F1 Topic:国境のない新型コロナウイルス危機とどう向き合うか/レース再開への課題(2)

2020年4月6日(月)17時32分 AUTOSPORT web

 毎日、ニュースでは日本全国47都道府県別の感染者数を伝えている。感染者を多く出している地域もあれば、いまだまったく感染者を出していない県も複数ある(4月4日時点)。


 しかし、その数字に一喜一憂していても意味はない。なぜなら、私たち日本人また日本に住んでいる海外籍の多くの人々は、都道府県という枠の中だけで生活しているわけではないからだ。


 そのことは、世界にも当てはまる。ニュースの画面では大陸の上に線を引き、感染者数の多さを国別に色分けして説明しているが、たとえば欧州連合(EU)は27カ国が加盟する政治経済同盟であり、ある加盟国の感染者が少なかったとしても、ほかの加盟国で深刻な事態となっていれば、手放しで喜ぶわけにはいかない。


 そして、このことは世界各国の人々によってチームを形成し、世界中の企業からサポートを受け、世界中を転戦するF1の世界も同じである。


 4月4日時点で、F1はシーズン前に予定されていた日程のうち、第8戦アゼルバイジャンGPまでが中止または延期が決定している。7月中旬の12戦目に予定されているイギリスGPの主催者であるシルバーストンは「開催可否の決定を、4月末までに行う」という。


 イギリスでは、3月31日時点で約2万5000人が新型コロナウイルスで陽性と診断されているが、3月23日にイギリス政府が国民に外出禁止令を出したことで、感染者の急増をなるべく低く抑えようとしている。そして、そのピークは2週間後(4月中旬)と予想している。


 仮にイギリス政府の思惑どおりに4月中旬に感染者数がピークを迎え、シルバーストンが開催可否の決定を行う4月末までに状況が好転したとしても、それだけでイギリスGPが即、開催とはならないだろう。なぜなら、イギリスを除くヨーロッパ各国の状況も考慮しなければならないからだ。


 たとえば、10チームのうち7チームはイギリスにファクトリーがあるが、残る3チームのうちフェラーリとアルファタウリが居を構えるイタリアは、4月4日時点で世界で最も多くの新型コロナウイルスによる死者を出している国である。4月に入って感染者が増えるスピードは鈍ってはいるものの、約12万人の感染者がいることに変わりなく、第二、第三の感染爆発が起きても不思議はない。


 アルファロメオのファクトリーがあるスイスはイタリアと国境を接しているものの、4月4日時点で感染者数は6分の1の約2万人にとどまっている。しかしイタリアの人口が約6000万人であるのに対して、スイスは約850万人しかいないことを考えれば、スイスも安心はできない。人口が1000万人未満の国で最初に感染者が1万人を突破したのは、じつはスイスである。人口に占める感染者の割合では、スイスはイタリアを上回るほど状況は深刻だ。


 オーストラリアGPでは、マクラーレンのスタッフに陽性反応が出たこと、そしてマクラーレンが即座にオーストラリアGPの欠場を発表したことが、ほかのチームの参戦可否に大きな影響を与えた。もしこのままイタリアとスイスの状況が好転しなければ、フェラーリ、アルファタウリ、アルファロメオの3チームが4月末時点でイギリスGPへ参戦できる見通しを立てることは難しく、仮にイギリスGPが開催されたとしても3チームが不参加となる可能性が高いだろう。


 つまり、イギリスGPの問題は、もはやイギリスだけの問題ではなくなっているという現実があることを私たちは忘れてはならない。そして、これはほかのすべてのグランプリにも当てはまる。


 たとえば世界で最初に感染が爆発した中国は、すでにピークは収まりつつあり、延期していたグランプリを秋に復活させる方向で動き出したようだが、その時期に世界の新型コロナウイルス感染症の状況がどうなっているのか、誰にもわからない。


 F1がこの新型コロナウイルスの問題を考えるとき、これまでのような国別では対応しきれなくなっていることを念頭に置かなければならない。そして、それがこの問題を非常に厄介なものにしている。


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