【現役引退】ソフト史上最高の打者・山田恵里を鉄平が直撃!「打てなかった時はどうするの?」巧打者のスランプ脱出法とは【独占取材/その1】

2022年10月2日(日)19時21分 ココカラネクスト

 2008年の北京五輪、そして昨年の東京五輪ソフトボールで金メダルを獲得した山田恵里。今季限りでの引退を発表した名手は、その偉大なキャリアを通して何を経験し、感じてきたのか。2009年にパ・リーグ首位打者に輝いた元プロ野球選手の鉄平氏を論客に迎え、「ソフト史上最高の打者」に様々な話を聞いた。

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ーーソフト史上最高の打者と言われた山田恵里さんと、2009年のパ・リーグ打者に輝いた鉄平さん。お二人は左打ちの好打者という共通点もあり、今回の対談を企画しました。

鉄平 はじめまして、よろしくお願いします。

山田恵里 よろしくお願いします。

ーーお二人とも、これまで”打てる話”はたくさんしてされて来たと思いますので、今日は”打てなかった話”から聞かせてください。

山田 2016年の世界選手権は全然打てなかったですね。その時はガラッと打撃のフォームを変えました。

鉄平 打てなかった時期は、2016年頃に1度あったくらいですか?どんな感じで変えたんですか?

山田 それまではピッチャーに顔を真っすぐ向けたくて左目でボールを見てたんですけど、右目で見るように変えました。構える位置も下げて、足がつくタイミングも少し遅らせましたね。あとは、重心の位置も変えました。それまでは、「前が3」で「後ろが7」くらいだったのを、「後ろが10」の「前が0」くらいの意識に持って行きました。

鉄平 それは結構ですね。

山田 その時は変えるタイミングだなと思いました。もう元の形に戻すことはできなかったので、だったら変えちゃった方がいいなと。

鉄平 なるほど、それくらい思い切って変えた方が良かったんですね。僕は打てなくなった時に、前のバッティングフォームにこだわりすぎたんですよね。何とかもう一回、良い時の打ち方に戻そうとアプローチをしていたら、自分がどこに行ってるか分からなくなった。そうやって思い切って変えたら良かったんですね。

ーー鉄平さんは、バッティング不振の原因は”お尻の入れ方”が原因だった、と引退後に自己分析していましたね。

鉄平 ヒップファーストじゃないですけど、そういう形で打ちにいくことで出力を出していたんです。それを無意識にやっていたので、なくなってることに気付かなくて、違うところで力を出そうとして色々と不具合が起きた感じでした。

山田 ヒップファーストって右のお尻ですよね。

鉄平 そうですね。右の尻から前に出ていくっていうようなイメージです。ピッチャーの動作でよく使われる言葉ですけど、打撃でもピッチャーほどではないですけど関係があるんです。それが自分の中では特に大事な力の出し方だったんですが、当時は気付けませんでしたね。

山田 ヒップファーストって頭の位置も前にズレるんですか?

鉄平 若干はズレますけど、そこまでではないです。ざっくり言えば、その場にいて股関節だけ動く感じですね。お尻から強くぶつかって勢いを出します。ただ、本当に厄介なことに当時の自分は腕に力が入ったりとか、上半身から入ったりとか。そうなったらバッティングってダメ。それもあって、打てると思った球を空振りしたり、打てていた球が全然前に飛ばなくなったり。打席の中でもパニックだらけで大変でした。特に2011年は、打率1割ぐらい落ちましたから、もう違う人でしたね。

ーー良い時のイメージがあるだけに難しいところですね。不振の時の修正で特に意識するポイントはありますか?

山田 良い時のイメージに戻して成功につながれば「あり」だと思いますが、なかなか元に戻らなかったら、私は違うことをしていました。

鉄平 僕は4、5年もがいてましたね。スイングする度に「なんか違うな」と。力の流れがナチュラルじゃないんです。山田さんのように重心の位置を変えるくらいの大きなことはやっていませんでした。というか、できなかったですね。そこも僕の後悔の一つじゃないですけど、もうちょっと思い切ってやれば良かったなと思います。

ーースランプに陥った時には、具体的にどうやって対処するのでしょう?

山田 2016年に思いっきり変えたんですけど、速いピッチャーに対してその打ち方だと打てなかったので、前の打ち方を合わせた打ち方にしたら、速いボールも打てるようになりました。今もそれを継続してやっています。毎日スイングしてますし、バッティングも毎日ではないけどしているので、自分のどこかがおかしい時はすぐに分かるんです。だから、そこまで大きくスランプに陥らなくなったと思います。修正はすぐにできている感じです。

鉄平 毎日のルーティンがあるから違いに気付いて修正できるというのは、すごく分かりますね。僕もルーティンを大事にしていたし、そういう能力がないと長い間は戦えないですよね。

ーー鉄平さんのルーティンのこだわりは?

鉄平 たくさんありましたよ。少しでもズレたりすると嫌だと思うこともあったし、体の作り方の部分からもほぼ決まってるんで、時間割がズレると気持ち悪い部分もありました。山田さんも、そういうのはあります?

山田 あります。ありすぎて、変な人扱いされます(笑)。きっちりしないと嫌なんですよね。

鉄平 めちゃくちゃ分かります。プロ野球も変なやつばっかりでした(笑)。ただ、そのくらいこだわってやらないと、自分を保てないところはありましたね。

ーールーティンはどんなものがありました?

鉄平 球場の行き方からですね。色々あるんですが、バッティングのルーティンだとゴルフスイングみたいなものから始めて、体をちょっと慣らしていくんですよ。そこからすごいアッパースイングで振った後に、すごい上から振ったり、極端なスイングを必ず最初に入れるようにしていました。それで徐々に練習に入っていって、ティーバッティングではツイストと言われる練習方法を必ず取り入れて、その日の自分をチェックしていました。その後にハンマーでティーバッティング。ハンマーは体を使って振らないと凄く重いので、しっかり体を使ってボールに当てる感覚を思い出させていました。

ーー山田選手は、野球の練習から取り入れたものはありますか?

山田 私は短いバットで床につくくらいの低めのボールを打っていました。だから、今流行っているシークエンスバットが気になってます。あれって、みんな使ってるんですか?

鉄平 みんなではないかもしれないですね。

山田 そうなんですね。でも、肘を抜くのってすごく大事じゃないですか。昔は脇を締めるって教えられてましたけど、今は抜いて打ちますよね。

鉄平 脇を開けないとバットが出てこないですもんね。

【その2】に続く(10月3日に公開)

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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