【渥美心のEWC参戦記】21年ぶり開催で事前情報なし。特別ルールで予備ライト装備/第2戦スパ24時間(前編)

2022年6月25日(土)22時43分 AUTOSPORT web

 2022年はフランスに移住し、OG Motorsport BY SarazinからFIM世界耐久選手権(EWC)に“フル参戦”することになった渥美心選手。そんな渥美選手がEWC参戦のなかで感じた、日本のレースとの違いや耐久レースならではの出来事や裏側を語ります。


 今回は2001年以来に開催されたスパ24時間の雰囲気やレースに参戦した心情や表彰台獲得の思いなど、レースウイークの日々を渥美選手と同行している広報兼ヘルパーの目線でお伝えします!


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 ベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで開催された第2戦スパ24時間は、EWCでは21年ぶりの開催となりました。F1も開催されており、世界で一番美しいと言われるこのサーキットは、オールージュ、ラディオンが有名なことで知られており、コースの長さは約7kmで広くアップダウンがとても激しいコースです。

スパ・フランコルシャンのオールージュ・ラディオン


 自分たちのチームからはこのサーキットに誰ひとり来たことがなかったため、事前の情報はまったくない状態で、レースウイークに先駆けて2日間の事前テストが始まりました。まず到着して最初に、自分たちのチームのトラックが他チームより少し背が高いためトンネルを通れないというとんでもないハプニングからスタートしました(笑) どうしようもないのでコースを通ってパドックに到着しました。


 そして、翌朝からテストが始まりました。今回はチームのライダー全員が慣れていないコースなので、できるだけ多くの走行をできるように2台のマシンを同時に走らせてプレスパに挑みました。その結果、ランデブー走行をしながら走り方を議論して少しずつ早いペースで走れるようになり、SSTクラス2位のタイムを記録して順調なペースでテストを終えることができました。


「コースはアップダウンを繰り返していきながら高速コーナーを駆け抜けるレイアウトで、集中力が試されるサーキットという印象でした。所々日本のサーキットのコーナーを思い出させるようなコーナーもあり、これまでの経験が活用できたことも好走のひとつの要因だと思います。今回のテストの結果はレースに向けてチームに良い流れをもたらす事ができたと思います(渥美心)」

渥美心(OG Motorsport BY Sarazin)/2022EWC第2戦スパ24時間


■街中でのイベント、コース上が真っ暗なナイトセッション


 レースウイーク初日の火曜日の走行日はフリー走行が2回で計7時間、木曜日は午前に2時間のフリー走行がありました。水曜日は車検日のため走行はなく、午後からはサーキット近辺の街の広場でイベントが行われました!

街中でのイベント


 一時的に公道を通行止めにしてサーキットから広場まで自走で走る姿は地元の人たちを魅了したと思います。広場についてからは小さな子供から、お年寄りの方まで身動きが取れないほどたくさんの人がサインや握手を求めて集まりました。


 やはり、直接バイクやライダーと触れ合うことでレースへの関心を持つきっかけになると思うので、是非日本でもどんどんとこのようなイベントが増えればいいなと願います。

いつも以上にパワーの強いライトをつけて走行


 木曜日の午後にはナイトセッションが行われました。なんと!22:20〜0:30までとかなり遅くの時間からセッションが始まりました。そして今回、チームにとっては最大の問題点、観客にとっては見どころとなる『夜間のライト』についてお話ししたいと思います。


 スパ・フランコルシャンはコース上に照明がないため、レース当日はコース上に合計26台前後の仮設ライトが設置されました。さらに、各チームはマシンに予備ライトをつけることができるという今回限りの特別な条件があったため、各チームがそれぞれ工夫を重ねてレースウイークを迎えました。


 今回が初めてのことなので他のチームがどのような工夫を施しているのか気になり、ピットレーンを散策して他チームのライト事情について見て回りましたが横に4つのライトを並べていたり、カウルを切り取って埋め込んでいたりと本当にチームそれぞれで「なるほど〜」ととても興味深く夜間走行の日が待ち遠しく思いました。

ヨシムラSERT Motulのライト/2022EWC第2戦スパ24時間


「2個所のみとても暗いコーナーもありましたが全体的には仮設照明のおかげで想定していた以上に明るかったので、心配するほどではありませんでした。日が落ちた鈴鹿8耐の方がもしかしたら暗いかもしれません。走行3回目にはエンジン温存のために走らせていなかったレース用バイクをテスト。ピットアウトしてすぐに赤旗になりましたが、明らかに乗り心地の良さとエンジンパワーの強さを感じ、好感触でした。しかし、赤旗再開後の1周目7コーナーにてフロントタイヤの冷えが原因で転倒。低い位置から短い距離を滑走しただけだったので自分の体には擦り傷もありませんでした」


「そして、ピットに戻るとチームのみんなが心配してくれて、メカさん達が一生懸命作ってくれたバイクを傷つけてしまったことに申し訳なく思い謝ると『ココロが無事なら良かった。転倒は付き物だから何も気にしなくていいよ!』と温かく励ましの言葉をくださり、その日は深夜0:30だったので明日に備えて早く寝るように言ってくれました。ちなみにその日はメカさん達は修復のため深夜2時ごろまで作業をしてくれていたと聞いて本当に感謝しかありません」

2022EWC第2戦スパ24時間


■予選


「木曜日午後の予選は各ライダー20分間×2回。フロントタイヤはすべての予選セッションを通して1本のみ、リヤタイヤは3人に1本ずつの計4本を使用しました。予選1回目では誰の邪魔もなく自分のペースでタイムアタックできるようにセッション開始から1分遅らせてピットアウト。2台のバイクと一緒のタイミングでのピットアウトになりました」


「どちらもヤマハの速いチームなので後ろに付いて学ぼうと思ったものの、速すぎて着いていけませんでした。予定通り単独でのアタックになり、計測2周目には2分25秒317の自己ベストを記録! 次の周はミスをしたので少し息を整えました。1周回ってアタックに入った途端に転倒者が発生し赤旗。再開後も少しリヤタイヤのグリップが落ちた状態で2分25秒890まで出せましたが、翌周に9コーナーのヘアピンでブレーキングをミスしコースアウト。その周にピットインしてセッションを終えました」


「金曜日の予選2回目ではベストタイムの更新はできませんでしたが、2分25秒後半〜26秒前半をほぼすべての周回で記録できて大きな自信になりました。3人中速い2人のベストタイムの平均タイムの順により39台中24番グリッドからのスタートが決定。SSTクラスでも11位と順位は沈みましたが、とにかく決勝に向けての準備をしてきたので自信を持ってレースに挑めそうでした」

OG Motorsport BY Sarazin/2022EWC第2戦スパ24時間

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