史上最長レース距離の混沌フィニッシュを、トヨタのデニー・ハムリンが制す/NASCAR第14戦

2022年6月1日(水)12時40分 AUTOSPORT web

 インディアナポリスと並ぶ“聖地”シャーロット・モータースピードウェイで開催されたNASCARカップシリーズ第14戦『Coca-Cola 600』は、予選でキャリア通算34度目のポールウイナーとなったデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が、2度の延長戦によりカップシリーズ史上最長のレース距離となった決勝で今季2勝目を獲得。この勝利により、ハムリンは現在のNASCARで“Crown Jewel Race(クラウン・ジュエル・レース)”と呼ばれる3大イベント、栄光の『Daytona 500』と『Southern 500』、そして今回の『Coca-Cola 600』の全タイトルを手にした。


 伝統のインディ500がIMSで開催された同じ週末、ノースカロライナ州の1.5マイルオーバルでは前週のオールスター戦を経てNASCARカップのシリーズ戦が再開され、プラクティスではディフェンディングチャンピオンのカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が最速を記録してみせた。


 しかし最初のグループで首位に立った王者はターン1で右リヤからウォールに激突し、この後の予選出走が「限りなく難しい」状況に追い込まれてしまう。その波乱を逆手に取ったのがトヨタ勢で、そのうち「ターン3と4に関していかにローラインを走れるか」をテーマに掲げたジョー・ギブス・レーシングのハムリンが最速タイムを記録。背後にカート・ブッシュ(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)が続き、2列目にもカイルとクリストファー・ベルが続くなど、トヨタがトップ4を占拠する結果となった。


 400ラップの勝負はオープニングから熾烈な展開を予感させる幕開けとなり、最初の周回をサイド・バイ・サイドで周り切ったハムリンとカートが1000分の1秒未満でコントロールラインを横切ると、2周目にはカートが0.004秒差、わずか6インチ(約15cm)リードを奪う。


 しかし意を決したハムリンが3周目に0.01秒差でトップの座を取り戻すと、この緊迫した展開がレース全体のトーンを決定づけ、その後は13人の異なるドライバー間で合計31回のリードチェンジが生み出されることに。


 ステージ1こそ、失意のラーソンに代わってHMSの僚友チェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が勝利を飾ったが、ステージ2では今夏にキミ・ライコネンの招聘を決めたトラックハウス・レーシングの2台、ダニエル・スアレスと今季“台風の目”ロス・チャスティンが首位戦線に浮上してくる。


 するとこの日10回目のリスタートで中段に位置取ったライアン・ブレイニー(スチュワート-ハース・レーシング/フォード・マスタング)が、エプロンに左フロントタイヤを引っ掛けて姿勢を乱し、カート・ブッシュやウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)を含む13台が巻き込まれる“ビッグ・ワン”に発展する。

予選では「ターン3と4に関していかにローラインを走れるか」をテーマに掲げたジョー・ギブス・レーシングのデニー・ハムリンが最速タイムを記録する
スタートでは背後にカート・ブッシュ(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)が続き、2列目にもカイルとクリストファー・ベルが続くなど、トヨタがトップ4を占拠
ライアン・ブレイニー(スチュワート-ハース・レーシング/フォード・マスタング)を起点に13台が巻き込まれる”ビッグ・ワン”も発生
ステージ2では今夏にキミ・ライコネンの招聘を決めたトラックハウス・レーシングの2台、ダニエル・スアレスと今季”台風の目”ロス・チャスティンが首位戦線に浮上してくる


■アクシデントに乗じてラーソンが浮上も接触、ハムリンがトップチェッカー


 そのままボトムラインからチームメイト対決を制したスアレスがステージ2を勝ち獲り、迎えたファイナルステージではこの日最多の153周をリードしたチャスティンと、その僚友スアレスに対してHMSのバイロンが喰い下がる展開に。すると残り50周を前にスアレスのシボレーはチェイス・ブリスコ(スチュワート-ハース・レーシング/フォード・マスタング)とヒットしたあと4台を巻き込むアクシデントを誘発。


 そのうちインフィールドに弾き出されたクリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)は5度のバレルロールを喫し、ルーフを下にしてストップするクラッシュに見舞われる。


 こうした混乱に乗じて「史上最も驚くべきカムバック」を披露したのがラーソンで、事故の修復を経たマシンで後方からスタートし、3回のピットロードペナルティ、ターン4でのスピン、ピットストールでの火災に見舞われながらも這い上がってきた王者は、残り5周の段階でブリスコのフォードとハイ&ボトムを入れ替えながらのサイド・バイ・サイドを繰り広げる。


 するとラストアタックを仕掛けたブリスコがボトムへのダイブで姿勢を乱し、右フロントタイヤを破損。17回目のコーションにより延長戦突入が決定し、迎えたリスタート。


 残り2周のホワイトフラッグを目前に、首位ラーソンに対しインサイドからオースティン・ディロン(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)が、そしてウォールスレスレのハイラインからチャスティンが仕掛けると、3台はフロントストレッチ到達目前でサンドイッチ状態のまま接触の憂き目となってしまう。


 この混乱を抜け出たのは“フレッシュな4タイヤ”を履くハムリンで、2度目の延長リスタートで最強の弟カイルを抑え込んだ18号車FedEXカムリがそのまま413周目のトップチェッカー。「カオスのなかでこそ生存能力が試される」と語った男が、カップ戦キャリア通算48勝目を手にした。


「それはとても特別な勝利だ。これは僕の履歴書に載っていない最後の大きなひとつで、深い意味を持つ。ポールから出たとはいえ、1日を通じてあまり良いクルマではなかったが、適切なタイミングで適切な場所に身を置くことでこの勝利を掴むことができたんだ。なんて壮絶なバトルなんだ!」と、喜びを爆発させたハムリン。


 併催のNASCARエクスフィニティ・シリーズ第13戦ではジョシュ・ベリー(JRモータースポーツ/シボレー・カマロ)がチームにホームトラック初勝利をもたらし、一方のNASCARキャンピング・ワールド・トラックシリーズ第10戦ではニース・モータースポーツから参戦のチャスティン(シボレー・シルバラードRST)が後続の“プッシュ”を得てシリーズ通算4勝目を獲得。


 服部茂章率いるハットリ・レーシング・エンタープライゼスは、16号車タイラー・アンクラムが20位、チェイス・パーディの61号車が15位で本拠地戦を終えている。

クリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)は5度のバレルロールを喫し、ルーフを下にしてストップ
「カオスのなかでこそ生存能力が試される」と語ったデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が、カップ戦キャリア通算48勝目を手にした
併催のエクスフィニティ第13戦ではジョシュ・ベリー(JRモータースポーツ/シボレー・カマロ)がチームにホームトラック初勝利をもたらす
キャンピング・ワールド・トラックシリーズ第10戦ではニース・モータースポーツから参戦のチャスティン(シボレー・シルバラードRST)が通算4勝目をスイカで祝う

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