【ヤングスター列伝⑩】ゴール前での「決定的なプレー」を身に付け、“ルイス・エンリケの教え子”は次なるステージへ
2019年4月26日(金)22時5分 サッカーキング
ジョゼップ・グアルディオラが指揮官を務めていた頃、バルセロナのトップチームにはカンテラ上がりの選手があふれていた。しかし、世界各地から実力者が集まるクラブにおいて、カンテラーノが主力を担い続けるのは至難の業。ペップ時代と比べると、現在は自家製の選手が少なくなりつつある。
だが今季、多くのタレントがひしめく“激戦区”の中盤で、ポジション争いに身を投じているカンテラーノがいる。カルレス・アレニャ、21歳。「リーガ・エスパニョーラ版ヤングスター特集企画」の最終回は、この若者を紹介したいと思う。
名前:カルレス・アレニャ(Carles Alena)
誕生日:1998年1月5日
年齢:21歳
身長/体重:180cm/73kg
主なポジション:センターミッドフィルダー
リーグ成績:14試合出場2ゴール0アシスト
■トップチームデビュー戦でゴールも…指揮官は「今の私にだってできる」
カタルーニャ州バルセロナ県マタロー生まれのアレニャは、8歳の時にバルサのカンテラに入団する。細かいタッチで相手を翻弄するドリブルと左足のキックの精度は、当時から群を抜いていた。
2015年にはBチームに昇格。2016年11月30日にはコパ・デル・レイのエルクレス戦でトップチームデビューを果たし、初ゴールまで決めてみせた。だが、アレニャをピッチに送り出した当時の指揮官ルイス・エンリケは、試合後にこう注文をつけた。
「アレニャはポジショニングを改善しないといけない。相手に脅威を与えられないエリアでボールを受けるだけなら、今の私にだってできるよ」
バルセロナの日刊紙『エル・ペリオディコ・デ・カタルーニャ』が報じた、指揮官の厳しい言葉。だが、アレニャがこの苦言にめげることはなかった。「僕は多くのことを改善する必要がある。ミスから学び続けなければならないね」と自己批判を語り、さらなるレベルアップに着手していく。
■右大腿の大怪我、ラ・リーガ初ゴール、そして手にした恩師と同じ背番号「21」
2017−18シーズン、アレニャは翌シーズンのトップチーム昇格を約束されていた。8歳で入団してからずっと憧れていた場所に、ようやく辿り着ける——。だが、開きかけたトップチームへの門は、急に閉ざされることになる。セグンダ・ディビシオン最終節のサラゴサ戦で右大腿ハムストリングの腱を断裂。約3ヶ月ピッチから離れざるを得ないような大怪我だった。
今季は出場機会を得るためにBチームで始動。焦ることなく、地道にフォームを上げていった。そしてアレニャの忍耐は、2018年12月2日に実を結ぶ。ラ・リーガ第14節のビジャレアル戦で70分から途中出場すると、試合終了間際の87分にリーグ戦初ゴールを記録。リオネル・メッシからパスを受けると、絶妙なループシュートでゴールネットを揺らした。
『カンプ・ノウ』で素晴らしいゴールを決めたアレニャは、負傷により延期されていたトップチームへの正式登録と、背番号「21」を手に入れた。バルサの「21番」といえば、かつてルイス・エンリケが背負った背番号だ。運命のいたずらだろうか、アレニャは自らをトップチームに引き上げ、厳しい言葉で成長を促した恩師と同じ背番号を付けることになったのだ。
■組み立ての「中継地点」となり、ゴールに絡む仕事もできる
アレニャは実に“バルサらしい”プレーヤーだ。
足元の技術に優れているため、たとえ早くて強いパスが入ってもスッと収めることができる。ボールコントロールに無駄な時間をかけないことで、早いパス回しの邪魔になることがないのだ。アレニャが攻撃の組み立てに関与する頻度は非常に高く、「中継地点」としての役割をしっかりと果たせている。
かつてルイス・エンリケに指摘された「無難なエリアでのプレー」も減ってきている。ビジャレアル戦のゴールは、中盤から相手最終ラインの裏に抜け出る動きによって生まれた。また、第34節のアラベス戦でもディフェンスの背後に飛び出してパスを受け、冷静にゴールネットを揺らしてみせた。勝ち点奪取に直結するようなプレーを、今季のアレニャは見せ始めている。
バルサでの成功を夢見て、ひたむきに努力を重ねてきたアレニャ。彼がバルサで重要な存在となる日も、そう遠くないかもしれない。
文=松本武水
写真=Getty Images
だが今季、多くのタレントがひしめく“激戦区”の中盤で、ポジション争いに身を投じているカンテラーノがいる。カルレス・アレニャ、21歳。「リーガ・エスパニョーラ版ヤングスター特集企画」の最終回は、この若者を紹介したいと思う。
名前:カルレス・アレニャ(Carles Alena)
誕生日:1998年1月5日
年齢:21歳
身長/体重:180cm/73kg
主なポジション:センターミッドフィルダー
リーグ成績:14試合出場2ゴール0アシスト
■トップチームデビュー戦でゴールも…指揮官は「今の私にだってできる」
カタルーニャ州バルセロナ県マタロー生まれのアレニャは、8歳の時にバルサのカンテラに入団する。細かいタッチで相手を翻弄するドリブルと左足のキックの精度は、当時から群を抜いていた。
2015年にはBチームに昇格。2016年11月30日にはコパ・デル・レイのエルクレス戦でトップチームデビューを果たし、初ゴールまで決めてみせた。だが、アレニャをピッチに送り出した当時の指揮官ルイス・エンリケは、試合後にこう注文をつけた。
「アレニャはポジショニングを改善しないといけない。相手に脅威を与えられないエリアでボールを受けるだけなら、今の私にだってできるよ」
バルセロナの日刊紙『エル・ペリオディコ・デ・カタルーニャ』が報じた、指揮官の厳しい言葉。だが、アレニャがこの苦言にめげることはなかった。「僕は多くのことを改善する必要がある。ミスから学び続けなければならないね」と自己批判を語り、さらなるレベルアップに着手していく。
■右大腿の大怪我、ラ・リーガ初ゴール、そして手にした恩師と同じ背番号「21」
2017−18シーズン、アレニャは翌シーズンのトップチーム昇格を約束されていた。8歳で入団してからずっと憧れていた場所に、ようやく辿り着ける——。だが、開きかけたトップチームへの門は、急に閉ざされることになる。セグンダ・ディビシオン最終節のサラゴサ戦で右大腿ハムストリングの腱を断裂。約3ヶ月ピッチから離れざるを得ないような大怪我だった。
今季は出場機会を得るためにBチームで始動。焦ることなく、地道にフォームを上げていった。そしてアレニャの忍耐は、2018年12月2日に実を結ぶ。ラ・リーガ第14節のビジャレアル戦で70分から途中出場すると、試合終了間際の87分にリーグ戦初ゴールを記録。リオネル・メッシからパスを受けると、絶妙なループシュートでゴールネットを揺らした。
『カンプ・ノウ』で素晴らしいゴールを決めたアレニャは、負傷により延期されていたトップチームへの正式登録と、背番号「21」を手に入れた。バルサの「21番」といえば、かつてルイス・エンリケが背負った背番号だ。運命のいたずらだろうか、アレニャは自らをトップチームに引き上げ、厳しい言葉で成長を促した恩師と同じ背番号を付けることになったのだ。
■組み立ての「中継地点」となり、ゴールに絡む仕事もできる
アレニャは実に“バルサらしい”プレーヤーだ。
足元の技術に優れているため、たとえ早くて強いパスが入ってもスッと収めることができる。ボールコントロールに無駄な時間をかけないことで、早いパス回しの邪魔になることがないのだ。アレニャが攻撃の組み立てに関与する頻度は非常に高く、「中継地点」としての役割をしっかりと果たせている。
かつてルイス・エンリケに指摘された「無難なエリアでのプレー」も減ってきている。ビジャレアル戦のゴールは、中盤から相手最終ラインの裏に抜け出る動きによって生まれた。また、第34節のアラベス戦でもディフェンスの背後に飛び出してパスを受け、冷静にゴールネットを揺らしてみせた。勝ち点奪取に直結するようなプレーを、今季のアレニャは見せ始めている。
バルサでの成功を夢見て、ひたむきに努力を重ねてきたアレニャ。彼がバルサで重要な存在となる日も、そう遠くないかもしれない。
文=松本武水
写真=Getty Images