ダウンフォース、首の痛み、恐怖心。SFルーキーテストに参加した若手ドライバーが感じ取った手応えと課題

2019年12月4日(水)22時27分 AUTOSPORT web

 鈴鹿サーキットで行われている全日本スーパーフォーミュラ選手権の合同テスト・ルーキードライバーテスト。今回のテストにも複数のルーキードライバーや、過去にスーパーフォーミュラに参加した経験を持つドライバーが参加している。


 そんなドライバーたちにテスト初日を終えた感想や、2019年シーズンより導入された新シャシー『SF19』の感想、そして他のカテゴリーとの違いを聞いた。


 まずは、テスト初日を走行6番手で終えたサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)。フェネストラズは今年の全日本F3選手権で8勝を挙げてタイトルを獲得した実力を持つドライバーだ。


 午前の走行を終えた段階で話を聞くと、フェネストラズは「とても良かったよ。すべてがとても速くて、ダウンフォース、パワー、スピードなどすべてが信じられないくらいだった。最初の1周目はとてもハッピーで笑顔になったね。ゆっくりと学んで、ステップ・バイ・ステップで進んでいくことが重要だ。とても楽しんでいるし、2回目の走行が楽しみだよ」と語った。


「(SF19は)本当に信じられないようなクルマだ。こういったハイレベルのカテゴリーで走るのは初めてだけど、非常に速いし、クルマはスムーズでとても良い。まるで巨大なビーストみたいだ。本当にいいクルマだね」

KONDO RACINGからテストに参加したサッシャ・フェネストラズ


 フェネストラズが今日の走行で最も驚いたのは、ダウンフォースだったという。


「パワーはもちろんだけど、ダウンフォースとブレーキングが信じられないほどすごいね。F3よりも全然大きい。何キロの違いがあるのかはわからないけれどね。それに、F3ではブレーキを踏んでいたのに、(SFでは)多くのコーナーでブレーキを踏まない。たくさんのダウンフォースがあるから、コーナーでクイックに走れる」


「まだ学ぶことがたくさんある。最初のテスト、最初のセッションだし、たくさんのラップを走れてポジティブだ。学ぶべきことはたくさんあるし、(学ぶスピードは)とてもゆっくりだけど、来年に向けて良いになるといいね」


 次に午後のみテストに参加し総合11番手だった大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)。テスト参加は4、5日前に決まったばかりだった。

午後のみ走行した大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)


「自分の思っている以上に速いだろうなと思って乗り込んだはずだったのですが、びっくりするくらい予想よりもだいぶ速いなと。オンボード映像を見るのと実際に自分の目線で操作するのとは全然違うなというのが第一印象です。最初の方はだいぶ苦戦しました」


 そう話す大湯は、まだ完全にマシンには慣れることができていないというが、チームの“色”の違いを感じたと語った。


「F3はカーボンブレーキではないし、スピードももちろん違いますし、ダウンフォースはケタ外れに違う。それから、それぞれのチームにセットアップの“色”があると思うのですが、その色の違いというか、ベースとなっているものがだいぶ違うんだろうなというのを感じました」


「反省点はいっぱいあります。限界を探りきれずに終わりました。それでも徐々に慣れてきているので、全然ダメというわけではないです。明日は自分の最大限(のポテンシャル)を出せるようにしたいなと思います」


 そして大湯とマシンをシェアしたのが大津弘樹。大湯も大津も今年は全日本F3を戦ったが、やはりF3との違いは大きようだ。

TCS NAKAJIMA RACINGからテストに参加した大津弘樹


「SF19に初めて乗りました。チームとしては、アレックス(パロウ)が乗ったクルマなので速いというのはわかっていますし、そこでの不安はなかったので、自分の完熟がメインでした。上位に入れるのは嬉しいですが、まだまだやることはたくさんあります」


「めちゃくちゃコーナリングスピードが速いです。特にS字のセクター1が速いですね。でもF3も(シャシーは)ダラーラなので、(SF19には)それほど変なクセも感じなかったし、走り出しから乗りやすいクルマでした」


 スーパーフォーミュラでの初走行を終えて、ソフトタイヤでのグリップ力の高さに驚いたと話した大津。冒頭で話した通り、改善に向けてまだまだ伸ばしていきたいところがあるとのことだ。


「精度を上げないといけないですね。トラクションのかけ方が難しく、パワーがある反面リヤタイヤがホイールスピンしやすいので、うまくトラクションを繋げたい。特にデグナーですね。デグナーコーナーひとつ目、ハイスピードコーナーを全体的にもう少し速度を上げる必要がある思いました」


■「F2より楽しい」と明かした松下と、恐怖心を認めた宮田


 総合16番手に終わった松下信治(ThreeBond Drago CORSE)は、2018年にスーパーフォーミュラに参戦し、先代のシャシー『SF14』をドライブした経験を持っている。2019年シーズンは再び活躍の場を海外に移し、FIA-F2を戦った。


 最終戦アブダビを終えたばかりの松下に話を聞くと、「(午前の走行を終えて)久々なのでまだ乗り切れていない部分が正直ありますが、F2とはクルマが大きく違うのですごく楽しいです」と好印象だ。


「こちら(SF19)の方がグリップあるので、S字はすごく速い。まだレースシミュレーションをしていませんが、アタックだけの段階ではデグラデーションもないですし、ドライブすることに関しては(SF19の方が)楽しいです」

ThreeBond Drago CORSEの012号車をドライブした松下信治


 実は松下は、メーカーテストの段階でSF19をドライブしているという。その感覚を忘れていなかったというが、チームはまだまだ立ち上がったばかり。「新チームだし、0からのスタートなので、ここから上に上げていかないといけない」と述べた。


 なおF2第11戦ソチで大きなクラッシュに遭ってしまった松下だが、もう体に問題はないとのことだ。


 最後は、総合20番手に終わったVANTELIN TEAM TOM’Sの宮田莉朋。宮田も今年はF3を戦い、フェネストラズとタイトル争いを繰り広げた。そんな宮田も初体験のSF19について好印象を抱いていたが、体への負担が大きかったと話した。


「SF自体初めてで、想像以上にハイパワーでダウンフォースがあって、結構Gも強くて体への負担も多かったです。首がきつかったですね。話に聞いていた通りで、午前中からきつかったのですが、すごく刺激的な日でした」


「走行1本目は(マシンの)習熟をメインにやって、ある程度のセットアップの変化も勉強しました。2本目は習熟した部分をしっかり意識して、足りないところを2時間の中で詰めていきました。途中まではニック(キャシディ)選手とのタイム差も小さかったですね。もうちょっと戸惑いもあるのかなと思っていたけれど、意外といけました」

宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)


 宮田は今年F3と並行してスーパーGT GT300クラスに参戦し、さらにはWTCRにもスポット参戦を果たした。F3とWTCRはスーパーフォーミュラと同じくヨコハマタイヤを使用しているので、その経験が活きたと明かした。


 午後の走行ではセッション終盤に出された4度目の赤旗により、新品タイヤを履いてのアタックができずに終わってしまった宮田。「1日を通してアタックさせてもらえなかったです(笑)」というが、それでも「新品タイヤを入れたら少しでもチームメイトとのギャップをうまく縮めていけるのかなと思いました」と手応えはつかんだ様子。


「限界域が高いので、アクセル全開率が足りないところがある。少し恐怖心もあるし、まだ攻められるレベルにはいけていないので、そこを克服すればもっとハイレベルなところにもいけるという感じです」


 ダウンフォース、グリップ、体への負担など、今日の初走行を終えて感じ取ったものはドライバーによって様々だ。今回のテストで残された走行チャンスは明日のみだが、この2回のセッションでそこまで改善することができるのだろうか。


 2019年シーズンのスーパーフォーミュラでもアレックス・パロウをはじめとする若手ドライバーの活躍が目立った。少し気が早いようではあるが、パロウに続くような若手ドライバーの誕生が楽しみなところだ。


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