ニッサンGT-R陣営巻き返しの鍵を握るカルソニック。平峰一貴&新加入の松下信治がお互いを語る

2021年4月9日(金)17時30分 AUTOSPORT web

 いよいよ今週末から開幕するスーパーGT。早速、開幕戦岡山のウイナーを予想すると、予選ではホンダNSX+ダンロップ陣営が速く、決勝ではホンダNSX+ブリヂストン陣営が優勝候補に挙がり、続いてGRスープラ勢……となってしまうが、その中で敢えてこの開幕戦で注目したいのが、ニッサンGT-R陣営、そしてカルソニック IMPUL GT-Rだ。


 3年間タイトルからGT500クラスの遠ざかり、今季のスーパーGTで不振からの脱出を目指すニッサンGT-R陣営。そのなかで、今年もっとも注目されるのが、FIA-F2でも優勝経験のある松下信治が加入するカルソニック IMPUL GT-R。昨年GT500デビューを果たした平峰一貴と松下のコンビはGTの経験が少ないとはいえ、レース経験&実績は十分。常にドライバー視点でチームを支える星野一義監督の『闘魂』スピリッツで今年、平峰と松下は台風の目になる可能性も高い。そのふたりにテストでの手応えとふたりの関係について聞いた。


 まずは今年、GT5002年目を迎える平峰。オフのテストで松下の走りを見た際の感想を聞く。


「シンプルに速いですよね。僕は正直、これまで一番速いレーシングカーはGT500のクルマで、そのGT500のクルマでさえ、僕はまだ手に取るように扱えていない。彼はそのGT500より速いクルマをヨーロッパでも日本のスーパーフォーミュラでも乗ってきていて、常に速さのセンスを磨かれてきた選手なのだと思います」と、素直に驚きを語る平峰。


 平峰は今年29歳、松下は今年10月で27歳と同年代と言えるが、これまで接点はあったのだろうか。


「松下選手は僕の2歳下ですが、これまでレースで一緒になったことはないです。彼はこれまで大きいフォーミュラを乗ってきていて、僕にはない経験とかセンスを持っているので、僕はそういう部分を吸収して、すごく面白くやっています。去年、GT500を1年経験しているといっても、他の選手に比べて走行距離と時間を稼げていたわけではないですし経験もまだまだ知れているので、いろいろなことをしっかり吸収したいですよね」と平峰。


 その平峰、早速、松下のドライビングから刺激を受けているようだ。


「走行データを見ても彼の方がステアリング操作がすごくスムーズで、やはりビッグフォーミュラでダウンフォースをきれいに扱うようなかたちで乗っている。僕はどちらかと言うとガンガン動かしてしまうタイプなので、そこを抑えたり、限界を探るようなところを勉強しています。彼はそういうところのセンスがすごく長けている。僕にはない、世界のトップクラスで走っていた経験とセンスがあるので『こんな走り方もあるんだ』『この次元で行けるんだ』というのがすごく勉強になります」と平峰。松下の影響で、今年の平峰のドライビングもさらにアップデートされそうな気配だ。


 一方、今年GT500クラスデビューを果たす松下。速さに定評ある松下だが、速さだけでは結果を残すことが難しいのがスーパーGTでもある。あえて、現在の課題を聞く。


「スーパーGTはドライバーが1台のマシンをシェアして走るので、要は自分だけ、そして片方のドライバーだけが速く走れてもダメで、今までは自分だけのセットアップやひとつのことだけにこだわって進めるレースだったので、チームメイトとの協調性とかバランスがすごく大事ですね。速いクルマは常に速いのですけど、それを尖らせて自分の方に寄せて行くというのはGTではそうではないですよね」と、チームメイトを活かすGTならではのアプローチに取り組む松下。


「今は(テストの段階では)お互いの走行データを参考にしつつ進めています。最初は僕の方が平峰選手に合わせていく形でしたが、今は僕の走り方が今のクルマに合っているようなので、彼が合わせてくれている。そこはお互い、どんどん良い方に合わせようとバランス調整しています。そういった作業は面白いですね」

金曜搬入日にマシンのシートを確認する松下信治(カルソニック IMPUL GT-R)


 また、タイヤコンペティションの激しいGT500ならではの課題も感じている。


「僕はブリヂストンタイヤは初めてですし、今までワンメイクタイヤのカテゴリーで走ってきました。タイヤの違いといった感覚的なセンサーの部分では僕は鋭いものがあるのかなと思いますが、GTのタイヤは細かく分類されていて、そのタイヤがどのようなコンセプトで作られているのかとか、そういったタイヤの開発背景を勉強中です」


「タイヤのコンセプトやその違いが理解できれば、たとえば夏の暑い季節になったときにはこういったコンセプトのタイヤの方がいいのでは、といったサジェスチョンができて、もっとレースでのパフォーマンスをよくすることができる。その部分が今、僕には足りていないと思います。タイヤの違いによってサスペンションのセットアップもイメージしやすくなるので、そういった知識はあったほうが絶対いいと思うので、すごく勉強になっています」


 速さではこれまで経験してきたスーパーフォーミュラやFIA F2よりも劣るが、GT500ならではのクルマの魅力も感じ始めているようだ。


「もちろん、フォーミュラの方が速さの限界は高いのですが、想像していたよりもGT500のマシンの限界は低くはない。スピードは出ていますし、何より今、テストの順位からも戦える順位にいるというのがうれしいですね。僕らニッサン陣営としては、昨年の成績からもライバルよりも厳しい立場ですので、そこでなんとか食らい付いてという思いはチーム全体としてもありますね」と松下。


 その言葉、そしてオフの取り組みからも、優勝だけでなくタイトルを狙いにアプローチを続けていることを感じさせる。ふたりのドライバーを現場でマネジメントする大駅俊臣エンジニアも、平峰と松下ふたりのコンビの可能性を楽しみにしている。


「松下は今年がGT500初めてなので、どんどん乗せて経験を積んでもらっています。ドライバーとしては乗ってすぐの感覚の部分、単純に速いですよね。今はハコ車のセットアップやクルマの作り方を学んでもらっています。これまでほとんどフォーミュラしか乗ってきていないので、フォーミュラの感覚で進めている部分もあるので、そこは自分でもいろいろと修正しながらやっていると思います。松下と平峰、それぞれいいところがありますので、そこを活かせればと思っています」と大駅エンジニア


 ふたりとも常に攻めの姿勢で臨むファイタータイプで、まさに星野一義監督のスタイルに合致するドライバー。平峰と松下が化学反応することで、カルソニック IMPUL GT-Rが一躍、今季の中心になってくる可能性は多いにある。ホンダNSX、GRスープラの優勢が囁かれる今シーズンのGT500だが、ニッサンGT-R、そしてカルソニックのふたりのアプローチが楽しみだ。

ニッサン陣営ではもちろんMOTUL AUTECH GT-Rのパフォーマンスも気になるところ


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