混沌とするインディカー王者争い。チャンピオンの条件は残り5戦で1勝以上?

2017年7月26日(水)19時26分 AUTOSPORT web

 2017年のインディカー・シリーズは全17戦。トロントでのストリートレースはその12戦目だった。勝ったのはジョセフ・ニューガーデン。チーム・ペンスキー入り初年度の26歳は、大きな幸運を味方につけてシーズン2勝目、キャリア5勝目を挙げた。


 ランキングトップのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)やランキング2位のエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)はトロントのレース展開が大きく不利に働き、ポイント上位の差は一気に縮まった。


■8人に絞られたチャンピオン争い


 5戦を残してのランキングを見ると、トップがディクソンで、2番手がカストロネベス。3番手はシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)で、ここまでは全員1勝。4番手がニューガーデンで、5番手は2勝のウィル・パワー(チーム・ペンスキー)だ。トップ5にペンスキードライバーが4人。昨年もランキング1-2-3を達成しており、残り5戦での他チームの奮起を望みたい。


 パワーと同点でポイント6番手につけるグラハム・レイホール擁するレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングも奮闘中だ。過去2シーズンで一気に力をつけた彼らは現在もっとも士気が高いチームだ。1台体制の不利を跳ね返して2勝。彼らはエンジニアリング部門だけでなく、ピットストップのスピードでも二強と互角で張り合えるところまでレベルアップしてきている。


 ポイント7、8番手は佐藤琢磨とアレクサンダー・ロッシ。ともにアンドレッティ・オートスポートからのエントリー。トロントで不運に見舞われ16位だった琢磨と、ラッキーな展開で2位フィニッシュしたロッシ、ふたりはトップとそれぞれ72点差と93点差だ。もっとも広く考えたとしても、チャンピオン候補はここまでだろう。ポイント上位陣が揃ってトップ5圏外なんていうレースはほぼ起こり得ない。


 残り5戦でトップのディクソンと2番手のカストロネベスの差は僅か3点。パジェノーもトップと19点しか差はない。ニューガーデンはトップから23点差に迫り、パワーとレイホールも64点のビハインドだ。

インディカー王者に4度輝いているスコット・ディクソン


■チャンピオン候補筆頭はディクソン?


 誰がタイトルに向けた戦いでいちばん優位にあるのか? まずはディクソンだ。1勝しか記録していないが、その勝利はロード・アメリカだった。予選で圧倒的な速さを見せたペンスキー4人の後ろの5番手グリッドからスタートしての勝利。

今季初勝利を挙げたロード・アメリカでは総合力の高さを見せつけた


 残り5戦のうちの3戦はロードコースであることを考えると、ディクソンのタイトルという目は結構ありそうだ。高速オーバルで速さをみせるホンダに乗る彼はポコノでも速いはずだ。ダブルポイントのインディ500で九死に一生を得るアクシデントでリタイアしながらポイントリーダー。このことがガナッシのチーム力、ディクソンのドライバーとしての完成度の高さを証明している。


 次なる候補はランキング2番手のカストロネベスではなく、3番手につけているパジェノー。2016年チャンピオンにはパワーのようなムラがない。ディクソンに近い確実性の持ち主だ。そして、ガナッシの2+2体制に比べ、チーム・ペンスキーの4カーは遥かに効率性が高い。それをもっともじょうずに活用し、実力を伸ばしているのがパジェノーだ。

円熟味を増すディフェンディングチャンピオンのシモン・パジェノー


 昨年の実績を見ても、残りレースのうちの2戦(ミド・オハイオとソノマ)で彼は勝っている。精神的優位を彼は感ずることができるだろう。他のレースでのウイナーは、ポコノがパワーで、ワトキンス・グレンがディクソンだった。


 2003年以来のレースが開催されるゲートウェイ(全長1.2マイルのオーバル)が残りレースに入っていることもパジェノーには朗報かもしれない。彼は今年、フェニックスの1マイルオーバルで優勝している。ホンダのエアロキットを使うディクソンはこの手のコースでは不利にある。


 ただ、4人全員がタイトルの可能性を持っていることで、チーム・ペンスキーでは足の引っ張り合いが起こるケースも心配される。実際、2015年の最終戦ではファン・パブロ・モントーヤとパワーがレース中に接触。ディクソンが優勝し、モントーヤの前でディクソンのチームメイト3人がフィニッシュするというミラクルサポートもあってディクソンが大逆転でタイトルを手にしている。

ランキング7位の佐藤琢磨。王者争いにはポコノ戦での活躍が必須だ


■琢磨はポコノ戦がキーポイント


 レイホール辺りが地元のミド・オハイオで2年前のように優勝してかき回すことになれば、タイトル争いの行方はさらに混沌とする。ポコノでは過去4シーズンでスピードを見せている琢磨が勝つ可能性だって考えられる。


 こんな結末もドラマになるだろう。インディカー20年目、チーム・ペンスキーでの18年目を戦っているカストロネベスがチャンピオンになるというものだ。2003年に勝っているゲートウェイでもう1勝を挙げるなどして、これまで取り逃がし続けてきたインディカータイトルをついに42歳で獲得。そして、2018年にスタートするアキュラ・ペンスキーのデイトナ・プロトタイプ・インターナショナル清々しくスポーツカーへと転身していく。というストーリーはなかなかに美しい。

ランキング2位につける無冠の帝王エリオ・カストロネベス


 いずれにせよ、残り5戦で1勝以上がチャンピオンの条件だと思われる。そしてもちろん、序盤のクラッシュに巻き込まれてリタイアなど、ポイントの取りこぼしをしないことも必要だ。そう考えると、やっぱりディクソンとパジェノー、ふたりのシュアなドライバーが有利に戦うことになりそうだが、果たして……。


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