降格が決まったサウサンプトン、“首相の声援”と“主将の奮起”もクラブ史上最低の成績に
2023年5月15日(月)18時26分 サッカーキング
イングランドのサウサンプトンが11シーズンを過ごしたプレミアリーグに別れを告げることとなった。
今季プレミアリーグで最下位に沈むサウサンプトンは、13日のフルアム戦に0−2で敗れて4連敗。直近は11試合に勝てておらず、2試合を残して残留圏との差が8ポイントとなり、2部降格が決定した。サウサンプトンは2012−13シーズンよりプレミアリーグに昇格すると、同年夏には日本代表DF吉田麻也も加入。その後は安定した成績を残しながら、2016−17シーズンにはヨーロッパリーグ本大会にも出場した。
しかし、近年は苦しい戦いを強いられることに。2シーズン連続で15位に入って何とか残留を果たしていたが、今季はとうとう降格の憂き目に遭った。では、なぜ彼らは降格することになったのか?サッカー情報サイト『90MIN』が降格の原因を挙げているので紹介しよう。
■経験値
サッカーにおいて大事な要素とされる“経験値”は、とりわけ残留争いでは必要不可欠だ。普段では感じられないようなプレッシャーの中でプレーするわけだから、やはり経験が物を言うはずだ。その点において、サウサンプトンの補強は「経験値」を軽視していたという。
2022年1月にクラブを買収した現オーナーは、今季リヴァプールを超える1億3200万ポンド(約200億円)もの軍資金を用意して14選手を完全移籍で連れてきた。だが、記事によると加入した14名はいずれもプレミアリーグで出場経験のない選手だったという。
大半の選手を国外から連れてきたこともあるが、それだけではない。昨年夏、サウサンプトンはマンチェスター・Cからベルギー代表MFロメオ・ラヴィアとU−20イングランド代表FWサミュエル・エドジーといった有望株を獲得した。だが、前者は19歳、後者は20歳と若く、彼らはマンチェスター・C時代にプレミアリーグのピッチに立っていなかった。
今季の新加入した選手のうち、唯一のプレミアリーグ経験者はアーセナルから“ローン契約”でやってきた25歳のイギリス人MFエインズリー・メイトランド・ナイルズだ。完全移籍で加入した選手に限定すると、全員がプレミアリーグの経験値が「ゼロ」だった。
■得点力
「攻撃は水物」と言われ、長期のリーグ戦を戦う上で重要なのは守備だと考えられているが、ある程度の攻撃力がないと何も始まらない。サウサンプトンは今季プレミアリーグで36試合を戦ってわずかに31得点。マンチェスター・C所属のノルウェー代表FWアーリング・ハーランドが1人で挙げた得点数(36ゴール)を下回っているのだ。さらに、オープンプレーに限定するとリーグ最少の14ゴール。これは爆発的な攻撃力を誇るマンチェスター・Cのオープンプレーの得点数(61)の四分の一以下だ。
それでも、キャプテンとしてチームを支えるMFジェームズ・ウォード・プラウズが孤軍奮闘した。イングランド代表のワールドカップメンバーから落選してカタールに行けなかったミッドフィルダーは、今季プレミアでチーム最多となる全36試合の出場でチーム最多の8ゴール・3アシストを記録した。加えて、パス本数は当然のこと、タックル数やインターセプト数でもチーム最多を誇ったのだ。
そればかりかウォード・プラウズは“究極の個人技”である直接フリーキックから、今季プレミアリーグで最多となる3ゴールを奪っているのだ。さらに今季サウサンプトンは最もセットプレーのゴールに頼っているチームで、全得点の三分の一以上がセットプレーから生まれているのだが、それを蹴っているのは、もちろんウォード・プラウズだ。
とりわけ、ワールドカップ中断後はキャプテンへの“依存度”が異常だった。サウサンプトンはワールドカップ後の6試合で4ゴールしか奪えなかったのだが、その4点ともウォード・プラウズのゴールだった。ワールドカップ後のリーグ戦ではしばらくウォード・プラウズとアルゼンチン人MFカルロス・アルカラスしかゴールを奪えておらず、ワールドカップ後に3人目の“得点者”が生まれたのは3月18日のこと。それまでワールドカップ以降の13試合は2名しか得点者がいなかったのである。
ちなみにサウサンプトンは今季プレミアリーグでシュートの距離が最長だという。平均にしても18ヤード以上(ペナルティエリアの外)となっており、なかなかゴールが決まらないのも納得だ。
■史上2番目に負ける監督
今季は2018年からチームを率いるラルフ・ハーゼンヒュットル体制で開幕を迎えるも、なかなか結果が出ずにワールドカップ直前に同指揮官を解任。後任に、昨季2部リーグで年間最優秀監督に輝いたネイサン・ジョーンズをルートンから引き抜いたのだが、今振り返るとこれが致命傷だったのかもしれない。
ジョーンズは、11月からプレミアリーグ8試合でチームを指揮して「1勝7敗」という散々な成績。わずか3カ月で解任されることになったのだ。記事によると、プレミアリーグで暫定監督を除いた正式な指揮官の中で、ジョーンズの敗戦率「88%」を超えるのはフランク・デ・ブール氏の「100%」しかないという。オランダの英雄は、2017年にクリスタル・パレスの監督に就任するも開幕4連敗を喫してわずか2カ月でクラブを去った。
ちなみに、ジョーンズの唯一の勝利は1月14日のエヴァートン戦。敵地で2−1の勝利を収めたのだが、その時に全2点をマークしたのがウォード・プラウズ。2点目はイングランド代表GKジョーダン・ピックフォードが一歩も動けない完璧な直接フリーキックだった。
■ホームで最低
どのチームも成功の秘訣は「ホームの強さ」にあると思うが、今季のサウサンプトンのホームゲームでの成績は目も当てられない。今季ホームで18試合を戦ってわずかに勝ち点10(2勝4分け12敗)。これはリーグ最少であるとともに、1966年に初めてトップリーグに昇格して以降でクラブ史上最低のホームゲーム成績だという。
昨年10月に最年少で第79代の英国首相に就任したリシ・スナク氏も、愛する地元クラブが“奇跡の残留劇”を成し遂げることを信じ、冒頭のフラム戦に駆け付けた。だが、首相の声援もむなしく、チームは0−2で敗れて降格が決まってしまった。
無論、アウェイゲームで素晴らしい結果を残せたという話でもない。アウェイでの成績は4勝2分け12敗。ホームとアウェイを合わせて今季プレミアリーグで「24敗」も喫しているのである。これはサウサンプトンにとってトップリーグでのクラブ史上最多敗戦数だった。
サウサンプトンは、主将が孤軍奮闘し、首相も声援を送ったものの、成績を見ると落ちるべくして落ちたと言えるだろう…。
(記事/Footmedia)
今季プレミアリーグで最下位に沈むサウサンプトンは、13日のフルアム戦に0−2で敗れて4連敗。直近は11試合に勝てておらず、2試合を残して残留圏との差が8ポイントとなり、2部降格が決定した。サウサンプトンは2012−13シーズンよりプレミアリーグに昇格すると、同年夏には日本代表DF吉田麻也も加入。その後は安定した成績を残しながら、2016−17シーズンにはヨーロッパリーグ本大会にも出場した。
しかし、近年は苦しい戦いを強いられることに。2シーズン連続で15位に入って何とか残留を果たしていたが、今季はとうとう降格の憂き目に遭った。では、なぜ彼らは降格することになったのか?サッカー情報サイト『90MIN』が降格の原因を挙げているので紹介しよう。
■経験値
サッカーにおいて大事な要素とされる“経験値”は、とりわけ残留争いでは必要不可欠だ。普段では感じられないようなプレッシャーの中でプレーするわけだから、やはり経験が物を言うはずだ。その点において、サウサンプトンの補強は「経験値」を軽視していたという。
2022年1月にクラブを買収した現オーナーは、今季リヴァプールを超える1億3200万ポンド(約200億円)もの軍資金を用意して14選手を完全移籍で連れてきた。だが、記事によると加入した14名はいずれもプレミアリーグで出場経験のない選手だったという。
大半の選手を国外から連れてきたこともあるが、それだけではない。昨年夏、サウサンプトンはマンチェスター・Cからベルギー代表MFロメオ・ラヴィアとU−20イングランド代表FWサミュエル・エドジーといった有望株を獲得した。だが、前者は19歳、後者は20歳と若く、彼らはマンチェスター・C時代にプレミアリーグのピッチに立っていなかった。
今季の新加入した選手のうち、唯一のプレミアリーグ経験者はアーセナルから“ローン契約”でやってきた25歳のイギリス人MFエインズリー・メイトランド・ナイルズだ。完全移籍で加入した選手に限定すると、全員がプレミアリーグの経験値が「ゼロ」だった。
■得点力
「攻撃は水物」と言われ、長期のリーグ戦を戦う上で重要なのは守備だと考えられているが、ある程度の攻撃力がないと何も始まらない。サウサンプトンは今季プレミアリーグで36試合を戦ってわずかに31得点。マンチェスター・C所属のノルウェー代表FWアーリング・ハーランドが1人で挙げた得点数(36ゴール)を下回っているのだ。さらに、オープンプレーに限定するとリーグ最少の14ゴール。これは爆発的な攻撃力を誇るマンチェスター・Cのオープンプレーの得点数(61)の四分の一以下だ。
それでも、キャプテンとしてチームを支えるMFジェームズ・ウォード・プラウズが孤軍奮闘した。イングランド代表のワールドカップメンバーから落選してカタールに行けなかったミッドフィルダーは、今季プレミアでチーム最多となる全36試合の出場でチーム最多の8ゴール・3アシストを記録した。加えて、パス本数は当然のこと、タックル数やインターセプト数でもチーム最多を誇ったのだ。
そればかりかウォード・プラウズは“究極の個人技”である直接フリーキックから、今季プレミアリーグで最多となる3ゴールを奪っているのだ。さらに今季サウサンプトンは最もセットプレーのゴールに頼っているチームで、全得点の三分の一以上がセットプレーから生まれているのだが、それを蹴っているのは、もちろんウォード・プラウズだ。
とりわけ、ワールドカップ中断後はキャプテンへの“依存度”が異常だった。サウサンプトンはワールドカップ後の6試合で4ゴールしか奪えなかったのだが、その4点ともウォード・プラウズのゴールだった。ワールドカップ後のリーグ戦ではしばらくウォード・プラウズとアルゼンチン人MFカルロス・アルカラスしかゴールを奪えておらず、ワールドカップ後に3人目の“得点者”が生まれたのは3月18日のこと。それまでワールドカップ以降の13試合は2名しか得点者がいなかったのである。
ちなみにサウサンプトンは今季プレミアリーグでシュートの距離が最長だという。平均にしても18ヤード以上(ペナルティエリアの外)となっており、なかなかゴールが決まらないのも納得だ。
■史上2番目に負ける監督
今季は2018年からチームを率いるラルフ・ハーゼンヒュットル体制で開幕を迎えるも、なかなか結果が出ずにワールドカップ直前に同指揮官を解任。後任に、昨季2部リーグで年間最優秀監督に輝いたネイサン・ジョーンズをルートンから引き抜いたのだが、今振り返るとこれが致命傷だったのかもしれない。
ジョーンズは、11月からプレミアリーグ8試合でチームを指揮して「1勝7敗」という散々な成績。わずか3カ月で解任されることになったのだ。記事によると、プレミアリーグで暫定監督を除いた正式な指揮官の中で、ジョーンズの敗戦率「88%」を超えるのはフランク・デ・ブール氏の「100%」しかないという。オランダの英雄は、2017年にクリスタル・パレスの監督に就任するも開幕4連敗を喫してわずか2カ月でクラブを去った。
ちなみに、ジョーンズの唯一の勝利は1月14日のエヴァートン戦。敵地で2−1の勝利を収めたのだが、その時に全2点をマークしたのがウォード・プラウズ。2点目はイングランド代表GKジョーダン・ピックフォードが一歩も動けない完璧な直接フリーキックだった。
■ホームで最低
どのチームも成功の秘訣は「ホームの強さ」にあると思うが、今季のサウサンプトンのホームゲームでの成績は目も当てられない。今季ホームで18試合を戦ってわずかに勝ち点10(2勝4分け12敗)。これはリーグ最少であるとともに、1966年に初めてトップリーグに昇格して以降でクラブ史上最低のホームゲーム成績だという。
昨年10月に最年少で第79代の英国首相に就任したリシ・スナク氏も、愛する地元クラブが“奇跡の残留劇”を成し遂げることを信じ、冒頭のフラム戦に駆け付けた。だが、首相の声援もむなしく、チームは0−2で敗れて降格が決まってしまった。
無論、アウェイゲームで素晴らしい結果を残せたという話でもない。アウェイでの成績は4勝2分け12敗。ホームとアウェイを合わせて今季プレミアリーグで「24敗」も喫しているのである。これはサウサンプトンにとってトップリーグでのクラブ史上最多敗戦数だった。
サウサンプトンは、主将が孤軍奮闘し、首相も声援を送ったものの、成績を見ると落ちるべくして落ちたと言えるだろう…。
(記事/Footmedia)