【竹内さくらのスペイン記】MotoGPバレンシアGPのごはん事情! ピット、サービスロード、ホスピタリティに潜入

2023年12月11日(月)21時26分 AUTOSPORT web

 11月24〜26日、MotoGP最終戦バレンシアGPがリカルド・トルモ・サーキットで開催されました。FIM MiniGP WORLD FINALとMotoGPのレースを観戦したレースアナウンサーの竹内さくらさんが、サーキットを隅々までお届けするブログの最終回です。


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スペイン・バレンシアのMotoGP観戦にサーキット・リカルド・トルモに来ています!
レースアナウンサー竹内さくらの観戦レポート第2弾!


日本人の小学生が戦った! FIM MiniGPのレポート→ ・第1弾はこちら ・第2弾はこちら


バレンシアGP観戦レポート第1弾はこちら


カラッと毎日青空が広がるスペインはバレンシア。異国の地のMotoGP、どれも新鮮で伝えたいことがたくさんです。


■スペインのMotoGPファンはどんな人?
せっかく現地に足を運んだので、ふんわりした印象になりますが、どんな人がレースを見に来ているのかをご紹介します。


20代もいて、60代もいて幅広い中で、30〜40代が多いように見えました。特にバイクで来ていたのがこの年代。

とにかく驚くほどふたり乗りが多いスペイン。結構ジャケットもしっかり着ていました


日本よりも多く見たのは、夫婦ふたりや子供と一緒の家族観戦。土手の地べたに老夫婦ふたりがビール片手にまったりしているのを見て、きっと毎年の恒例なのかな、と勝手に想像。いいなあ、素敵。


お酒を飲んで陽気になっている人達もたくさん見ました。「レースを観ながら飲む」ことがきっと楽しい行事のひとつなんだろうな。

コースからは少し離れた場所にあったバルのような店


■バレンシアGPのチケットはおいくら?
気になるチケットのお値段。1番高いのはメインストレートのスタンド席が190ユーロ。今が円安過ぎて分かりにくいのですが、仮に1ユーロが130円の場合、24,700円。ただの席だけなら高くない?!って思ったけど、自分の席の下からライダーが出てくるし、ビジョンもあるし、HEROWALKにも参加出来る。パドックには入れないけど、上からライダーの様子を眺める事が出来る。そう考えたらお買い得なのかも。

2023MotoGP第20戦バレンシアGPのチケット代


そして1番安いのが最終コーナー手前のスタンド席が48ユーロで6,240円。そして5歳までは無料、6〜16歳は半額と嬉しい割引。どの席が高くて安いか、コース図と見比べてみると楽しいです。

リカルド・トルモは色で席のエリアを表しています


比べて日本GPの最安、自由観戦席は2023年は11,500円。16歳〜23歳のヤング割0円招待や16歳までの低額料金など、特に若者に対してかなり力を入れてくれているのが分かります。比較してみると面白いですね。


■現地の個性的なMotoGPファン
その可愛さに思わず目を引いたキッズライダーふたり! お揃いのレーシングスーツは普段から着用しているもの。許可を得て写真を撮っていたら、ホルへ・ロレンソ(のそっくりさん)が乱入してきました。結構似ている。

立ち姿もキマってます


歌って踊りながら歩いてきた真っ赤な魔法使い達。後から気付いたのですが、Tシャツは4人並んで何かの言葉を表していたかもしれません。

とっても楽しそう! 何て書いてあったんだろう……


■サービスロードに潜入!
今回特別にサービスロードの中に入らせて頂きました。サービスロードはコースに沿って作られている管理車両用の道路で、緊急車両やメディアの撮影にも使用されています。転倒したライダーをバイクのふたり乗りでピットへ走らせたりしている「あの道」です。

スクーターでいざサービスロードへ


早速オススメのコーナーを案内してもらいました。13コーナーの登り勾配。イン側にいると青空を背負ってライダーがフルバンクで駆け上がってきます!

13コーナー。右がサービスロード
登った後は最終コーナーへの下り勾配へ。200m看板が見えます


私が見に行ったのは丁度Moto2クラスのFP。日本の野左根航汰選手、羽田太河選手、小椋藍選手の走りを数メートル先で見ることができました。


その近さと迫力に、そして間近で感じる世界のライダーの速さに、大きく心を動かされます。それぞれの懸命なパフォーマンスを体の動きや、ライン取りで感じることが出来るのです。パドックでは笑顔を見せてくれたライダー達も、日本人選手も、世界中のコースで、こんな風に戦ってるんだ! こんなに風に競ってるのか! なんてかっこいいんだろう。こんなに研ぎ澄まされた走りなのか!


嬉しい気持ちと、ライダーが背負う圧迫感をイメージして胸がギュッとしました。この感動は忘れられません。

Moto2:小椋藍(IDEMITSU Honda Team Asia)、羽田太河(Pertamina Mandalika SAG Team)/2023MotoGP第20戦バレンシアGP
Moto2:野左根航汰(Correos Prepago Yamaha VR46 MasterCamp)/2023MotoGP第20戦バレンシアGP


そして最終コーナーへ。
日頃映像で見るそのコーナーとは全く別物に見えて驚きました。テレビやビジョンで見る映像は分かりやすく、クリアです。でも簡単そうに見えてしまうんだなあと、最終コーナーの走りを目で見て感じます。絶妙な下り勾配と路面のバンク、立ち上がりコース幅は決して広くはない中でライダーの丁寧なコントロール。現地に来なければ分からなかった難しさを、この目で知ることが出来ました。

最終コーナーをサービスロードから


やっぱり近さが生む感動ってすごい大きい。それはエンジンの響きなど体で感じるところも含めて。


MotoGPは大きなレースなので、当然安全管理や厳正なルールがありますが、少しでも近くで見れる機会や時間が日本GPは増えたらいいなと思いました。だってこの感動はもっとたくさんの方に知ってもらうべきだから。

サーキット内に9箇所以上設置されたビジョン
コースのイン側にオレンジの木がたくさん!さすがバレンシア!


■中上貴晶選手のピットへ!
そして今度はMotoGPのFP中に中上貴晶選手(LCRホンダ・イデミツ)のピットにお邪魔しました!


ピットロードから見ると左側が中上選手、右側がアレックス・リンス選手のピットで、衝立を挟んで中央に見学できるエリアが用意されていました。そこにいる人達は1mmたりとも選手の邪魔にならないよう、無言で(息も小さくして)動向を見守ります。

強い眼光の中上貴晶選手が見えました


さすが最高峰クラス、緊張感が桁違いです……! ライダーからもチームからも重厚な使命感を感じます。
中上選手はヘルメットを被ったまま要望を伝え、方向性が決まったらすぐ様反映していくメカニックチーム。マシンがピットロードに準備され、エンジンがかかると鼓膜と体がバリバリと痺れ、爆音のエキゾーストノートが響き渡り、あっという間にコースへと戻って行きました。

チームと共に今より上を目指し続ける、力強い背中です


中上選手のファンサービスが神対応なことは日本でも有名ですが、いつもの爽やかな笑顔はありません。闘志と緊張感をまとう重い重いオーラ。もちろん日本を代表している自負を背負って戦い続けています。どれだけの重圧なのか、想像も出来ません。


いや〜……大迫力。それ以外の言葉が見つからない位、圧倒されました。中上選手、貴重な経験を有難うございました!

来年はどんな走りをしてくれるか、今から楽しみです!


■初めてのホスピタリティへ!
Moto2クラスに参戦しているPERTAMINA MANDALIKA SAG TEAMに招待して頂き、初めてのホスピタリティへ。日本人ライダー羽田太河選手の所属チームです。

SAG TEAMのホスピタリティはおしゃれなレストランのように見えます
リラックスできそうなグリーンが心地よい屋上スペース


ホスピタリティとはチームがゲストをもてなす場所であり、打ち合わせをしたり、ライダーや関係者が食事をしたりする特別な場所。


まるで街に並ぶお店のように見える、高々と建つ巨大なホスピタリティの数々が、パドックで私を驚かせました。

左右に高々と建ち並ぶホスピタリティエリア。これが折り畳めるなんて想像できません
LCRホンダ・イデミツのホスピタリティは……もう会社みたい!
マシンの展示もしているDUCATIホスピタリティはかっこいいディーラーのような感じ
テラス付きのapriliaホスピタリティ。何となくトランスフォームがイメージしやすい形


私が好きな外観だったのはHusqvarnaのホスピタリティ。開けた間口がカフェのよう。

照明やグリーンもスタイリッシュ


SAGチームのホスピタリティの内観はこちら。モニターがいくつも設置され、光が差し込んで明るく開放感があります。コーヒーや様々なドリンク、アルコール、デザートも常時用意されていました。

選手やチーム関係者もここでは少しリラックスしながらゲストと話をしていました


■スペインのMotoGPフード
お待ちかね!(待ってたよね?)サーキット・リカルド・トルモのMotoGPでは一体どんな食べ物を楽しめるのか?!


まず簡単にまとめると…


・チェーン店のバゲットサンド
・アイス
・肉バル
・ハンバーガー
・サーキットのレストラン
・番外/ホスピタリティの食事
以上!


日本GPに比べると、飲食店の種類は少なくてちょっと残念……。でもサーキットの外周のあちこちに同じお店が出店(6店舗以上)しているので、色んな席からすぐに買いやすいです。


●チェーン店のバゲットサンド

チェーン店のフードメニュー。ドリンクはビール、ジュースやコーヒー


メインはバゲットサンドで6.5ユーロ。フライドポテトやナッツ、ドーナツもあります。シンプルなベーコンバゲットサンドを頼んでみました。


うん!想像通りの味で美味しい。バゲットが硬めで食べ応えがあります。結構大きくて、私は一度に食べきれませんでした。

調味料の袋のデザインが可愛い


●アイス
このアイスショップもバゲットよりは少ないものの、サーキット外周に点在。

日差しの強い時間帯には列が出来ていました


真っ青なブルーアイスを購入。1スクープが2.5ユーロ、せっかくなので初めて紙幣で買ってみました。(スペインは小さなお店でもカードが使えるので)


結構ボリュームがあります、見た目もおいしい。日陰でちょっとひと休みにぴったりです。

何味かは不明。美味しいから良し


●肉バル
先にも写真を載せましたが1店舗だけある大きなバル。香ばしい匂いにつられて近づくと、何やらかなりお酒が進んでいる様子の方々が散見されます。皆さんご機嫌そう。

よく見るとバイクで来た人もビール飲んでます。法律の違いですね
大量の揚げ物が! よく見るとメニューは壁に貼られてます


私が衝撃を受けたのは肉の炭火焼台。「何じゃこりゃ〜」と思わず駆け寄りました。

大きな肉の塊が炙られています。でかい!
よく見ると腸が! 肉祭りです


肉と揚げ物、ビールで大人の最高な空間です。店内は大衆居酒屋感があって、サーキットとは思えない少しダークで濃い空気に少しドキドキ。ビール1杯があまりに大きくて笑ってしまいました。


●ハンバーガーのケータリング
パドック近くに1店舗だけあったハンバーガー屋さん。そう言えばケータリングカー(牽引)はここしか無かったです。オーソドックスなもので10ユーロ。

オシャレ!アメリカンスタイル


サーキットのレストランだけはお腹いっぱいで行けませんでした。


●番外編! ホスピタリティランチ
SAGチームで頂いたホスピタリティ昼食をご紹介! バイキング形式でズラッと並ぶ鮮やかなフードの中から好きなものを選びます。

豪華なメニューがカウンターに。見た目も華やか!


私がとっても嬉しかったのは野菜がたくさん食べれたこと!スペインに行ってから全然野菜を食べる機会がなかったのでベジパワーが満たされて体が喜びました。(野菜好き)


そしてせっかくのバイキングなので、なるべく食べたことがないものは挑戦しよう!と少しずつ取り分けて、いざ実食。

謎の野菜、黄緑色になったチキン、などなど


どの料理もホテルの食事のように美味しい! そして何よりバジルソースが最高……! 今までバジルをこんなに美味しいと感じた事はありません。香り高くて青みも爽やかで、持って帰りたい位ハマりました。他の料理もソースが美味しかったなあ。(黄緑色のチキンも)

別の日のランチ。バジルソースたっぷり


そしてもうひとつ、ラザニアもとっても美味しかった!(写真右上)生地の層とソース、チーズのハーモニーが濃厚でたまらない美味さ。胃がふたつあったらよかったのに!


ゲストやスポンサー、ライダー達のお腹を満たす素晴らしい食事を私も味わう事ができて幸せ。ご馳走様でした!


■日本人ライダー発見!
Araiヘルメットのサービスに居たところの古里太陽選手!Honda Team AsiaからMoto3参戦中のライダーです。

ここではかなりリラックスした様子で過ごしていました、憩いの場みたいです


朗らかなイメージのある古里選手。今シーズンはレースを捉えてきた感じがしますね! と話したら、「やってることは何も変わって無いんですけどね〜」との返事。びっくり。(本当に?!笑)ますます今後の伸び代に期待が高まります。


そしてMoto2クラスにPERTAMINA MANDALIKA SAG TEAMから参戦していた羽田太河選手。


羽田選手のレーシングスーツはMotoGPではレーシングサポートが無いので、転倒時に補修することが出来ません。そのため、自分で余分に準備をするらしく、その数なんと4着。最終戦ということもありますが、この荷物量!! 黒い小さなトランク以外はほぼ装備品です。

転倒があったので予備も使ったバレンシアGPだったそう


こんな苦労があることを知りませんでした。(羽田選手は余裕そうでしたが)海外で戦うことはレース以外にも、意外と知られていない面倒は多いんだろうな。


偶然羽田選手と同じ便だったわたくし(初海外)、搭乗手続きや乗り換えで大いに助けてもらい、トランスファーでは休ませる間もなくレースやバイクの質問に延々と答えて頂きました。(すみません!)有難うございました!


■GPライダー発見!
次はサーキット外でのライダー発見!
水曜の夜、サーキット近くのショッピングモールのステーキレストランで食事をしていたら、後から入店してきたのはなんとカル・クラッチローとジャック・ミラー!


MiniGP日本代表のふたり、勇気を出して声をかけに行きました。

わざわざテーブルから立ち上がって写真に応じてくれました。神対応!


プライベートで仲の良さが伺えるふたりの組み合わせ。ますますラッキーです。このショッピングモールでレース後の月曜日にもジャック・ミラーが家族3人でいるところを発見。


ライダー発見率が高いので、バレンシアGPに行くことがあればぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか。


■スペインで感じたこと
今回はレースアナウンサーとして学びのため、そしてMiniGPのため、初めて日本を飛び出してスペインに渡りました。

HEROWALKに集まった大群衆


今よりもっと注目され、楽しめるモータースポーツレースにするには? という課題を私は常に強く持っています。


いつもと違う視点から見たMotoGPで、改めてGPライダーの露出時間とプロフェッショナルな対応に驚きました。


木曜からPRや写真撮影、インタビューで大忙し。土曜日も走行の合間や夜遅くまで様々なコンテンツに現れ、日曜の決勝前にもパレードやHEROWALK、何度も何度もインタビューを受けては答え、受けては答え、その合間にはファンに写真やサインを求められ、笑顔で対応。走行にはとびきりの重圧を背負いながら心血を注ぎ、結果を出す。


そう、全然自分の時間がないのです。

MiniGP表彰のプレゼンターを務めるホルへ・マルティン、サインも長いこと対応


モーターホームにいる時以外、ほんの一息をつけるタイミングが無い。常にMotoGPのカメラやメディア、ファン対応。それを笑顔でこなして、結果を出す。プロフェッショナルなライダーとはこうなのか、と速さとは違う強さを知りました。


そしてスペインの地に立って、日曜だけでも9万人以上の来場を見て、どうやって9万人が来るようになったのかを調べたり勉強をするきっかけになりました。もちろん日本とはモータースポーツの文化や感覚の違いはあれど、この状態はどうやって作られたんだろう、と。


それには大きな投資や育成があったのですが……それらを知った上で、私に何が出来るだろう。


ちっぽけな自分に出来ることをたくさん考えよう。打ち出そう、行動しよう! 良いと思ったことはとにかくやろう、だってこの素晴らしいバイクレースが大好きだから。スペインに行って、感じたことを形にしよう。歩み続けよう。

サーキット・リカルド・トルモに着いた日


スペイン記 第2弾、とんでもない長さになってしまいました。お付き合い有難うございました!


※今回の観戦や取材にあたり、PERTAMINA MANDALIKA SAG TEAMとMotoUPには多大なご協力を頂きました。有難うございました!


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MC・レースアナウンサー
竹内さくら
Twitter:https://twitter.com/sakura_kisui
Instagram:https://instagram.com/sakura_joy_design

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