北朝鮮の”ラフプレー”を助長した森保ジャパンの「攻め手のなさ」 ”飛車角落ち”のチームはどうやって点を取るのか

2024年3月24日(日)11時30分 ココカラネクスト

北朝鮮から1点しか取れなかった日本代表。勝利はものにしたものの、試合内容には不満が残った(C)Getty Images

 ワールドカップ・アジア2次予選の日本対北朝鮮。前半2分に田中碧がゴールを挙げ、楽勝ムードが漂いつつも、その後のスコアは微動だにせず。終わってみれば、1−0の辛勝だった。

【動画】田中碧が開始早々に先制弾!堂安律の折り返しに合わせた北朝鮮戦のゴール映像

 何から言及すれば良いのやら。序盤は紳士的に見えた北朝鮮だが、時間が進むにつれ、ラフプレーが目立つようになった。彼らの「ラフ」は荒いと同時に粗い。両足タックルや足裏タックル、足蹴り、勢いを止めないアフターチャージなど、現代サッカーに至るまでに「それは危険だから止めよう」と細部に渡って注意されてきた禁忌のプレーがてんこ盛りだ。所作が洗練されていない。

 まるで40年前にマラドーナが好き放題に削られ、審判にも守ってもらえなかった数多の試合を観るかのような、タイムスリップ感がある。「昔のサッカーってあんなタックルばっかりだったよね」と呟く先輩サッカー記者の言葉から、色々と思い出すものがあった。

 北朝鮮は戦術こそ、CKの守備にゾーン+マンツーマンを用いるなど、最近のトレンドを取り入れている。だが、サッカーはどうあるべきか、フェアプレーとは何か、という視点においては、時代の影響を受けていない。いや、もしかしたら両足も足裏もダメだと知っているのかもしれないが、本当に知っているのかどうか、なぜダメなのか、どのレベルで認識しているのか、何も語らない相手からは何も窺い知れない。常識を共有できない相手との試合は不安しかないと、改めて思い知った。

 ただ、北朝鮮にラフプレーが増えたのは、日本にも間接的な要因がある。前半2分に幸先の良いスタートを切りながら、2点目、3点目によって相手の心を折ることができなかった。最後まで執念を、アドレナリンを出し、球際で粘られたのは、彼らに希望を与えてしまったからだ。

 日本は決定機を外しただけでなく、チャンス自体も足りなかった。サイドにスペースはあったが、あまり高い位置に人数をかけられず、相手のスライドを上回るスピードも出せず、前半は時間と共に攻める機会が減っていった。

 北朝鮮もサイドからカウンターをねらっていたので、菅原由勢らのサイドバックが高い位置を取りにくかった面もある。堂安律は縦へ仕掛けるドリブラーではないため、サイドを崩すにはコンビネーション、味方の関わりが必要。だが、局面に人数を増やせば、他が薄くなる。そのときはカウンターを警戒しなければならない。

 この攻撃への人数のかけ方と、リスク管理のバランスをうまく調整できず、日本はサイド攻撃のスピードが上がらない。その結果、そこそこ攻め、そこそこカウンターを食らう、消化不良の1−0に終わった。

 チームの仕組みが変わってしまったことは大きい。カタールW杯以降の森保ジャパンは、伊東純也と三笘薫の両ウイングを固定し、縦に勝負できる彼らの幅取りをベースに立ち位置を整えてきた。伊東、三笘は1人でライン際を制圧できるので、周りは必要以上に追い越さなくてもいい。即ち、カウンターに備えた立ち位置を取って、全体のバランスを整えやすくなる。

 しかし、今の飛車角落ちの構成ではそうもいかない。サイドに人をかけなければ崩すことができず、かけすぎればバランスを失ってカウンターを食らう。決定力不足を含め、ひと昔前の日本代表を思い起こすようであり、同時にウイングの重要性が改めて身にしみた。

 一方、その点では左サイドに入った前田大然は縦に行けるスピードがあり、今回は右サイドよりもパフォーマンスが良かった。ただ、スピードに任せた同サイドの裏抜けが多く、タメもエグりも無いまま即時の折り返しがゴール前へ入ってくるため、誰もボールに間に合わない。上田綺世のツマ先くらいしか間に合わない。これではゴール前に厚みを作れないので、タイミングの共有、あるいは前田を走らせるスルーパスも角度やルートを工夫する必要がありそうだ。

 2024年。両ウイングの異変により、昨年までのアグレッシブな森保ジャパンとは印象が変わってしまった。9月から始まるW杯最終予選に向け、チームは再び勢いを取り戻せるか。前回の最終予選も苦労したが、やはり今回も一筋縄では行きそうもない。

[文:清水英斗]

ココカラネクスト

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