3人で泣いた日も…苦境乗り越えつかんだ“涙”の初V 清水大成を支えたチームの想い「やっと報われた」

2025年5月26日(月)12時15分 ALBA Net

左から堀川智トレーナー、清水大成、沖田悠輔キャディ(撮影:上山敬太)

<日本プロゴルフ選手権 最終日◇25日◇三甲ゴルフ倶楽部 谷汲コース(岐阜県)◇7337ヤード・パー72>

今季の国内メジャー初戦は、26歳・清水大成の悲願となるツアー初優勝で幕を閉じた。清水がウイニングパットを沈める直前、最終18番グリーンそばでその姿を見守っていた専属トレーナー・堀川智氏(ほりかわ・さとる、51)は、優勝が決まった瞬間に大粒の涙を流した。


清水はキャディで親友の沖田悠輔氏、堀川トレーナーの3人チームで毎試合を戦っている。清水を支える二人にこれまでの歩みと、初優勝の思いを聞いた。

堀川トレーナーは、ストレッチやケアだけでなく、試合でも清水のプレーを間近で見守る。バーディが決まれば「ナイスバーディ!」と誰よりも大きな声で盛り上げる。選手に寄り添い、明るい空気を作る名トレーナーだ。

表彰式で優勝スピーチを見届けながら、「やっと報われた…」と目を細める。これまで何度も惜敗を味わってきた。「(清水が)いいプレーをしていても、相手がもっといいプレーをするから、追いつけない。そういうのがずっと続いていた。本人が一番つらかっただろうし、本当に支えることができて良かったなって思います」と心境を明かした。

「他のプロからも、ポテンシャルはすごいし、いつ勝ってもおかしくないと言われていた。今まで色んな選手に帯同させてもらったけど、勝つときってすごい運を引き寄せる。アンラッキーをラッキーにして勝つという選手が多かった。(清水は)技術とかはあるけれど、運を引き付ける強さがなかった。でも、今週はそれを引き寄せた」


これまで石川遼池田勇太小平智などをサポートし、何度も優勝する姿を見てきた。そんな堀川トレーナーでも、ここまで涙を流したことは「たぶん、ないです」と明かす。他の選手に比べて、優勝するまでの期間が長く、苦しい姿を多く見てきたからだ。「まだこの歳で泣けるんだって思いましたね。毎回優勝はうれしいけど、一番うれしい」。

思い返すのは、昨年の「カシオワールドオープン」でのこと。2位で決勝ラウンドを迎えたが、3日目の7番パー5でボールがロストし、“+5”を叩いた。そのときは「ロッカーで3人で泣いてしまったんです」。喜びだけでなく、悔しさもチームで分かち合ってきた。

そんな堀川トレーナーが大切にしてきたのは、「和ませる」こと。「真剣な話をしたのは、今までで1回か2回ぐらいしかないかな」。父と息子のような年齢差ではあるが、「友達みたいな」関係性を重視した。「そうやってくだらない話をして、呼び方も3人でいるときは“たいちゃん”、大成くんは“ほりちゃん”って呼ぶ。みんなの前では堀川さんって呼びますけどね。(距離感が)近すぎてはいけないと思いますが、それしか心がけていなかった」と、信頼関係を育んできた。


そして、試合後のウォーターシャワーで涙を流したもう一人、キャディの沖田悠輔氏。「やっとだなって。去年は勝てそうな試合もいっぱいあったけど、なかなか勝てなくて、苦しかった。(初優勝まで)あっという間ではなかった、長かったですね。僕がそう思うので、本人はもっとそう感じていると思う」と目に涙を溜めながら、優勝カップを掲げる清水の姿を見つめた。


二人のタッグは今年で3年目。清水とは日大ゴルフ部の同期で、もともと沖田氏は会社員だった。「キャディを固定してやりたいという相談を受けて、すぐに会社を辞めました」と即決し、今に至る。息の合った“ベストコンビ”は試合会場だけではなく、「寝る以外ずっと一緒です(笑)」。ホテルの部屋で一緒にゲームをするなど、濃密な時間を過ごしている。

これまでの2年間「初優勝」だけを目標にしていた二人だが、「今年は勝つだけではなくて、賞金王という目標でやっていた」という。「早めに1勝できたのは大きい。最高ですね。最高です…」。そう言って、優勝の喜びをかみしめた。


清水は優勝後、「いつもあの二人には…本当…なんていうか…」と感情があふれて言葉に詰まりながらも、感謝の思いを語った。「本当に助けてもらった。いい時も、悪い時も自分のテンションを常に一定にしてくれる。キャディは落ち着いているので、そういうところに助けられたことは何度もあります。トレーナーさんは自分を息子のように思ってくれていて、いい時も悪いときも、かけてくれる言葉が本当に優しい。いつも…本当にありがとうございます、と伝えたいです」。

この一勝には、それぞれの強い想いが詰まっていた。ともに戦い、支え続けてきた二人の涙は、この日、誰よりもまぶしく輝き、静かにこの勝利の重みを物語っていた。まるで家族のような、あたたかな絆に包まれたチーム。その姿に胸が満たされた。(文・高木彩音)


<ゴルフ情報ALBA Net>

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