その時、何が起きていたのか。ドライバーたちが振り返る波乱のスーパーGT第6戦オートポリス《GT500あと読み2》

2019年9月13日(金)18時19分 AUTOSPORT web

 セーフティカー3度のコースインや、それぞれが装着したドライ/スリック、レイン/ウエットのタイヤ選択など、とにかく順位変動が大きくて全容が把握しにくいくらい、目まぐるしい展開となったスーパーGT第6戦オートポリスのGT500クラス決勝レース。ここでは、レース後に聞くことができたドライバーの声や、アクシデントの概要などをチームに聞いてまとめた。


●オープニングラップでまさかのクラッシュリタイアとなってしまったRAYBRIG NSX-GT
 オープニングラップで12番手から山本尚貴がステアリングを握ってスタートしたRAYBRIG NSX-GTだったが、11番手スタートのMOTUL MUGEN NSX-GTと最終セクターの登りのエリアで順位を争っているなかで、まさかのクラッシュ。チームによると、RAYBRIGのマシンは縁石に乗ってコントロールを失い、ランオフエリアに飛び出してガードレールにぶつかり、その後、スポンジバリアにぶつかった止まったのだという。モニターにはクラッシュして止まった状態しか映らず、その時点ではチームも詳細が分かったいなかった。RAYBRIGの伊与木仁エンジニアがその状況を振り返る。


「オープニングラップを終えて、マシンが戻って来なくて『あれ!?』と思っていたら、山本から『ごめん』との無線が入ったけど、こちらも状況がわからなかった。こういう荒れた展開だったからこそ、最後までコース上に残っていたかった。こういうレースで生き残るのが強いチーム。もったいなかった」と伊与木エンジニア。戻って来たマシンはフロントが大破しており、衝撃の大きさを物語る。次のレースまで2週間を切っているだけに、チームも休み返上で修復作業に取り組むことになるという。

オープニングラップでクラッシュパッドに正面から突っ込む姿がモニターに映し出されたRAYBRIG。損傷は大きかった。


●レインタイヤに交換して3番手だったWedsSport ADVAN LC500だが、その後低迷の謎
 9番手スタートから絶妙のピットタイミングでドライタイヤからウエットタイヤにチェンジし、3番手まで順位を上げたWedsSport ADVAN LC500。しかし、その後、レースが再開されると序々に順位を下げて8位フィニッシュ。後半、レインタイヤを装着して走行した坪井翔が振り返る。


「ピットのタイミングは完璧でした。ピットアウト後はセクター3は雨量が多かったのですけど、セクター1、セクター2はそんなに雨は多くはなかった。装着していたヨコハマのレインタイヤはセクター3のような雨量でピンポイントでいいんですけど、雨量が少ないときはヒートアップしてしまって、全然、グリップしませんでした。全域でどしゃ振りだったら良かったんですけど、最後はセクター3の路面も乾いてきたので、タイヤの表面はボロボロの状態になって勝負をするという次元ではなくなってしまいました。本当はタイヤを交換したかったんですけど、ポイントが獲れそうだったので、なんとか粘って走行して8位でポイントが獲れて、タイヤ屋さんにはいいデータが取れたと思いますけど、いつスピンしてもおかしくない、ヤバイ状態でしたね」

絶妙なピットタイミングでレインタイヤで3番手でコースに復帰したWedsSportだったが、その後ペースダウンしてしまった


●スリックからスリックに変えて、その後ウエットに。まさかの13位となったMOTUL AUTECH GT-R
 予選10番手スタートのMOTUL AUTECH GT-Rはロニー・クインタレッリがスタートを担当。レースでも10番手のまま周回を重ね、ピットタイミングではドライのスリックタイヤを選択した。後半を担当した松田次生が振り返る。


「ロニーからのコメントでドライパッチがあった状況だったのですが、僕がスリックに変えて出て行った時には雨がさらに降ってきて、装着したタイヤが新品タイヤでスクラブしていないタイヤだったので、全然、タイヤが温まりませんでした。ペースも上げられなくて、それでウエットタイヤに変えましたけど、結局、みんなが同じように入るタイミングになってしまった。後ろの順位だったので、何か戦略を変えなきゃいけなかったかなと思いますね。戦略に関してうまく連携が取れていませんでした。チャンピオンシップはキツイですけど、残り2戦、しっかり勝てるように頑張ります。

ランキング3位で迎えたオートポリスで上位2台にポイントを離されてしまったMOTUL GT-R


●スタートで見せるもロングランでは低迷。ピットの混乱で切り返す羽目に……ARTA NSX-GT
 フロントロウからのスタートで前半スティントを担当したARTA NSX-GTの伊沢拓也がレースを振り返る。「2番手スタートで5位は悔しいですけど、このような荒れた展開できちんとゴールできたことはよかったです。自分のスティントがどうしてもペースが遅くなってしまったのが自分でも悔しくて……。野尻(智紀)選手の時もそうでしたけど、タイヤの状態がいいときはそこそこいいペースで走れるんですけど、その後にドーンとグリップが落ちてしまうことがあって、それでも、どうにかしないといけませんでした。去年もそうでしたけど、ロングランで全体的に遅くなってしまって、速く走れなくなりました」


 それでも、スタートでは2番手から1コーナーでポールポジションのKEIHIN NSX-GTに並びかかり、1コーナーでは先に進入する好ダッシュを見せた。
「タイミングよく行けて完全に抜けたと思ったんですけど、ウチのクルマは加速が良くなかったのか、立ち上がりで『あれっ〜?!』と。普通だったら抜けていたと思うんですけど、塚越(広大)選手も引くところは引いていいバトルになってよかったです。一瞬、今日はスターになれるかと思ったんですが、最悪に近い形になりましたね(苦笑)。予選で後ろにいたレクサス勢は基本的に僕らよりランキングが上なので、そこよりペースも順位も上でいなければいけないところができなかったので、悔しいです」と伊沢


 後半スティントではウエットタイヤを選択、しかし、ピットストップの際にはピットロードの進行方向に対して直角になる、真横に近いストップとなってしまった。


「僕はもう、ウエットしかないと思っていたので、多くのクルマがスリックタイヤを選んだのに驚きました。もしかしたら、前を走っていたクルマと、僕ら後ろのクルマの時とでは雨の状況が違った可能性がありますが……でも、僕の周りにいた23号車(MOTUL AUTECH GT-R)などはスリックでしたね……いずれにしても、僕は『ドライは無理、完全にウエット』とチームに言いました。ただ、僕らはピット作業できちんと止まれなくて、55号車(ARTA NSX GT3)がまっすぐ止まっていてファストレーン側にタイヤも置かれて、僕らは曲がれなくて給油ホースが届かなかった。それで切り返すことになりました。ただ、セーフティカーが入っていたので、同一周回でコースに戻ることができましたのである意味、ラッキーな部分もありましたね。そういう意味でも、今日のようなレースはゴールすることが大事だなと感じました。次のSUGOはチャンスなのでまた頑張りたいです」

スタートでポールのKEIHINのインを突いたARTAだったが、立ち上がりでKEIHINが前へ


●後半スティントの雨のなか、スリックで耐えて終盤に路面が乾き始めたところで連続オーバーテイクで3位獲得。KeePer TOM’S LC500
 雨のなか、スリックで凌いだKeePer TOM’S LC500の平川亮。ファイナルラップでもオーバーテイクを見せて逆転で3位表彰台を獲得、ポイントラインキングでもぶっちぎりでトップを走るWAKO’S 4CR LC500との差を6ポイント縮めた。平川が振り返る。


「まさか3位まで上がっているとは思わなかったので、うれしかったですね。(雨が降っている状況でのスリックタイヤ選択は)。俺はもう500回くらい『無理、無理!』と言っていたので(笑)。『また雨降ってきた、無理だよ』って。そこをチームが励ましてくれてそれはすごくよかったですね。ピットのタイミングとしては仕方がなかったので、ポイント獲るかリタイアでノーポイントかという状況だったので良かったと思います」


 それでも雨のなか、スリックタイヤで走行している最中には1コーナーでスピンを喫してしまう。だが、その態勢の耐え直しが絶妙ですぐにコースに復帰してロスタイムは最小限に留めることができた。


「スピンは練習しているんで(笑)。F1の雨のホッケンハイムを見ても、うまい人はすぐにコースに戻れるし、下手な人は時間がかかる。それは見ていたので、スピンしてあの状態でカウンターを切ったらイン側に向いてしまうので、わざとスピンさせて進行方向に向けました。あそこで逆を向いてしまったらかなりのロスになりますからね」と平川。


「(タラレバで)あと2周あったら優勝していましたけど、悔しい気持ちは全然ないですし、あと1周少なかったら6位だったので、今回はしょうがないです。次のSUGOも自分たちのできることをしっかりやれば、逆転できると思っています」と次の1戦への自信を見せた。

レース終盤、耐えたスリックタイヤで怒濤の追い上げを見せたKeePerの平川。ファイナルラップで表彰台を獲得


AUTOSPORT web

「ドライバー」をもっと詳しく

「ドライバー」のニュース

「ドライバー」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ