これぞ元F1チャンピオンの適応力。穏やかな前半戦と一転した後半の波乱を乗り越え山本&バトンがスーパーGT初優勝

2018年9月16日(日)18時20分 AUTOSPORT web

 初秋の9月開催にカレンダーを移したスポーツランドSUGOでのスーパーGT第6戦は、RAYBRIG NSX-GTの山本尚貴/ジェンソン・バトン組が、予選ポールポジションから一時トップを奪われながらも逆転して今季初優勝。バトンは元F1王者の貫禄を見せ、ルーキーイヤーでの勝利を手にした。


 新たに真夏の耐久戦となった富士での500マイル戦を経て、例年の7月から9月に開催時期を移したSUGOラウンドは、土曜予選日から”魔物の住むサーキット”健在ぶりを見せつけ、GT300、GT500クラスともに赤旗中断を含む波乱の展開となった。


 80kg分のウエイトハンデでリストリクター2ランクダウンのビハインドを抱えながら、ポールポジションを獲得した100号車RAYBRIG NSX-GTを筆頭に、セカンドロウには8号車ARTA NSX-GT、17号車KEIHIN NSX-GTが並び、ホンダ陣営が得意のSUGOで躍進。


 一方、前戦富士では予選トップ5に全4台のマシンを送り込みながらリザルトに繋げられなかったニッサン陣営は、このSUGOで満を持してシーズン2基目のエンジンを投入。しかし23号車MOTUL AUTECH GT-Rは予選赤旗のあおりを受けまさかのQ1敗退。唯一、富士でもレースを支配した12号車カルソニック IMPUL GT-Rがフロントロウ2番グリッドを確保し、流れの悪いニッサン勢のなかでカルソニックGT-Rが”対ホンダ急先鋒”の役割を担ってレースを戦う構図となった。


 前日の曇り予報から一転、終日快晴に恵まれた秋晴れのサーキットには2万8千500人の観客が詰めかけるなか、14時ちょうどに宮城県警察先導のパレードラップがスタート。フォーメーションからクリーンな立ち上がりを見せた隊列はそのままポジション変動なく推移し、ポールシッターの100号車山本尚貴が5周目には1分14秒台を記録し、2番手以下を引き離しに掛かる。


 すると6周目、先頭集団の速い展開が影響したか4番手のKEIHIN NSX-GTがSPアウトで単独コースオフし、トラックに復帰したときには7番手にドロップ。これでマシンバランスが崩れたか、タイヤにマーブルが付いてグリップが落ちたか、7周目突入の1コーナーでは24号車フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-Rにも捉えられ、さらにポジションを落としてしまう。


 一方、早くもGT300の隊列に追いついたGT500先頭集団は、そのトラフィックを活かした3番手伊沢拓也のARTA NSX-GTがホームストレートで24号車ジョアオ-パオロ・デ・オリベイラに並びかけ、9周目の1コーナーで2番手に浮上。NSX-GTが盤石のワン・ツー体制を築いていく。


 スタート時の気温26度、路面温度37度と前日までの雨がらみの予選とはまるで変わったコンディションのなか、グリッド3列目に並んでいたヨコハマタイヤ装着マシン勢、16号車MOTUL MUGEN NSX-GTと19号車WedsSport ADVAN LC500も序盤は上位3台のブリヂストンと同等のタイムを並べていたが、20周を目前に路温上昇と合わせて5番手走行の19号車がグリップに苦しむそぶりを見せ、38号車ZENT CERUMO LC500とフォーラムエンジニアリングGT-Rに相次いで先行を許し7番手に後退。


 同じ頃、3番手走行のカルソニックGT-R、ヤン・マーデンボローがレインボーコーナーでARTA NSX-GTをかわすと、首位RAYBRIG NSX-GTの背後にみるみる迫り、その勢いのまま23周目の1コーナーでインをズバリ。待望の首位浮上に成功する。


スーパーGT第6戦決勝は穏やかな前半から一転して波乱の展開に


 81周のレースは中盤を迎え、1号車KeePer TOM’S LC500が28周目にピットへと向かったのを皮切りに、翌周には17号車、6号車WAKO’S 4CR LC500と立て続けにドライバーチェンジ。続く32周目には4番手走行中だったMOTUL MUGEN NSX-GTもボックスへと向かいモニター画面で36秒9の作業時間で送り出し、気温の下がる時間帯からの逆襲に向け後半ロングスティント勝負の動きを見せる。


 レースディスタンス半分の40周を前に、2番手RAYBRIG NSX-GTが35周目に39秒6のピット滞在時間でジェンソン・バトンにスイッチ。一方、首位を走るカルソニックGT-Rは39周目まで引っ張って佐々木大樹にステアリングを託すと、43秒8の作業時間が響いたかアウトラップでウォームアップのままならないGT-Rの背後から走行4周目のバトンが猛然と襲いかかり、シケイン〜ハイポイントと追走してレインボーでインを差し一気に先頭へと躍り出た。


 これでGT300の処理のみに集中する環境が整ったバトンは、トラフィックの中で1分15秒台の安定したラップを刻んでいく。すると、ラップごとにギャップが広がっていたカルソニックGT-Rは45周目の最終コーナーの進入でワイドとなりマーブルに乗ったか、痛恨のコースオフ。ランオフエリアでたくさんの草を拾った状態でコースに戻り、ホームストレートへの加速で大きくロスし、首位との差が一気に9秒7にまで広がってしまう。


 この時点で路面温度は30周時点の38度から34度まで下がり、50周を越えヨコハマタイヤ同士の5番手争いを繰り広げるMOTUL MUGEN NSX-GTとフォーラムエンジニアリング ADVAN GT-Rがウェービングを見せるシーンもあり、タイヤ温度かピックアップか、いずれにしてもタイヤのグリップ管理に難しさを感じさせる。


 さらに佐々木のカルソニックGT-Rはグラスエリアをカットして草を拾った影響でクーリングに問題を抱えたか、ラップタイムペースが安定せず54周目には100号車バトンとのギャップが16秒にまで拡大。佐々木の背後にはSUGOの前年度ポールシッター、野尻智紀のARTAが迫ってくる。テール・トゥ・ノーズの状態でディフェンスを続けた佐々木だが、57周目に力尽き3番手へと後退。NSX-GTは再びのワン・ツー体制となる。


 しかしここでも”SUGOの魔物”が初参戦で首位快走の元F1ドライバーに試練を与え、最終コーナーでGT300トラフィックをかわそうとしてアウトへとマシンを振ったバトンの100号車はコース外へ膨らんでしまい、RAYBRIG NSX-GTはカルソニックGT-Rのリプレイを見るかのようにランオフエリアを滑走。これで2番手野尻とのギャップは12秒にまで縮まってくる。


 100号車、12号車ともにその後ラップタイムを戻しマシンダメージなく周回を重ねて終盤へと向かっていたレースは、67周目にSPインで発生したGT300バトルの余波を受け、数周はFROでマシン回収処理を模索したものの70周目にセーフティカー導入が決定。これで優勝争いは最後のスプリント勝負に。


トップ2台が接近したファイナルラップで、謎の白いクルマがコースイン


 グリッドで隊列を整えての再発進で、カルソニックGT-Rがスタートできない素振りを見せるなどやはりマシンコンディションに不安を感じさせつつ、残り6周でリスタート。4番手のZENT CERUMO LC500に16号車MUGEN NSX-GTが並びかけ翌周には石浦宏明を攻略しポジションアップ。首位争いは大きな変動なくバトンがトップを堅持していくと、残り3周時点で野尻がパッシングを浴びせながらテール・トゥ・ノーズに。


 KeePer TOM’Sの平川亮が追突を受け、64号車Epson Modulo NSX-GTのベルトラン・バゲットは単独と、周回遅れ勢が相次いでクラッシュを喫するなか、首位2台のマッチレースに注目が集まったところで、S字カーブで一般車のような白いプリウスアルファがライン上を走行し、トップのRAYBRIGバトンが引っかかってブレーキング。トップの2台の差が一気に縮まる。プリウスアルファはドクターカーだったようで、レース後、運営側で大きな問題となっている。


 さまざまなトラブル、アクシデントが交錯するなか、ファイナルラップを無事に切り抜けた元F1王者の意地を見せたバトンがトップチェッカー。2番手のARTAに0秒562差でルーキーイヤーでのスーパーGT初優勝をマークた。2位にARTA NSX-GT、トラブルをしのぎ切ったカルソニックGT-Rが最後の表彰台を死守した。


「SUGOのドライビングに関して、みっちりと勉強になるほどタフな展開だったよ」と、マシンを降りて安堵と喜びの表情を見せたバトン。


「僕も12号車と同じようにコースオフしたけど、クラッシュせずに戻れてラッキーだった。午後は気温が下がってミディアムでは少し厳しかったけど、チームのおかげで最高の結果が残せた」


 いよいよ終盤戦を迎えるスーパーGTの2018年シーズン、次戦はオートポリスでの第7戦。ウエイトハンデ半減の条件となるだけに、ハンドリングコースでホンダ勢がリードを広げるか、レクサス陣営が息を吹き返すか、それともニッサン陣営が底力を見せるのか。こちらも10月に時期を移しての開催となるだけに、最後の最後までドラマチックな展開が待ち受けていそうだ。

ワン・ツーを飾ったRAYBRIG NSX-GTとARTA NSX-GT


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