いまやJワースト?スタジアムを飛び出した横浜FCサポーターの悪行を考察
2025年3月14日(金)15時0分 FOOTBALL TRIBE

明治安田J1リーグの横浜FCは3月9日、横浜FCサポーターの違反行為に対し、入場禁止処分を発表した。2月26日に開催されたJ1第3節横浜F・マリノス対横浜FC(日産スタジアム/0-0)において、新横浜駅構内および新横浜駅から日産スタジアムまでの道中、日産スタジアム内において、横浜FMを侮辱する内容のステッカーを貼るという違反行為があったという。
当該者2人には「横浜FC、ニッパツ横浜FCシーガルズ、横浜FCアカデミーが出場する全公式戦への無期限入場禁止処分」が課され、また2人が所属するサポーター団体の代表2人には「3月15日セレッソ大阪戦(ニッパツ三ツ沢球技場)までに行われる横浜FC、ニッパツ横浜FCシーガルズ、横浜FCアカデミーが出場する全公式戦への入場禁止処分」が課された。
今回の事件はスタジアム内のみならず、日産スタジアムがある新横浜の街を巻き込んで行われた事案で、刑法第261条に基づく「器物損壊罪」、および軽犯罪法第1条第27号「軽犯罪法違反」、さらには神奈川県迷惑防止条例違反に当たる「犯罪」だ。
ステッカーを貼った場所がビルの壁であればその所有者から、電柱であれば電力会社から刑事告訴や損害賠償請求されてもおかしくはなく、本来であればそうすべきなのだ。スタジアム内で起きたイザコザとは次元が違う話といえるだろう。
ここでは問題になっている横浜FCサポーターの行為について、まとめてみよう。

横浜FCで繰り返される処分と注意喚起
昨2024シーズン、10月19日に開催されたJ2リーグ第35節ベガルタ仙台戦(ユアテックスタジアム仙台/0-3)において、横浜FCサポーターが警備員に中指を立て侮辱したとして、当該者1人に約1か月の「横浜FC、ニッパツ横浜FCシーガルズ、アカデミーが出場する全公式戦への入場禁止処分」が下された。
そしてクラブはテンプレートでもあるかのように、3月9日と全く同じ文言でルールの徹底を求めた。
横浜FC公式サイトで「今回のような行為は、フェアプレーの精神からも逸脱し、クラブの存在価値そのものを脅かすものであり、いかなる理由があっても認められるものではありません」とし、「ファン・サポーターの皆さまは改めて、観戦における禁止行為についてご確認いただき、ルールを遵守いただきますよう、ご理解とご協力のほどよろしくお願い申し上げます」と記している。
2023シーズンにも、5月3日に開催されたJ1リーグ第11節アルビレックス新潟戦(ニッパツ三ツ沢球技場/1-0)で横浜FCサポーターが暴走。ゴール裏席を離れ、審判団にブーイングした挙げ句、仲裁に入ったメンバーを暴行し負傷させた。
その処分内容もまたまた「横浜FC、ニッパツ横浜FCシーガルズが出場する全公式戦への無期限入場禁止処分」で、上記と全く同じ文言で注意喚起を促している。
クラブ側も“年中行事”となったサポーターの暴走に慣れ切ってしまい、判で押したかのような処分内容と注意喚起を繰り返すだけで、根絶する意思は全く感じられない。これに甘えているサポーターが再び暴走するというサイクルが常套化し、毎年、不祥事を起こしている。

横浜FCサポーター団体によるクレームも
一方、今回問題の起こったJ1第3節の横浜ダービーを配信した『DAZN』で、この試合を実況したアナウンサー下田恒幸氏の前口上に対し、横浜FCサポーター団体がクレームを入れ同氏がSNS上で謝罪するに至るということも起こっている。
下田氏の前口上、全文を原文のまま、以下に示す。第三者から見て、ここのどこに横浜FCを蔑む要素があるのかサッパリ分からない。
「2年ぶりの横浜ダービーです。このダービーが実現するたびに、我々には足を止めて考えるべきことがあります。32年の歴史を積み、いくつもの成果をあげてきたJリーグ。しかし、その黎明期はクラブ経営の見込みの甘さからくる、多くのクラブが存続の危機を経験し、非常に難しい時期がありました。その最も大きな出来事が、1998年に起こったJリーグオリジナルクラブの1つ、横浜フリューゲルスの消滅、横浜マリノスとの合併です」
「Jの強豪同士、よりによって同じ街のクラブの吸収合併は様々な波紋を呼びました。合併に反対して62万人もの署名を集めたフリューゲルスのサポーター。それでも合併は覆らず、サポーターの有志によって立ち上げられたのが横浜フリエスポーツクラブ、つまり今の横浜FCの母体です。フリューゲルスの“F”は横浜マリノスのクラブ名の一部として残されました。とても重い“F”です。フリューゲルスの想いを継承する横浜FCサポーター達は、恐らくその“F”を容認出来ません」
「このダービーは、同じ街のクラブ同士が対戦する単なるダービーマッチではありません。我々の歴史において、常に心に留めておくべき大きな出来事を内包した、Jリーグにおける最も重要なダービー、それが横浜ダービーです」
下田氏は、Jリーグの“黒歴史”を誇張することも矮小化することもなく、事実をそのまま言葉にしたまでだ。
付け加えるならば、旧フリューゲルスサポーター有志によって新たに立ち上げられた横浜フリエスポーツクラブが「横浜FC」を名乗り、いきなりJFLに入会できたこと自体奇跡的なことだ。本来であれば、神奈川県社会人リーグからスタートするべきだった。創立当初からの横浜FCのサポーターは協会やJリーグに感謝こそすれ、過去の事実を述べた下田氏に文句をつける資格などないはずではないか。

サポーターの暴走といえば?
クラブに甘やかされ、数多くの悪行もささやかな罰則で許されてきた横浜FCサポーター。自分たちの行為は棚に上げ、他人に対しては徹底的に厳しく当たるのが身に染み着いているように見受けられる。
「サポーターが作ったクラブ」としての反骨精神が間違った方向へ向かい、アウトロー的な応援スタイルが定着したことで、相手チームへのリスペクトやモラルのかけらもないヤジや、暴力沙汰にまで発展している。タチの悪いのは、それを「クラブへの情熱」と勘違いしているところか。
ひと昔前まで、サポーターの暴走といえば浦和レッズだった。しかし、2023年9月2日に開催された天皇杯ラウンド16の名古屋グランパス戦(CSアセット港サッカー場/0-3)の試合後に起こした乱入事件によって、サポーターへの処分のみならず、浦和が翌年の天皇杯出場権を剥奪されるという厳罰に処されたことでさすがに懲りたのか、その後は問題を起こしていない。
そもそも、横浜FCと浦和ではファン・サポーターの数、クラブの規模や歴史、獲得したタイトルに至るまで比較対象になりようもないほどの差がある。浦和サポーターも比べられること自体、不快に感じることだろう。
横浜FCの親会社は、外食産業を主とする小野寺グループだ。人一倍「カスタマーハラスメント」に気を使わなければならない会社の子会社が、カスタマーであるサポーターのやりたい放題を許している状態を良しとしているはずはなく、撤退する可能性も生まれてくる。仮にそれが現実となれば、メインスポンサーを失った横浜FCには、今度こそ本当に「消滅」の道が待ち受けているだろう。
ただでさえ神奈川県にはJリーグクラブが多すぎると言われており、問題行動を繰り返すクラブが1つ消えたとしても、Jリーグ全体の勢力図が大きく変わることはないだろう。Jリーグが「世界一安全なスタジアム」を目指している中で、その方針に逆行する存在は、むしろJリーグ全体の発展を妨げる可能性があるのではないだろうか。