フェラーリ、残り2周の燃料補給でまたしても勝利を逃す。燃費戦略は「かなり無理があった」/第4戦LMGTEプロ

2022年7月11日(月)12時18分 AUTOSPORT web

 7月10日に行われたWEC世界耐久選手権第4戦『モンツァ6時間レース』のLMGTEプロクラスを制したのは、最後の2周で大逆転を飾ったコルベット・レーシングの64号車シボレー・コルベットC8.R(トミー・ミルナー/ニック・タンディ)だった。


 それまでレースをリードしていたAFコルセの52号車フェラーリ488 GTE Evo(ミゲル・モリーナ/アントニオ・フォコ)は、最後までレースを走り切る燃料がなく、残り2周となったところで燃料スプラッシュのためのピットへと向かい、数秒後ろを走っていたコルベットに勝利が転がり込んだ形だ。


 今回の勝利はコルベットにとって、ル・マン24時間レース以外のWECシリーズ戦における初勝利という記念すべきものとなった。


 勝利したタンディは「フェラーリは充分な燃料を持っていることを、信じて疑わなかった」という。この終了間際の大逆転についてタンディは、レースのほぼ折り返しとなる3時間直前にLMGTEクラスの車両がクラッシュし、それによりセーフティカーが導入されたことが起点になっていた、と述べている。


 スタートから2時間半過ぎ、ターン4の進入で姿勢を乱したTFスポーツ33号車アストンマーティン・バンテージAMRのエンリック・シャベスは宙を舞う大クラッシュに見舞われた。その後のセーフティカー中、LMGTEプロクラスではポルシェGTチームの91号車911 RSR-19を除いた4台がピット作業を行っていた。




 このピットインは3時間経過直前に行われたものだが、タンディはそのあと2回のルーティン・ストップでゴールまで走り切るのは、LMGTEプロの車両にとっては難しいだろうと予測していた。


「どのクルマがそれをできるのかは、分からなかった」とタンディはレース後に語った。


「セーフティカーのときに、5台中4台がピットインした。その時点では3時間が残っていたから、2回のピットで走り切るには、それぞれがどうにか(燃料をセーブ)してスティントを伸ばさなければならなかった。そこからは、燃費レースになったんだ」


 タンディによれば、残り1時間11分の時点で導入された最後のFCY(フルコースイエロー)が、またタイミングの悪いものだったという。ここでもオフ・シークエンスになっていた91号車を除く4台は、そろってピット作業を行っている。


 FCYは残り1時間02分というところで解除されたが、「このタイミングのおかげで、最後のスティントがさらに2周、長くなった」とタンディは言う。


「そして、僕らはそれを成し遂げることができたんだ」

WECモンツァ6時間レースのLMGTEプロクラスを制した64号車シボレー・コルベットC8.R


 タンディは残り2周で52号車のフォコがピットに飛び込んだことに驚いたといい、フェラーリは最後まで走り切ることを「信じて疑わなかった」と語っている。


「僕らは燃費の数値に対して、とてもアグレッシブにならざるを得なかった」とタンディ。


「フルコースイエローのあと、チームからは(ターゲットとすべき)燃費の数字を伝えられたけど、それを聞いたら思わず笑ってしまった。だけど、ピットに入ったらゲームオーバーなのも分かっていた」


 タンディはそこから、フェラーリに対してプレッシャーをかけようとベストを尽くしたが、フォコが最終スティントに向けてペースを上げていることに気づいたという。


「そのときは、彼らが燃費走行で周回数を伸ばすことを諦めたのであってほしい、と僕は思っていた」


「でも僕らのチームは、彼らが最後まで安心して走り切れるペースを刻んでいるものと思い込んでいた。だけど、結局はそうじゃなかったようだね。それは、まさに僕の目の前で彼らがピットに入る瞬間まで、分からなかった」


「これで突然、『いいレースだった、表彰台だ』から『やったぜ、モンツァ6時間の優勝だ!』へと、状況が変わったんだ。最高にクールだったから、これからパーティでもするよ」

LMGTEプロを制した64号車シボレー・コルベットC8.Rのニック・タンディとトミー・ミルナー


■燃費走行は「無理があった」と首位陥落のフォコ


 フェラーリ52号車のフォコは、最後の燃料スプラッシュは必然的なものであったと述べ、レース終盤にあと1回のセーフティカーやFCYが導入されなければ、燃料補給なしでチェッカーには辿り着けなかっただろう、と語っている。


 これは、2021年のモンツァ戦でレースをリードしていた51号車が、燃料補給で優勝を失ったことを想起させるエピソードだ。結果的にフェラーリは2年連続、同じような形で勝利を逃したことになる。


 燃費走行でスティントを伸ばすなど、別の戦略を採ることもできたのではないか、という質問に対して「かなり無理があったと思う」とフォコは返答している。


「どのスティントも同じ周回数を刻んでいたから、結局のところ周回を引き伸ばすのは不可能だった」


「戦略的に僕らはベストを尽くしたが、最後のところに到達するまでに異なる何かをすることはできなかった。最後のスティントの中盤から、レースがクリーンな状態ならスプラッシュが必要だと分かっていた。僕らはFCYやセーフティカーを望んでいたが、それは起こらなかったんだ」


 クラス優勝は逃したものの、AFコルセは母国レースでポジティブな結果を残すことができた、と26歳のフォコは言う。


「最後まで、最大限の力を出し切った」とフォコ。


「スプラッシュが必要だったのは、ちょっと不運だった。だけど、チームの全員は本当にいい仕事をしたと思っている」


「優勝できなかったのでハッピーではないけど、僕らにとっては良いリザルトだったよ」

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