ケガのリスクが付きまとうヘッドスライディング ファンは見守るしかないのか
2023年6月12日(月)6時0分 ココカラネクスト
WBCでは源田がヘッドスライディングで小指を負傷した(C)Getty Images
ヘッドスライディングは野球で盛り上がるプレーの1つだが、接触が伴うため、見るとヒヤヒヤしてしまう人も多いのではないか。
先日は日本ハムの「二刀流」として期待される矢沢宏太が利き腕にケガを負ったばかり。6月3日巨人戦(東京ドーム)の三塁走者で、スクイズの際に本塁へ頭から飛び込んだ際に左手小指と右膝を痛めた。開幕から一軍でプレーしてきたが、その影響で出場選手登録を抹消された。
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投手のヘッドスライディング禁止はどの球団でも常識だが、二刀流の矢沢は野手として出場していた際の全力プレー。とはいえ、投手にとっては命ともいえる利き腕を危険にさらしたことにかわりはなく、大きな代償となった。
利き腕の小指負傷といえば、WBC1次ラウンド韓国戦(3月10日)の走塁で骨折した侍ジャパンの源田壮亮(西武)が思い出される。二塁走者としてけん制を受け、ヘッドスライディングで帰塁。韓国選手がベースをふさぐ形でしてきたタッチをかいくぐろうとした際に、右手の小指があらぬ方向に曲がったと源田自らが明かしている。
源田はその後も強行出場して侍ジャパンを世界一へと導いたが、西武に戻ってからは治療に専念し、開幕から約2か月離脱した。盗塁王の経験がある源田ほどの走塁巧者であってもケガをしてしまうのが、ヘッドスライディングの怖さ。指をベースにぶつけるだけでなく、強くタッチされたり、交錯するリスクがある。
たとえヘッドスライディングに慣れている選手であっても、球場の土や湿度の状況によって摩擦が違えば、ベースまでの距離間も違う。本来、守備側のタッチをかいくぐるための技術だが、ベースに伸ばしやすいのは利き腕が多い。手だけでなく、肩や頸椎にも負担がかかる。
ヘッドスライディングでケガをするケースは後を絶たない。過去には柳田悠岐(ソフトバンク)、坂本勇人(巨人)といったスター選手も走塁中のヘッドスライディングが原因で、シーズンの一部を棒に振ったことがある。
一塁に駆け抜けた場合とヘッドスライディングした場合の速さが近年検証されているが、それぞれで違いがあり、どちらが優位かは言いづらい。大差がなければ、ケガのリスクを考えて選ぶのが賢明といえそうだが、プロ野球ではいまだに一塁へ頭から飛び込む姿がある。
とくにスパイクで手を踏まれる危険性が高い一塁へのヘッドスライディング。見る側には、高校野球のような必死さや1球への執念が伝わる。微妙なタイミングで、審判の判定を有利にしたい思惑もあるだろう。だが、次代を担う子どもたちは、プロのマネをする。アマ野球では禁止するチームもあるなか、プロ野球ではケガにつながるリスクのあるヘッドスライディングを、今後もドキドキしながら見守るしかできないものだろうか。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]