三好康児が語る!ウェイン・ルーニー監督就任後のバーミンガム【現地取材】

2023年11月6日(月)18時0分 FOOTBALL TRIBE

バーミンガム・シティ MF三好康児 写真:Shun Ide

イングランド2部のチャンピオンシップ第15節が日本時間11月5日に行われ、MF三好康児が所属するバーミンガム・シティはホームでイプスウィッチ・タウンと対戦した。


バーミンガムは10月9日にジョン・ユースタス監督を電撃解任し、マンチェスター・ユナイテッドやイングランド代表でも活躍したウェイン・ルーニー監督が11日に就任したものの、3連敗を喫しており順位を14位(勝ち点18)に下げていた。一方のイプスウィッチは、勝ち点34でプレミア自動昇格枠の2位につけている。


同試合バーミンガムは前半に先制すると後半には相手オウンゴールで2-0とし有利に進めるも、その後2失点して2-2のドローに終わった。ルーニー体制初勝利とはならなかったものの連敗を脱出。新監督にとって初めての勝ち点1を獲得した。三好は2試合ぶりの先発出場で好機を演出し85分に交代した。


三好へのインタビューからルーニー監督が指揮を取るバーミンガムの現在の状況について見ていこう。




元バーミンガム・シティ ジョン・ユースタス監督 写真:Getty Images

ルーニー監督就任後のバーミンガム


ユースタス前監督は基本フォーメーションを【4-2-3-1】に固定していたが、ルーニー監督は主なフォーメーションを【4-3-3】に変更。ユースタス政権下ではトップ下として絶大な信頼をつかんでいた三好も、ルー二ー監督のもとでは直近3試合で先発出場は1試合のみと序列が変化していたバーミンガム。


ルーニー監督就任後、3連敗を喫して守備の脆さが露呈し、合計得点数も1得点のみと攻撃に課題が出ていた。前ユースタス監督は守備を固めつつ、ボールを奪ったら三好を中心に速攻を仕掛ける堅守速攻のスタイルだったが、現在は後方からビルドアップをするポゼッションサッカーを目指すようになる。


両者のプレースタイルがあまりに異なることから、観客にも伝わるほど明らかに選手たちが戸惑ってプレーをしているほどで、選手間の連携がチグハグになっている場面が多く見られた。結局、個の力で打開しようと試みるものの、パスが繋がらず相手にボールを奪われ失点を重ねるという負の循環に陥っており、フィジカル面で劣る三好はサブに回っていた。


新体制後3試合の結果は以下の通り。チャンピオンシップ第12節(10月21日)ミドルズブラ戦0-1。第13節ハル・シティ戦(10月25日)0-2。第14節サウサンプトン戦(10月28日)1-3。




バーミンガム・シティ ウェイン・ルーニー監督 写真:Getty Images

なぜ監督交代は行われたか


10月のインターナショナルブレイク前は6位だったが、監督交代後は14位にまで順位を下げてしまったバーミンガム。好調だったタイミングで監督交代理由は、オーナーである米投資会社ナイトヘッド・キャピタルマネジメントの意向であるとされている。


バーミンガムのCEOであるギャリー・クック氏は、ファンに向けた声明の中で前監督解任理由について「数ヶ月にわたってユースタス監督とミーティングを重ねた結果、クラブの方向性に違いがあることが明らかになった」と説明しているが、詳細については触れられていない。


機を同じくしてルーニー監督は10月4日、米MLSのDCユナイテッドの監督を辞任しており、フリーとなっていたのは偶然ではないだろう。この時点でルーニー監督がバーミンガムに就任するという報道が一部の海外メディアで飛び交っていた。


ユースタス前監督はナイトヘッド・キャピタルマネジメントがチームを買収する前から就任していた監督であり、アメリカでも知名度の高いルーニー監督と共に新オーナーの独自色を出していきたいことが目的だったのではと、現地のジャーナリストの間では考えられている。




バーミンガム・シティ MF三好康児 写真:Getty Images

変化が見られた第15節の試合展開


新体制後初の勝ち点獲得となった今第15節のイプスウィッチ戦。バーミンガムは【4-2-3-1】を採用した。前節までと打って変わって、前線が積極的に相手DFラインにプレスをかけるハイプレスサッカーで臨む。高い位置でボールを奪える機会が増え、両サイドからチャンスを作れるようになる。


慣れたトップ下ではなく右サイドハーフでの先発出場となった三好は、得点に繋げることができずも積極的なプレスで相手のミスを誘発し、クロスや決定的なパスを出してチャンスを演出した。


これまでのルーニー体制とは見違えるような自信が見られた選手たちに、筆者をはじめメディア席にいた記者たちも驚いたが、「このハイプレスは後半まで保つのだろうか」という心配が的中してしまう。前半に2得点を奪うも、後半になると疲れが見え始め77分に左サイドを崩されると失点。85分に三好を下げて攻撃的な選手を投入するも終了間際に2失点目を許し、ルーニー監督待望の初白星を惜しくも逃してしまった。


バーミンガム・シティ MF三好康児 写真:Shun Ide

三好が語るルーニー監督のフットボール


監督交代後最長の出場時間となった三好。ルーニー新監督が目指すフットボールについて、また第15節イプスウィッチ戦の変化について、試合後のインタビューでこう答えてくれた。


ールーニー監督就任後、ハイプレスの新しいスタイルになりましたが難しさはありますか?


三好:そうですね、この4試合勝ちがないですし。でも逆に言えば監督が代わってまだ4試合。チームとしてもやることを確認している中で、そのなかでも明確なやり方を掴んできているのかなと思います。


ー前監督下では持ち味を出せていましたが、新監督からの注文などはありましたか?


三好:自分の特徴は変わらないのであまり変わりません。相手のポケットをとって自分が得点に絡むプレーを求められていますし、そこは(ユースタス)前監督と変わっていないです。


ールーニー監督に代わって何が変わりましたか?


三好:(ルーニー監督は)誰もが知っているレジェンドで、彼の経験を踏まえて僕らに伝えてくれるところはあります。(前監督と)やろうとしているサッカーは変わる部分がありますし、監督が変わると一から競争があるのがサッカーの世界なので「自分も(どうなるか)わからないぞ」という気持ちをもってこの1ヶ月やってきました。もちろん自分の特徴が変わるわけではないので、違うサッカーの中でも自分ができることを模索しながら。チームとしても少しずつまとまりが見えてきて、自分の役割も明確になってきているのかなと思います。


ー前監督は人格者と言っていましたが、新監督はどんな人ですか?


三好:ユースタス監督より(ルーニー監督は)そんなにフレンドリーではない(笑)。なんて言えばいいんですかね、僕もあまり監督とバンバン話す感じではないですが、凄い選手だったということもあり少し距離があるのかなと。「オープンだよ」とは言ってくれていて、自分に不満のある人は直接言ってこいという感じで、そこは全然怖いとかもないです。あまりまだ掴めていないというのが正直なところです(笑)。


ー前節サウサンプトン戦などでは、選手が戸惑ってプレーしているように見えましたが、今試合までに何か変えたことはありますか?


三好:戸惑いというのは僕も含めて全員が感じている部分。そこは模索しているところです。最初はGKからビルドアップしていこうと練習の中でやってましたけど、理想と現実というか、前監督の時もそこまでポゼッション率を高めていたチームではなく、急にシフトチェンジできるほど簡単なリーグではないので。やれるサッカーとやりたいサッカーを擦り合わせながらやっているのがここ数試合かな。もっと明確にできれば方向性もまとまると思うので、そういった意味では今日の試合はいい兆しになるのかなと思います。




バーミンガム・シティ ウェイン・ルーニー監督 写真:Getty Images

ルーニー監督「ポジティブな進歩が見られた」


ルーニー監督は試合後のインタビューで自信をのぞかせた。「結果は残念だったがポジティブな進歩が見られた。今日の試合で選手たちはプレスをかけることで前半イプスウィッチを苦しめた。後半疲れて不用意な失点をしてしまったがもっと改善できる」とコメント。


三好についても言及し「(右サイドの)三好と(左サイドの)バクナにはサイドから中に絞ってプレーさせたが連携がよく機能していた」と評価した。


選手として輝かしいキャリアを築いたが、監督としての実績が乏しいのが現実だ。過去に指揮をとったダービー・カウンティ(2021-2022)は降格の憂き目にあい、DCユナイテッド(2022-2023)でもプレーオフを逃すなどしており、好調だった前監督と比較されることもあって現地ファンの間では“しくじり”監督として揶揄されてすらいる。


しかし、今節のようにハイプレスで強度の高いサッカーを90分間続けることができれば、ひょっとしたらバーミンガムは2023/24シーズンで周囲を驚かせることになるのではないかと、メディア席から見ていた筆者は思ってしまった。


第15節終了時点で勝ち点19の15位に順位を落としているバーミンガムだが、目標としている昇格プレーオフ圏6位までの勝ち点差は6のみ。「自分の役割が明確になってきた」と三好が話すように、ルーニー監督の目指すフットボールが選手たちに落とし込められれば、面白いチームになるかもしれない。

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