【F1最新技術ピックアップ】メルセデスとトロロッソが取り入れた延長型アップライトをザウバーも採用

2018年3月19日(月)11時4分 AUTOSPORT web

 技術ウォッチャーの世良耕太氏が、オフシーズンテストで走行した2018年ニューマシンの気になる技術トレンドを解説。   
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 2017年のメルセデスとトロロッソが採用した新機軸が延長型アップライトだ。フロントのアップライトから上方に腕を伸ばし、高い位置でアッパーウィッシュボーンを支えている(写真番号:1)。2018年型マシンでこれに追随したのがザウバーだ。


 アッパーウィッシュボーンを高い位置にレイアウトするのが目的ではなく、ロワーウィッシュボーンを高い位置に配置するのが、この新機軸の狙い。リヤに向かう空気の通り道から、障害物(すなわちロワーウィッシュボーン)を少しでも邪魔にならない位置に置くためだ。


 アッパーウィッシュボーンが従来の位置のままロワーウィッシュボーンの位置を高くすると、アッパーとロワーのスパンが狭くなり、フロントタイヤからの入力を受け止めるのがきつくなる。入力を受けた際の剛性が足りないと、コーナリング中のタイヤは意図しない動きをし、設計者やドライバーが意図しない挙動になる。


 そうならないよう、上下アームのスパンを確保してしっかり支えるために、高い位置にずらしたロワーウィッシュボーンに合わせて、アッパーウィッシュボーンの位置を高くしたのだ。相応のスパンを確保したとはいえ、ザウバーC37のアームはかなり大きな断面が確保されているのがわかる。17年以降のワイドタイヤが発生するグリップは大きく、入力が大きい(旋回スピードが高い)のだろう。


 新車発表時に公開されたスタジオ写真では、アップライトの延長部分がむき出しの状態だったが、合同テストに投入された車両ではカバーが被せられている。空力効果を考えての処理なのは間違いない。

F1合同テストに投入されたマシンにはカバーが被せられている

 同様のことがアップライト側のプッシュロッド取り付け点にも言える(写真番号:2)。やはり、新車発表時はむき出しの状態で、アップライトから内側に突き出した腕(チタン合金製か)がはっきり見えている。一方、実走行車両はアッパーウィッシュボーン用延長部分と同様、樹脂製のカバーで覆われている。


 アップライトから腕を伸ばし、プッシュロッドをインボード側で支持する手法はプッシュロッド・オン・アップライト(POU)と呼ばれている。2017年から再び脚光を浴びている(つまり、古くからある)技術だ。前後のサスペンションユニットを連携させるなどして姿勢を制御する技術が禁止されたため、機械的な仕組みで姿勢を制御せざるを得なくなった。そのために復活した手法である。


 ステアリングを切ると(ということはコーナリング中)、プッシュロッド取り付け点の軌跡の変化によってプッシュロッドが実質的に短くなり、アップライトと車体の距離が近くなる。その結果、フロントのライドハイトが低くなってコーナリング中のダウンフォースが増える仕組み(というか狙い)。2017年のフェラーリやレッドブルがPOUを採用しており、ザウバーはこれに追随した格好だ。


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