後方から上位入賞したアルボン、スランプを脱却したガスリー。力走が光るふたりのレッドブル候補【今宮純のF1シンガポール&ロシアGP採点】

2019年10月5日(土)7時45分 AUTOSPORT web

 F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回はF1第15戦シンガポールGP&第16戦ロシアGP編だ。


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☆ ピエール・ガスリー(トロロッソ・ホンダ)
シンガポールGP:8位/ロシアGP:14位

2019年F1第16戦ロシアGP日曜 ピエール・ガスリー(トロロッソ・ホンダ)


 トロロッソに戻って4戦、少しづつにフェルスタッペンを意識した“コピー走法”から脱却しつつある。彼とのコーナー・ボトムスピード差を気にするあまり、いろいろトライしては悩むスランプ状態にはまりこんだ。ロシアGPソチの予選アタックではそれを払拭、セクターベストをそろえ11番手タイム。自信を取り戻し、マシン信頼度を高めたと見るが、レッドブルのモータースポーツ・アドバイザー、ヘルムート・マルコ博士の査定は……?


☆☆ ニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)
シンガポールGP:9位/ロシアGP:10位

2019年F1第16戦ロシアGP ニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)


 パドック関係者の間で一定の評価をされているのに来季が不透明な状況にある。そんな時期の2連戦、接触で後退しても集中力を保ち入賞圏にリカバー。2倍以上もの高額を得ているリカルドとは同ポイント、自分とルノーのために健闘した2連戦。


☆☆ セルジオ・ペレス(レーシングポイント)
シンガポールGP:リタイア/ロシアGP:7位

2019年F1第16戦ロシアGP セルジオ・ペレスとランス・ストロール(レーシングポイント)


 レース巧者だ。フリー走行ですべてのタイヤスペックを試し、アップデートを確認する仕事を優先(完璧な予選準備はできないが)。中団グリッドからレースで強みを発揮、ロシアGPではマクラーレン勢の間の7位に割り込む。トロロッソに対し3点差、ラストスパートにかけるレーシングポイント。


☆☆☆ カルロス・サインツJr.(マクラーレン)
シンガポールGP:12位/ロシアGP:6位

2019年F1第16戦ロシアGP カルロス・サインツJr.(マクラーレン)


 この2戦、タイプが異なるコースで“Bリーグ・PP(予選7番手&6番手)”を獲得。チームのセットアップ方向性は万全、それを活かし一撃ドライビングを決めた。ソチではスタートからメルセデス勢に対抗(初めてと言える)、“Bリーグ1位”でゴール。マクラーレンがコンストラクターズ選手権で100点を超えるのは5年ぶりのこと。


■優勝争いに絡めないマックス・フェルスタッペンは不満


☆☆☆ セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
シンガポールGP:1位/ロシアGP:リタイア

2019年F1第15戦シンガポールGP 表彰台でのマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)とセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)


 フェラーリSF90のパフォーマンス・レベルが飛躍的に上がり、得意の「ダウンフォース活用走法」に戻れたようだ(出口アクセルオンが素早い)。同時にレッドブル時代、マーク・ウェバーと対峙した“戦闘モード”にスイッチ・オン。そしてロシアGP序盤でチームオーダー事件勃発、ふたりのチームメイト関係だけでなくフェラーリ組織の内部問題に発展する可能性もある。マッティア・ビノットがチーム代表者として初めて直面する事案を、4冠王者は突きつけた。


☆☆☆ マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
シンガポールGP:3位/ロシアGP:4位

2019年F1第16戦ロシアGP マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)


 この2連戦の結果に不満ありあり、フェルスタッペンの私的発言は、チーム批判すれすれだ。仮想敵としていたフェラーリに追いつくどころか彼方に行かれてしまい、鬱憤がたまっている様子。そんな欲求不満のせいか、たんたんと走っただけのように映った……。


☆☆☆ アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)
シンガポールGP:6位/ロシアGP:5位

2019年F1第16戦ロシアGP アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)


 ピットレーンスタートは2度目、後方グリッドスタートも2度あったが新人の彼はそこから図太い戦いをしてきた。ガスリーとの違いは“マックス・コンプレックス”があまり感じられないところだ。気負いがなくレッドブルチームに溶け込んでいる。フリー走行中にミスを冒してもレースではしないのが彼のプラス評価点。さてマルコ博士の査定は……?


☆☆☆☆ シャルル・ルクレール(フェラーリ)
シンガポールGP:2位/ロシアGP:3位

2019年F1第16戦ロシアGP予選でシャルル・ルクレールがポールポジションを獲得


 フロントを軸(基点)にターンエントリーする彼のドライビングタッチに、今のSF90はシンクロしている。ある意味これは予選向きで、それがミハエル・シューマッハー以来の『4戦連続PP』となった。半面、基本的にフロント重視に振るとロングランではリアの追従性が劣り、タイヤ性能劣化が進みやすい。


 ロシアGP終盤、ソフトタイヤに換えてからも2位ボッタスを追い込めなかった遠因だろうか。一方ベッテルは予選“9連敗”でも、チームメイトと異なるセットアップ(リヤ重視)に傾注、レースペースを考えているのではないか。『SF90調教法』の違いにふたりの秘めたライバル心を感じる。


■マクラーレンのランド・ノリスは『敢闘賞』


☆☆☆☆ バルテリ・ボッタス(メルセデス)
シンガポールGP:5位/ロシアGP:2位

2019年F1第16戦ロシアGP金曜 バルテリ・ボッタス(メルセデス)


 暗黙の了解が存在していると思えるメルセデスふたりの関係性、現在のフェラーリふたりとは対照的だ。メルセデスのトト・ウォルフ代表は“ルイス対ニコ時代”の苦い経験を踏まえ、チームプレイヤーとしての意識改革を後半戦からボッタスに強いているように見える。


 ロシアGP今季8度目の1-2によってコンストラクターズV6に王手、わきまえる脇役と最大主役の共演合作によって19年のエンディング・シーンはもうすぐ。


☆☆☆☆ ランド・ノリス(マクラーレン)
シンガポールGP:7位/ロシアGP:8位

2019年F1第15戦シンガポールGP ランド・ノリス(マクラーレン)


 シンガポールに誰よりも早入り。現地の高温多湿気候になじみ、ナイトレース(時間差)にも合わせ込んだと言う。全く初めてここに挑む彼の準備行動が初日FP1からタイムに反映される。


サインツに0.214秒差、陽が暮れたFP2も0.216秒差、バンピーでラインワークが難しいコースをたちまちマスター。7位入賞は終盤の集団バトルを切り抜けた『敢闘賞レース』、さらなる評価の☆を贈りたい。


☆☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン(メルセデス)
シンガポールGP:4位/ロシアGP:1位

2019年F1第16戦ロシアGP ルイス・ハミルトンが優勝


 偶然ではなくこの2連戦とも予選トップ5は同じ、ルクレール〜ハミルトン〜ベッテル〜フェルスタッペン〜ボッタス。予選2番手に食い込んだハミルトンはベッテルに0.029秒、0.023秒という微差でフェラーリ勢を分断。


 ストレートでは劣ってもセクター3の直角ターンエリアで対抗、流麗なステアリングワークはまさに疾走するアートのよう(!)。今年、PPウインはモナコとフランスGPのわずか2度にすぎない。またまた逆転9勝目のロシアGP、今シーズン我々は本当にチャレンジングな<19年型ニュー・ハミルトン>を見ている——。


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