波乱なし、唯一の“新入生”、PK戦は下馬評通り?…ワールドカップのベスト16を総括

2022年12月7日(水)17時37分 サッカーキング

FIFAワールドカップカタール2022のベスト16を振り返る [写真]=Getty Images

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 日本は「新しい景色」に届かなかったが、ワールドカップのベスト16では新たな記録がいくつも生まれた。それではベスト16の8試合を振り返っていこう。

[写真]=Getty Images

■波乱なき16強



 ベスト16は大きな波乱が起こらない“凪状態”だったと振り返ることができる。グループステージを首位通過した8チームの成績は6勝2分け0敗。無論、これはPK戦を引き分けとしてカウントした場合だ。最終的な結果を見れば7勝1敗。唯一、黒星を喫したのが我ら日本代表。“死の組”を首位通過しながら、F組2位のクロアチアの前にPK戦の末に屈した。

 とはいえ、FIFAランクで見れば日本(24位)よりもクロアチア(12位)の方が格上。ベスト16の8試合のうち、7試合でFIFAランク上位チームが勝利した。唯一の例外がスペイン(7位)を下したモロッコ(22位)だが、その試合もPK戦決着だったため波乱とは呼べないだろう。

 データ会社『グレースノート』のベスト16の勝敗予想を確認すると、予想通りの結果にならなかった唯一の試合がスペイン対モロッコ。60%の確率でスペインが勝ち上がると見られていたが、PK戦でモロッコに軍配が上がった。こうして振り返ると、日本(勝率42%)対クロアチア(58%)、モロッコ(40%)対スペイン(60%)の2試合は接戦が予想されていたため、PK戦までもつれたのは順当なのだろう。

 そう考えると、ベスト16での最大の“サプライズ”は、最も僅差の勝負が予想されたポルトガル(勝率57%)対スイス(43%)が6−1の大差で終わったことかもしれない!

■新しい景色を見たのはモロッコ



 常連が名を連ねるベスト8の中で、唯一の“新入生”がモロッコだ。彼らは1986年大会以来、36年ぶりにベスト16に進出すると、スペインを退けて初めて準々決勝に駒を進めた。彼らの躍進は決して偶然ではない。モロッコは4年前の日本代表と同じように、予選を突破したあとに代表チームを率いていたヴァヒド・ハリルホジッチ監督を解任する英断を下した。そして国内クラブでアフリカチャンピオンズリーグを制していたワリド・レグラギ監督を招へい。それにより、ハリルホジッチとの確執で代表チームから遠ざかっていたFWハキム・ツィエク(チェルシー)やDFノゼア・マズラウィ(バイエルン)が代表に復帰したのだ。

 兄貴肌のレグラギ監督の元で結束力を高めたチームは、グループステージで世界ランク2位のベルギーを下して2勝1分0敗。アフリカ勢として初めてグループステージで勝ち点7を稼ぎ、見事に1位通過を果たした。そしてPK戦でスペインを退けて、日本が見ることのできなかったベスト8の景色を見ることになったのだ。

 これでモロッコはアフリカ史上4チーム目のベスト8入り。これまでの3チーム(1990年カメルーン、2002年セネガル、2010年ガーナ)は準々決勝で敗れているため、アフリカ勢初のベスト4という「さらに新しい景色」を目指して10日に行われる準々決勝のポルトガル戦に臨む。

■PK戦は下馬評通り!?



 ベスト16の8試合のうち2試合がPK戦までもつれたわけだが、PK戦は“順当”な結果に終わったと言える。1−1でPK戦に突入した日本対クロアチアは、2018年大会に2度のPK戦を制していたクロアチアが勝負強さを見せつけた。

 守護神のGKドミニク・リヴァコヴィッチが神セーブを連発。2006年大会のリカルド(ポルトガル)と2018年大会のダニエル・スバシッチ(クロアチア)に並び、PK戦でワールドカップ史上最多となる3本のシュートストップを見せた。これでクロアチアはワールドカップのPK戦で3戦全勝。PK戦を複数回経験しているチームで勝率100%を誇っているのはクロアチアとドイツ(4戦全勝)だけ。新たな“PK大国”の誕生と言えるだろう…。

 一方で、敗れた日本は2010年大会の16強のパラグアイ戦に続いて2度目のPK戦での敗退。ワールドカップで複数回のPK戦を経験しながら1度も勝てていないのはメキシコ(2戦2敗)、ルーマニア(2戦2敗)、日本の3チームだけだ。裏を返せば、PK戦を3回以上経験している国は必ず一度は勝利しているのである。ということは、4年後の大会でPK戦に突入することがあれば、次は必ず勝てるはずだ!?

 モロッコ対スペインのPK戦も予想通りの決着と言えるだろう。モロッコに関してはワールドカップで初めてのPK戦だが、スペインは“またしても”PK戦で涙を呑むことになったと言える。アルゼンチンと並び歴代最多5度目のPK戦となったスペインは、これで歴代最多となる4度目の敗戦。



 試合前にルイス・エンリケ監督は「PK戦は宝くじではない」と豪語して、「1000本以上」のPKの練習を選手たちに課してきたが、結局は1本も決めることができずにPK戦で0−3の敗北を喫した。ワールドカップの歴史において、PK戦で「0点」に終わったチームは2006年大会のスイス(ウクライナ戦でPK戦0−3)に次いで史上2チーム目となった。

 ルイス・エンリケ監督は「最善と思えるPKキッカーを選んだ。もし何か変えることができるなら、(モロッコのGK)ボノを代えさせて貰いたい」と、選手たちを擁護しながら敵の守護神を称えた…。

■メッシとロナウド



 永遠の好敵手、アルゼンチン代表FWリオネル・メッシとポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウドのベスト16は対照的だった。3日のオーストラリア戦(2−1勝)で、メッシはクラブキャリアを含めて通算1000試合目の出場を果たすと、見事にゴールを奪ってチームをベスト8に導いた。ワールドカップの決勝トーナメントに限ると9試合目にして初ゴール! さらにメッシはワールドカップ通算23試合目の出場を果たし、出場数で歴代3位のパオロ・マルディーニに並んだ。ローター・マテウス(元ドイツ代表)が持つ歴代最多記録の25試合まであと2試合に迫っている。

 一方のC・ロナウドは、チームが6−1で快勝したスイス戦でスタメン落ち。37歳のスーパースターがワールドカップとEUROの本大会で先発から外れるのはEURO 2008以来、32試合ぶりのことだった。そして、彼の代わりにスタメン出場したゴンサロ・ラモス(21歳)がハットトリックを達成するという皮肉な展開に。C・ロナウドも73分から途中出場したがゴールを奪うことができず。ワールドカップ通算21試合で通算8ゴールを決めているC・ロナウドだが、決勝トーナメントに限ると7試合目にして未だにノーゴールとなっている…。

■その他の記録…



 オランダは“無敗”の名将が記録を伸ばしている。2014年大会でもオランダを3位に導いているルイ・ファン・ハール監督は、PK戦での敗戦を引き分けとしてカウントすると、ワールドカップでは通算11試合を指揮して未だに負けなし(8勝3分け)。ワールドカップで一度も負けたことがない監督の最多ゲーム記録を更新中だ。

 セネガルを3−0で下したイングランドでは、ようやくエースのFWハリー・ケインが目を覚ました。前回大会の得点王は、セネガル戦でチームの2点目を決めて今大会初ゴール。ワールドカップで実に10時間28分ぶりのゴールとなった!

 そのイングランドとベスト8で対戦するフランスでは、FWオリヴィエ・ジルーが偉大な記録を打ち立てた。ポーランド戦で先制ゴールをマークして代表通算52ゴール目(117試合)。これでティエリ・アンリ(123試合51ゴール)を抜いて、フランス代表の歴代最多ゴール記録を更新した。

 ブラジルのFWネイマールは、韓国戦でPKを沈めてブラジル代表通算76ゴール目(123試合)。偉大なペレが持つブラジル代表の歴代最多ゴール(77)まであと1ゴールに迫っている。

 果たして“本命揃い”のベスト8では、どんなドラマが生まれるのか。9日と10日に行われる準々決勝の熱戦が今から楽しみだ。

(記事/Footmedia)

サッカーキング

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