森保ジャパンはなぜ強くなったのか?破竹の6連勝「以前」と「以後」の差とは

2023年10月18日(水)18時53分 ココカラネクスト

日本代表は選手たちの個々の成長とチーム指針が噛み合って成長を遂げている(C)Getty Images

 エルサルバドル、ペルー、ドイツ、トルコ、カナダ、チュニジア。6月からの国際親善試合は強豪ドイツなどW杯出場レベルの国を多く含むマッチメークだったが、第二次森保ジャパンは破竹の勢いで6連勝。しかもチュニジア戦以外は、4得点以上を叩き出す好調ぶりを見せつけた。

 ベスト16に終わったカタール・ワールドカップを経て、日本はなぜ強くなったのか。

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 理由は個とチームの成長だ。コンディションや心理、相性といった変化要素を除けば、強くなる理由はこの2つしかない。

 個人を見ればリバプールの遠藤航、アーセナルの冨安健洋をはじめ、欧州の上位クラブに所属する選手が増えた。もはや相手の名前にビビったり、手合わせをして距離感を図るような気持ちでピッチに立つ選手は少ない。

 フィードバックもある。カナダ戦のハーフタイムには森保監督と久保建英がピッチ脇で話し込み、その内容がレアル・ソシエダで実践しているビルドアップ戦術であることが話題になった。欧州トップクラブの中の人である選手を通じて、最先端の戦術を参考にできるのは大きい。

 最近はJリーグの監督に取材を行う際、「ブライトン」というキーワードを聞くことも増えた。昨今のプレミアリーグで躍進する時のクラブ、ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンのことだ。自陣の真ん中で恐れることなくパスをつなぎ、両サイドにウイングを押し出した状態から鋭く前進する。パスを回すことではなく、前進することを目的としたビルドアップを行う攻撃的スタイルで、「ブライトン」の名は世界に轟いており、日本でもJリーグの監督が「ブライトンみたいな……」と表現することが増えた。

 最先端の潮流は、かつては間接的な情報でしかなかったが、今はそのブライトンに三笘薫が所属している。現場の情報、生の情報が、実際にプレーする選手を通して入ってくるようになった。

 元々、森保監督はスポンジの人だ。広島でコーチとしてミハイロ・ペトロヴィッチ監督の戦術に学び、監督昇格後はそれをマイナーチェンジしてJ1優勝を果たしたように、他人のアイディアを吸収する意欲が高い。スタッフミーティングでも、先に全員の考えを聞いてから監督として話をするそうだが、選手にも同じくスポンジ姿勢で相対し、日本代表への刺激として吸収している。選手のキャリアアップがもたらす波及効果は、重要なポイントだ。

久保はトップ下で躍動し、攻撃を牽引した(C)Getty Images

 そして、刺激や情報が増えるときこそ、チームの軸が大事になる。

 第二次森保ジャパンの初陣となる3月の親善試合は、それがブレていた。カタール・ワールドカップの経験から、「主導権を握る」「ボールを持つ」といった言葉が口々に出るようになり、サイドバックを内へ入れるなど、新しい攻撃を意識したサッカーをやっていた。 ところが、逆に守備の意識や連係が弱まり、相手のボールを奪えない時間がダラダラと続き、せっかくトライした攻撃も回数が減ってしまった。結果もウルグアイに1−1、コロンビアに1−2と、1分け1敗。

 6月を迎えた森保監督の口からは再び、「良い守備から良い攻撃」「まずは守備のハードワーク」といったチームの軸を示す言葉が多く出るようになった。新しくトライすることはあるが、軸はブラさない。そこが定まってから、日本は6連勝で波に乗る。ドイツに対しても守備と速攻が効き、4−1で勝った。

 個々の成長と、そこから多くの情報と刺激を得つつも、チームの軸をブラさない。正確に言えば3月に一度はブレたが、二度はブレないマネージメント。これがカタールからの1年で森保ジャパンが大きく成長した要因だろう。

 元々、森保ジャパンは冨安や板倉滉、三笘や久保、上田綺世、前田大然など東京五輪世代が多く名を連ねていた。それが第二次になって菅原由勢らも加わり、層が厚くなっている。彼らは年齢的に2026年ワールドカップでピークを迎える世代なので、本命はカタールではなく、むしろ次のワールドカップだ。成長していないほうがおかしい。

 また、対戦したドイツやトルコ、カナダなどは監督交代の時期にあった。森保監督が継続し、チームの軸が定まっている日本とは違う。

 近年、代表は欧州を中心に、8年以上の長期スパンで考えるチームが増えてきた。フランスはディディエ・デシャン監督が12年目、イングランドもガレス・サウスゲート監督が8年目を迎え、おそらくドイツもハンジ・フリック監督にヨアヒム・レーブと同じく長期政権を任せたかったのだろう。

 代表チームは、年間試合数が10試合しかない。4年やって、ようやくクラブの年間試合数と肩を並べる。つまり、代表の4年とクラブの1シーズンは同等だ(大雑把な計算であることは認めるが)。

 そう考えると、4年ごとに監督を変える代表は、1シーズンごとに監督を変えるクラブと同じであり、強くならないのは自明の理。クラブでも実力のある新監督を招聘すれば、2シーズン以上を任せるのは大前提であり、その意味では代表の主流が8年以上のスパンになるのも全く不思議ではない。

 一言で言えば、今、サッカー日本代表は個人も監督も、非常に良い状態にあるということだ。

[文:清水英斗]

ココカラネクスト

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