スーパー耐久ST-4クラスにAutoLaboがスイフトスポーツを投入。意欲作は今後少しずつ性能アップへ

2025年3月22日(土)11時13分 AUTOSPORT web


 3月22〜23日、栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催されるENEOSスーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE第1戦『もてぎスーパー耐久4 Hours Race』。今季開幕戦ということもあり新しい顔ぶれが揃っているが、そんな中でも注目なのが、ST-4クラスに登場したAutoLaboの290号車スズキ・スイフトスポーツだ。


 2025年も多種多様な車種が登場し、10クラスで争われるスーパー耐久。トヨタGR86やマツダ・ロードスターRFといった車種がメインだったST-4クラスに、今季はTEAM NOPROが投入したNC型ロードスター、そしてこのZC33S型スイフトスポーツが登場する。



 国産ホットハッチとして人気も高いスイフトスポーツは、過去にはZC11S型がジュニアWRCをはじめとしたスーパー1600用車両のベース車として活躍したほか、全日本ラリーでもJN-4クラスで活用されている。ただサーキットレースのイメージはあまりない。


 そんなスイフトスポーツをなぜスーパー耐久に投入したのだろうか。今回車両製作からレース参戦まで担っているのが、スーパー耐久ではST-5クラスにGRヤリスではない『素ヤリス』を投入してきた、大阪府茨木市にショップを構えるAutoLaboの國松宏二代表。「ヤリスもそうですが、誰もやっていないクルマが好きなんです。人がやらないことを自分でチャレンジして、何が起きるかを探しにいきたいんです」と語った。


 國松代表のプランにスイフトスポーツが浮かんできたのは、ST-4クラスの排気量が2022年に2,000ccから2,500ccに上がったときのこと。GR86を想定した排気量変更だったが、「2,500ccに上がるのであれば、他に埋もれているクルマはないかな? と考えたんです。フィアット・スパイダーなども考えたのですが、販売中止だし、タイヤサイズ等も辛かった。そこで、スイフトスポーツはアリだと思っていたんです。誰かがやるだろうと思っていました」と國松代表は語った。


 ただ、2年経っても誰も挑戦しない状況に「じゃあ自分がやろう」とスタートさせたのがこのプロジェクト。本来2024年に投入しようとしていたというが、当初用意したベース車から変更したこともあり、時期がずれこんだ。


 今回用意されたベースのスイフトスポーツは令和3年式の車両。それというのも安全運転支援がついていないからだ。令和4〜6年式は運転支援を外すことがオプション扱いで、そんな新古車、中古車はなかなかない。この個体は一度海外に輸出され戻ってきたもので、運転支援なし、新車の状態という出物だった。


 これが2024年3月に届き、すべてバラバラにしてロールケージを國松代表自ら溶接し始めたが、レース活動を進めながらの作業で、溶接は夏場になってしまった。「暑さで30分が限度でした(苦笑)。なかなか進みが遅かったです。冬になってやっと完成したので、2025年からの参戦になりました」と今季第1戦からのデビューとなった。



2025スーパー耐久第1戦もてぎ AutoLaboのスズキ・スイフトスポーツ

■耐久を戦えるクルマづくり。現状は慎重にパフォーマンスアップ


 こうして走り出したスイフトスポーツは、「このクルマの利点はやはり軽さ」という武器を活かすべく、溶接の際に細かな作業で強度を上げながら軽量に収まるように慎重な作業が進められた。さらに、スーパー耐久の規定変更で認められたリヤのコイルオーバー式のショックが採用された。


「スイフトなどFF車は大概、バネとショックが違う位置にあるのが普通ですが、コイルオーバー式でショックとバネが1軸にあるものをどうしても入れたかったんです。いろんな利点を考え、テインさんに共同開発をお願いしました」


 このショックのアッパーは、リヤのホイールハウス上まで伸ばされたロールケージでしっかり抑えられるように設計され、足回りがきちんと仕事をするようになっている。


 また、耐久レースであることを考えブレーキの改良、さらにAutoLaboの素ヤリスにも装着されているように、フロントバンパー、リヤウイング、リヤバンパーとAutoLaboオリジナルのエアロパーツをデザイン。冷却性やタイヤカスの排出性を上げ、レギュレーション内で少しでもダウンフォースを稼げるよう工夫されたものが装着された。またボンネットについては、静岡県浜松市にあるスズキ車を中心としたチューニングショップであるアールズのものが装着された。さらに、市販車の状態のハブボルトがかなり細めで「たぶんレースで使うと折れてしまう」ことから改良が加えられた。


 こうして走り出したスイフトスポーツだが、まだタイムの面ではST-4クラスのトップからはベストタイムで言うと9〜10秒前後の差がある。ただ「今のところはまだ『壊さない』ことを意識しています。これはターボ車なので、ブーストをかけてしまえば速くはなる。予選一発で、GR86を上回ることはできると思います」


「しかし、これが4時間レースや24時間レースではもたなくなってしまいます。直線番長で終わりたくはないですし、お金も時間ももったいないので、少しずつステップアップさせています」という國松代表。現状はまだ慎重にパフォーマンスを上げており、それも功を奏し予選まで大きなトラブルなく走っている。


 また、スイフトスポーツにはもうひとつの課題もある。他メーカーの車両であれば、サーキット向けのサービスやパーツも豊富で、素ヤリスも「TOYOTA GAZOO Racingの方たちが親身になってお手伝いしてくださっています」という状況だ。ただスズキ車ではあまりまだそういった体制はない。しかし、今回の参戦をきっかけに「そういう流れがスズキにも生まれたらいいですよね」と國松代表は語った。


「それこそ、スーパー耐久未来機構の豊田章男理事長からもそういったことを期待されているという話ももらっています。誰もやっていないことに挑戦する価値としては、僕もそういう面もあると思っています」


 村上モータースの依頼でNDロードスターをスーパー耐久でいちばん最初に作り上げたのも國松代表だが、「こうして台数が増えると、僕は飽きちゃうんです(笑)。それは人に売って、また自分は冒険したくなって、旅を探し続けているという感じですね」と新たな船出にこぎ出した。専有走行では、トラブルはほとんどなく順調な歩みをみせているスイフトスポーツ。今季のST-4クラスの注目の一台だ。

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