同志社女子大チアから転身、伝統の同志社大応援団を率いる…指導部員不足に「私がはかまをはく」
2025年5月21日(水)14時1分 読売新聞
演舞で応援を率いる花川さん(左)(11日午後、神戸市須磨区で)
120年近い歴史を持つ同志社大の応援団に、同志社女子大生として初の団長が誕生した。表象文化学部4年花川美結さん(21)で、チアリーダーから転身した。武骨な学ランや羽織はかまに身を包み、応援席の最前列で選手らを鼓舞している。(矢沢寛茂)
「フレー、フレー、ドー、シー、シャー」。初夏の日差しが注ぐ「ほっともっとフィールド神戸」(神戸市須磨区)で11日、羽織はかまに素足のいでたちでスタンドに立った花川さんは野太い声を響かせ、チャンスでは全身を使った力強い演舞を見せた。
関西学生野球の春季リーグで、相手は京都大。チームは劇的なサヨナラ勝ちを収め、一瞬だけ笑顔を浮かべたが、「きょう、この日、1回ずつが大切」とエールの交換で締めくくるまで一挙一動に精魂を込めた。
中学からダンスに熱中し、高校生だった6年前、春の選抜高校野球大会に出場した系列高の応援に臨時のチアで駆り出された。甲子園のアルプスは「とにかく楽しいし、かわいい」。応援に目覚めた転機となった。
同志社女子大に入学後、迷わずチアリーダー部員となった。1906年創部と歴史があり、「英語の応援歌がかっこいい」と憧れていた同志社大の応援団の一員として、硬式、準硬式野球部やアメリカンフットボール部など、年間100回ほどある応援と連日の練習に明け暮れた。
ただ、応援団の運営には懸案があった。団長を含む指導部と吹奏楽部、チアリーダー部が参加する応援団は計約100人で構成されるが、同学年に団を統率する指導部員がおらず、同期の団員を悩ませていた。
「私がはかまをはく」。そう覚悟を決めたが、大学からは新体制の発足直前、「規約で団長は同志社大の学生しかなれない」と指摘された。それでも、「花川しかいない」と団員が結束し、規約の改正を実現。第117代、女性では歴代2人目の団長に就き、今年から団を率いている。
副団長で吹奏楽部の4年横井志帆さん(21)は「団長は明るく楽天的だが、誰よりも責任感があり、団を向上させたいという心構えがあった」と振り返る。
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演舞や声かけの種類は100種類以上あり、花川さんは大石磨秀・前団長らから指導を仰ぐ。特に発声は、チアの明るくはじける声とは正反対で、「地鳴りのように、腹や足元からわき上がる声」を意識。4代前に初の女性団長を務めた各務理紗さんの録画を繰り返し見て鍛錬を重ねた。
そんな団長の姿に仲間も信頼を寄せる。渉外担当の3年水谷菜沖さん(21)は「チアの頃と変わらない輝きと頼りがいがあり、みんなを引っ張ってくれる」と感謝する。
今月24、25日には、関西学生野球で宿命のライバル、立命館大との「同立戦」が控える。花川さんは「目標は常に勝利。選手を信じ、今しかできないという意識とプライドを持って応援を全うしたい」と全身全霊をささげるつもりだ。