でどう挽回していくのか注目だろう。


2024MotoGP:ファビオ・クアルタラロとアレックス・リンス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)

2024MotoGP:ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が使用するヤマハYZR-M1

2024MotoGP:ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が使用するヤマハYZR-M1

■ホンダ
 かつて常勝を誇った絶対王者との蜜月に終着符を打ったホンダ。ファクトリーのレプソル・ホンダ・チームは、新たにルカ・マリーニを迎え、ジョアン・ミルとのラインアップで復活を狙う。


 昨年チームに移籍してきたミルは、怪我による欠場も相次いだことにより、計26ポイントのランキング22位と不完全燃焼でシーズンを終えた。今シーズンは巻き返しとなるだろうか?


 マルケスの代わりに加入するマリーには、バレンティーノ・ロッシの異父弟であり愛弟子でもある。2018年のMoto2時代からVR46に加入。2021年にMotoGPクラスにステップアップ後もVR46とともに6シーズンを過ごした。2024年もVR46からの参戦が予定されていたが、マルケスの離脱に伴い、HRCと2024年から2年間の契約を締結し、レプソル・ホンダ・チームへ移籍となった。


 発表会でお披露目されたホンダRC213Vは、アンダーカウルのレッドブルのロゴがなくなり、そこにレプソルのロゴが入った。サイドにはHONDAとHRCのロゴが入っている。オレンジと白を基調とした“レプソルカラー”に赤も配色されているが、青が入ってCBRシリーズのようなトリコロールデザインの印象も受ける。


 シーズンオフテストでは、まだまだドゥカティとの差を感じさせられたが、シーズン中の優遇措置をどう利用していくのか注目だ。


2024MotoGP:ジョアン・ミル、ルカ・マリーニ(レプソル・ホンダ・チーム)

2024MotoGP:レプソル・ホンダ・チームのRC213V


2024MotoGP:レプソル・ホンダ・チームのRC213V

 サテライトチームのLCRホンダ・イデミツは中上貴晶が継続。今年もMotoGPクラス唯一の日本人ライダーとして日本のファンの期待を背負おうことになる。LCRホンダ・カストロールは、ドゥカティからヨハン・ザルコが加入。新たなラインアップで挑むホンダ。リベンジのシーズンとなるだろうか?


 昨シーズンはプラマック・レーシングから参戦したザルコ。2023年第16戦オーストラリアGP決勝で、最高峰クラス初優勝を成し遂げて、シーズン5度の表彰台を獲得。ランキング5位を獲得し、LCRホンダへと移籍してきた。LCRホンダは、2019年に中上の代役として3戦に出場している。


 中上は、MotoGPクラス7年目。昨年はオランダGPでの8位が決勝での最上位のシリーズ18位と厳しいシーズンとなった。今シーズンは表彰台獲得となるだろうか?

2024MotoGP:中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)

2024MotoGP:LCRホンダ・カストロール


■KTM
 2023年のKTMはレッドブルKTMファクトリー・レーシングのみの1チーム2台体制参戦し、チームとしても4位、コンストラクターズはドゥカティに次ぐ2位でシーズンを終えた。


 今シーズンもラインアップは変わらず、 MotoGPクラス参戦5年目のブラッド・ビンダーと、9年目のジャック・ミラーが2継続参戦する。ふたりが駆るKTM RC16は、唯一鋼管トレリスフレームを採用するなど、独自の哲学とともに開発が進められている。


 今回お披露目された2024年シーズンに使用するマシンは、2023年と大きく変更はなく、オレンジとネイビーを基調としたカラーリングが継続されている。また、2023年シーズンから新たに契約したMobil1のロゴも引き続き掲げられている。


 また2024年も引き続きテストライダーは、ダニ・ペドロサが務める。

2024MotoGP:ジャック・ミラーとブラッド・ビンダー(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)

ジャック・ミラーとブラッド・ビンダー(レッドブルKTMファクトリー・レーシング)が2024年に使用するKTM・RC16


 インディペンデントのレッドブルGASGASテック3は、レッドブルをスポンサーに迎えてチーム名をレッドブルGASGASテック3に変更、マシンはKTM RC16を使用する。ライダーは継続参戦のアウグスト・フェルナンデスと新加入となる2023年のMoto2王者であるペドロ・アコスタのコンビで挑む。アコスタはMotoGPクラスで唯一のルーキーライダーとなる。


 発表会で公開したマシンのカラーリングは2023年のものを踏襲しており、ガスガスを彷彿とさせる赤を基調としたデザインを継続。しかし、レッドブルのカラーリングが追加され、白でペイントされたGASGASの文字が大きく掲げられている。

2024MotoGP:ペドロ・アコスタ、アウグスト・フェルナンデス(Red Bull GASGAS Tech3)


2024MotoGP:Red Bull GASGAS Tech3のRC16

■アプリリア
 アプリリアは、今年もアレイシ・エスパルガロとマーベリック・ビニャーレスのコンビで参戦。2022年に躍進を見せ優遇措置が免除となった2023年は、エスパルガロはスプリントで1勝、決勝で2勝含む3度の表彰台を獲得してランキング6位。ビニャーレスはスプリントで2度、決勝で3度の表彰台を獲得してランキング7位を獲得。チームとしても5位、コンストラクターズは3位と上々の成績を残しており、今シーズンも活躍が期待される。


2024MotoGP:アレイシ・エスパルガロ(アプリリア・レーシング)

2024MotoGP:マーベリック・ビニャーレス(アプリリア・レーシング)


 アプリリア陣営から参戦していたクリプトデータRNF・MotoGPチームは、公共のイメージに悪影響を与える度重なる行いや参加協定違反をしてきたとされており、2024年はエントリーを抹消。代わりにアメリカ・NASCARの新鋭チーム、トラックハウス・レーシングがアプリリアのサテライトチームとして今季エントリーする。


 ライダーは2023年のクリプトデータRNF・MotoGPチームのラインアップであるミゲール・オリベイラとラウル・フェルナンデスを引き続き起用。


 使用するマシンはアプリリアRS-GPは、白を基調にアメリカ国旗をあしらったカラーリングとなっている。

2024MotoGP:トラックハウス・レーシング・MotoGPチームが使用するアプリリアRS-GP


■2024年もドゥカティ勢がチャンピオン争いをリード?


 カタールのロサイル・インターナショナル・サーキットで開幕を迎える2024年MotoGP世界選手権。2月19、20日に行われたカタールでのシーズンオフテストでは、3連覇を狙うバニャイアが両日でトップタイムをマーク。万全の体制で開幕戦を迎えそうだ。


 昨年バニャイアとチャンピオンを争ったマルティンは、初日がトップと0.2秒差の2番手、2日目は7番手となった。マルティンの代わりに2日目2番手に立ったのはバニャイアのチームメイト、バスティアニーニ。


 2日間とも3番手にはアプリリアのエスパルガロが入りドゥカティ勢に割って入った。注目のマルク・マルケスは2日目に4番手に入り、ドゥカティへの適応も上々のようだ。


 一方で、ホンダ・ヤマハはテストでもドゥカティ勢とは差が見られ、厳しいシーズンの幕開けとなりそうだ。


 開幕戦カタールは、ナイトレースで開催。2023年は、スプリントをマルティンが、決勝レースをディ・ジャンアントニオが制している。2024年はどんなレースが展開されるのか? 金曜日のFP1の走行から目が離せないだろう!




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