3勝目を挙げ王者争い独走のパロウ。来季のマクラーレン移籍にも翳りか

2023年6月30日(金)10時34分 AUTOSPORT web

 6月19日に決勝レースが行われたNTTインディカー・シリーズ第8戦ロードアメリカ。3番手スタートから逆転を果たして優勝を飾ったアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ)は、これで今シーズン3回目の勝利を挙げ、自身2度目のチャンピオンへ着々と歩みを進めている。


 日本のスーパーフォーミュラやスーパーGTに参戦していたパロウは、2020年にデイル・コイン・レーシング・ウィズ・チームゴウからインディカーにデビュー。2シーズン目には強豪チップ・ガナッシに加入し、移籍初年度にインディーカー・チャンピオンの座に輝いた。

2021年NTTインディカー・シリーズのチャンピオンとなったアレックス・パロウ


 スコット・ディクソンに代わるチップ・ガナッシ・レーシングのエースドライバーとして期待が高まっていたが、翌2022年の半ばにパロウは『2023年にはアロウ・マクラーレンへ移籍する』と突如発表し、周囲は大きな騒ぎとなった。


 結局は、裁判所の調停によって2023年もチップ・ガナッシで走ることになり、2022年最終戦のラグナセカでは勝利を挙げた。この優勝により、パロウとチームの間でぎくしゃくしていた関係も正常に戻り、今シーズンの大活躍が実現されている。


 しかしパロウは、2024年にはアロウ・マクラーレンへ移籍することになっている。もちろん今季のチップ・ガナッシは、今年限りでチームを離れるドライバーを全力でサポートしており、ホンダ陣営のトップ・チームとしてパロウとともに3勝を挙げ、チャンピオンシップ獲得の可能性も高まってきている。


 そしてここへ来て、『パロウはアロウ・マクラーレンへの移籍をやめ、チップ・ガナッシに残留するのではないか』という噂が流れ始めているのだ。なぜなら、もしパロウがインディカーで戦い続けるならば、今のアロウ・マクラーレンに移籍するメリットは大きくないと言えるからだ。


 パロウがアロウ・マクラーレンに移籍したい理由は、“F1に挑戦できるかもしれない”という点にあったはずだ。


 実際、2022年にはバルセロナでマクラーレンF1をテストドライブし、F1アメリカGPではフリープラクティス出走も果たした。しかし、今シーズンのマクラーレンF1のドライバーはランド・ノリスとオスカー・ピアストリとなっており、パロウがレギュラードライバーとなる可能性はほぼゼロだといえる。


 また、パロウが26歳なのに対して、ノリスは23歳、ピアストリはさらに若い22歳ということもあり、年齢面からみてもパロウのF1初挑戦に対する障壁は高い。


 ただ、今日以降どれだけのテストをマクラーレンで行うことができるのかは不明だが、そこでのパフォーマンス次第ではマクラーレン以外のチームからF1に参戦……という可能性もあり、実際にアルファタウリからF1デビューするのではないかという噂も出ている。。

2022年F1第19戦アメリカGPでマクラーレンからFP1に出走したアレックス・パロウ


 パロウがF1への挑戦を諦め、インディカーでこれから先も走るという決意を固めるのなら、現在所属しているチップ・ガナッシに残る方が好成績を挙げられるはずだ。


 また、一方のアロウ・マクラーレンについてはどこまでインディカー・シリーズに参戦し続けるのかもわからず、突如としてシリーズを去る恐れもある。少なくとも、その可能性はガナッシより断然高いといえるだろう。


■マクラーレン移籍はF1への道か、はたまたお金の問題か


 パロウの移籍を最後に左右するのは、お金の問題なのかもしれない。


 例えば、アロウ・マクラーレンはパロウに高額をオファーし、チップ・ガナッシはそうでもない……というのなら、『アロウ・マクラーレンに移籍して、チームの将来性に期待しよう』とパロウが考えても仕方がないだろう。


 ところが、今聞こえてきているのは、パロウが契約を改めると言うのなら、チップ・ガナッシはそれなりの契約金を払う意志がある……という話なのだ。それも、“かなりの額を用意している”といった噂さえある。


 また、現在チップ・ガナッシに在籍し、これまで6度のチャンピオンに輝いたスコット・ディクソンもすでに42歳となった。ディクソンのキャリアも、終わりが近づいて来ていることは否定できない。


 そのため、すでにドライバーとして完成の領域に近づいているパロウは、チームのエースとなる才能を備えており、是非とも確保したいドライバーとなっているようだ。

第107回インディアナポリス500マイルレース 肩を取り合うアレックス・パロウとスコット・ディクソン


 パロウからすれば、ギャラに大きな差がないのならば、すでに3シーズンを戦ってチームにも馴染んでいるうえ、実力も実績もナンバーワンであるチップ・ガナッシで走り続ける方が賢明だろう。


 8戦を終え、ポイントスタンディングのトップにいるのはパロウ自身で、ランキング2位もチームメイトのエリクソンだ。彼らはここまで行われたレースの半数である4レースで勝っており、当然それはシリーズでナンバーワンの勝利数となっている。


 さらに今シーズンのパロウは、栄えあるインディ500のポールポジションも獲得した。


 対するアロウ・マクラーレンは、今季はいまだ1勝目を飾ることができていない。アンドレッティ・オートスポートを抜いて3番目に力を持つチームになりつつあるとも評されるアロウ・マクラーレンだが、勝利数で考えるならすでに今シーズン1勝を挙げているアンドレッティ・オートスポートの方が上だ。


 また、アロウ・マクラーレンはパト・オワードのチームとして機能して来ており、今年からは元F1ドライバーであるアレクサンダー・ロッシも参画している。3人目のドライバーであるフェリックス・ローゼンクヴィストが残留しての4台体制となるのか、はたまたローゼンクヴィストは放出されてしまうのか、その辺りは不明だが、2024年にパロウがアロウ・マクラーレンに加入した場合、オワードとロッシというチームメイトたちとうまくやっていけるのかという心配もある。


 今のチップ・ガナッシの体制であれば、パロウはディクソンやエリクソンらとの関係性も非常に良いために、なおのこと心配される要素だ。

NTTインディカー・シリーズ第5戦GMRグランプリ 表彰台に立った(左から)アレックス・パロウ、パト・オワード、アレクサンダー・ロッシ


 パロウは今や、インディカー・シリーズで最も完成度の高いドライバーとなっている。ディクソンやウィル・パワー(チーム・ペンスキー)といった大ベテラン勢はスピードにやや翳りが見えて来ており、パロウにとって最も強力なライバルとなるのはジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)だろう。


 オワードの速さもトップレベルで、オーバルでの勝利をすでに記録している点では彼の方が優っていると言えるが、レース中の冷静な状況判断、ミスの少なさ、ゴールまで走り切る能力ではパロウの方がオーワードより1ランク上だ。


 また、コルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポート・ウィズ・カーブ・アガジャニアン)の才能も素晴らしいが、コースを選ばない速さという点においては、所属しているチームの差もあるが、現状パロウの方が優れているだろう。

インディカー第8戦ロードアメリカ コルトン・ハータをオーバーテイクしトップに立ったアレックス・パロウ


 最近の4戦で3勝(インディアナポリス/ロードコース、デトロイト、ロードアメリカ)を挙げ、インディ500ではポールポジションを獲得し、今のパロウはノリに乗っていると言える。


 次戦ミド・オハイオでも優勝候補の筆頭はパロウだ。アイオワのダブルヘッダーか、ワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイでキャリア初のオーバルレース優勝を挙げる可能性も十分にある。


 シーズン前半にして、2021年に初めてチャンピオンになった時の勝利数『3』にすでに到達しているパロウ、今年の彼はいったい何勝を挙げるのか。

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