なでしこ新監督の理想は?佐々木則夫氏続投も期待されるワケ【現地取材】
2024年10月29日(火)10時30分 FOOTBALL TRIBE
なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)は、10月26日に国立競技場で開催された『MIZUHO BLUE DREAM MATCH 2024』で韓国女子代表と対戦。前半32分にMF長谷川唯(イングランド1部マンチェスター・シティ)のコーナーキックから、DF北川ひかる(スウェーデン1部BKヘッケン)が抜群の呼吸でヘディングシュートを決め日本が先制点を奪う。その後もリズムに乗ったままMF藤野あおば(マンチェスター・シティ)、FW田中美南(アメリカ1部ユタ・ロイヤルズ)がそれぞれ得点を挙げ前半を3-0で折り返した。後半には期待の新星MF谷川萌々子(スウェーデン1部ローゼンゴード)も見事得点を決め4-0で試合終了。日本はパリ五輪以来の公式戦を白星で飾った。
今年8月に池田太前監督が退任し、監督代行に佐々木則夫氏、コーチ陣に元日本代表の内田篤人氏を加えた新編成での初試合。今まさに変化を遂げている最中のなでしこジャパンについて、ファンやサポーターはどう思っているのだろう?
ここでは、なでしこジャパンを含む日本の女子サッカーについて、前述の試合観戦で国立競技場を訪れていた人々に訊いたインタビュー内容を紹介する。
現地観戦の様々な理由
この日、試合会場となった国立競技場には総勢1万2千420人の観客が詰めかけた。年齢層も幅広く、家族連れや学生グループのほか、1人で来場している観客も多く見受けられた。残念ながら満席には至らなかったものの、様々な背景の人たちが訪れていた。
なでしこジャパンの試合を現地観戦するのは今回が初めてというご夫婦は「長谷川選手や最近だと藤野選手とか、海外の有名なクラブで頑張っている女子選手が多いことを知って『へぇ、女子も面白そうだな。徐々に盛り上がってきているな』と思い、そのプレーを実際に見たくて来ました。個人的に期待している選手はパリオリンピックで凄い技を見せてくれた谷川選手です!これからも応援していきます」と話してくれた。
会場の近所に住んでいるという男性は「チケットが売り切れていたりで、なかなか国立競技場でサッカーの試合を見ることが出来ていなくて。でも数年ぶりに念願叶って今回やっとサッカーをここ(国立競技場)で観戦できるっていうから、記念に撮影したくてカメラを持ってきました。いやぁ嬉しいです!もともと男子も女子も両方サッカーは好きで見ていました。女子は2011年に澤(穂希)さん達が優勝する以前から好きで見ています。大昔は試合があると(国立競技場の)3階まで満杯で迫力があったんだけど。でも、ここに来れて観戦できるのは本当に嬉しいです」と以前とは異なるサッカーの盛り上がり度にギャップを感じながらも久し振りに現地観戦できる喜びを語っていた。
また、サッカーファン以外でも「チケットがまだある様子だったから」「近くまで来たついでに」と立ち寄る人の姿や「男子の試合と比較して殺伐さが少なく安心して試合を楽しめるから」いう来場者の声も聞かれた。 なかには「内田篤人コーチを一目見たいから来た」という人も。実際、試合中には各所から”ウッチーコール”もしばしば聞かれ、その人気ぶりが垣間見えた。今後内田コーチの応援グッズが登場する日は近いかもしれない!?
海外移籍は未来への種まき
会場では、女子サッカーを長年応援している女性サポーターにも話を訊くことができた。女子選手の海外移籍や代表監督の交代について、率直な意見を聞かせてくれた。
ー現在、国内リーグ(WEリーグ)から海外へ移籍する選手が多くなってきています。ユース選手の活躍の場が広がるという利点がある一方でWEリーグの盛り上がりが懸念される部分もありますが、これについてどう思いますか?
「海外を活躍の場にすることは、選手にとってもリーグにとっても良いきっかけになると思うんです。例えばこれまで男子にばかり注目が集まっていたこともありますが、藤野あおば選手や長谷川唯選手、清水梨紗選手など(海外の)大きなチームに行くことで、女子選手も注目を集められていると思います。今後のWEリーガー達の足がかりにもなりますし、ユースの子たちにも『頑張ろう』という意識が生まれるんじゃないかと思います」
「リーグの盛り上がりの部分で言うと、WEリーグやなでしこジャパンの試合会場で行うイベント内容は現状お子様向けのものが多いんですが、例えばもう少し大人も楽しめる内容を企画するなどの工夫が必要ではと感じています。女子サッカーは、安心して試合を見られる感覚があるので、そういう意味では楽しく観戦できるのかなと思います」
ー今後の活躍に期待している選手はいますか?
「北川ひかる選手です。WEリーグの新潟時代(アルビレックス新潟レディース)からずっと応援している選手なんです。今年、海外移籍になって、なかなか日本で試合を見れないというのもあるんですが、本人(北川選手)がずっと行きたかった海外ということで、貴重な経験を積む場所でもあると感じていますし、今後は長谷川選手達のようにイングランドのトップクラブで活躍してくれる選手になってほしいと願っています」
理想の新監督とは
ー今夏のパリ五輪後に長年なでしこジャパンの監督を務めていた池田太氏が退任し、現状は佐々木則夫監督代行がチームを率いています。今後、新監督となる方に期待することはありますか?
「選手にはそれぞれ特性があると思うんですが、それを活かしてくれる監督が良いと思っています。やっぱり(指示された場所で)プレーをして、力が発揮できなかったらあまり意味が無いかなと感じますし、個々の選手の特性が活きるポジションで使ってくれる、そんな監督が良いと思いますね。なので、佐々木監督代行は昔からチームを見ていらっしゃいますし良いのではと思っています」
ー池田太前監督の退任については様々な意見があると思いますが、驚きましたか?
「そうですね。池田前監督が指揮を執っていた時も(チームは)良かったと感じていたので、その後に誰が監督を務めるのかなと思っていたら佐々木監督代行と聞いて『あ!そうなのか!』と驚きました(笑)」
ー佐々木監督代行は2011年女子W杯ドイツ大会で、なでしこジャパンを初優勝に導いた監督です。代行ではなく、そのまま新監督ということも期待しますか?
「それはすごく思いますね。やっぱり優勝を経験している監督はとても貴重だと思います。その経験を選手達にちゃんと伝えてくれるという点でも期待しています」
10月26日の『MIZUHO BLUE DREAM MATCH 2024』が2024年最後の公式試合となったなでしこジャパン。新たなチーム体制となる2025年には、どんな変革を起こしてくれるのか。多くのファンやサポーターもまた選手と共に変化しながら、日本の女子サッカーはこれからも留まることなく成長し続けるだろう。