世界で最もミステリアスな食物「マナ」とは? 空から降る“天使のパン”の謎

2023年1月13日(金)7時0分 tocana

 旧約聖書には、イスラエルの民がカナンの地を目指す際、彼らを飢餓から救った食材として「マナ」が登場する。文献によると、マナは「天使のパン」とも呼ばれ、雪のように天から落ちてくるものであると信じられていたようだ。この食材が何であったのか、教義のうえではあまり重要視されていないというが、一部の研究者たちはその正体の追及を止めず、学術的にはタマリスクの樹脂説と地衣類の一種であるという見解が存在する。


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※こちらの記事は2021年10月20日の記事を再掲しています。


 荒涼たる砂漠の大地をさまようイスラエルの民を飢餓から救った「マナ」とはいったいどんな食べ物だったのか。旧約聖書の中に登場するこのミステリアスな食材について、学術的にいくつかの見解が登場しているようだ。


イスラエルの民を救った天の恵みの食物“マナ”とは

『旧約聖書』の「出エジプト記」では、それまで奴隷状態であったイスラエルの民(ユダヤ人)がモーセに率いられてエジプトを脱出した顛末が綴られている。


 エジプトの地で400年以上も奴隷として使役されていたイスラエルの民を憐れんだ神は、彼らを救い、奴隷制から解放し、彼らが先祖に約束したカナンの地へと向かわせることを決心した。そして神はモーセをリーダーに選び、疫病が蔓延するエジプトからイスラエルの民を急いで出国させたのである。


 疫病の感染拡大のために急いで旅立った人々には十分な食料を用意する時間はなく、数日間荒野を旅した後、持参してきた食糧はたちまち底をつき食糧難に直面する。


 神はイスラエルの民の心配を打ち消すために、モーセに「人々が食べて生き残るために、天からパンを降らせる」と伝えた。ある朝、人々は荒野の一帯が白い物質で覆われているのを見て驚く。これこそが後に「マナ(Manna)」と呼ばれる謎の食物である。


 マナは旧約聖書の「出エジプト記」をはじめ、「民数記」、「申命記」、「ヨシュア記」、「ネヘミヤ記」、「詩篇」など多くの本で言及されている。聖書によれば、マナはパンのような物質で、色は白で、蜂蜜のような味がすることが記されている。


 イスラエルの民は毎朝このマナを集め、それを挽いて粉にして焼いてパンやケーキにしたり、茹でたりして食べたという。オリーブオイルを使って焼いたマナのケーキは、ペストリーのような味わいであったり、蜂蜜で作ったウエハースのような味であったという記録も残されている。


 文献によると、マナは「天使のパン」とも呼ばれ、雪のように天から落ちてくるものであると信じられていた。聖書のマナはまた、イスラエルの人々が荒野を旅している40年もの間、神がイスラエルの人々に配慮していた証であると考えられている。


 興味深いのはマナは新約聖書には登場していない。新約聖書ではパンにまつわる言及が多いが、ある人々は新約聖書で言及されているパンは、旧約聖書のマナでもあると指摘している。


 また、マナは朝にその日の1日分の量を確保することが求められていて、欲張って2日分以上を集めると食べきれなかった分はすぐに痛んだり虫に食われたりしたという。ただし金曜日の朝だけは、翌日の安息日(金曜日の日没から土曜日の日没まで)に備えて2日分のマナを確保することが許され、そのマナは次の日も悪くなることはなかった。つまり土曜日の朝はマナは降ってこなかったのである。


“タマリスク説”と“地衣類説”

 聖書には、マナはイスラエルの民が砂漠で飢えないように神から送られた食糧であるという以上の説明はなく、マナが何であったのかは聖書の教義的には重要なことではないとされている。


 しかし、一部の研究者たちはマナの正体の追及を止めなかった。 自然界のもののなかに、マナに似たものがあるのか特定しようと試みたのである。そして、ある専門家はタマリスク(ギョリュウ)の樹脂であると指摘している。


 20世紀、シナイ半島に住むアラブの商人たちは、タマリスクの木の樹脂を「天国のマナ」と呼んで販売していた。シナイ半島南部にはタマリスクの木がたくさんあり、その樹脂はワックスのように見え、太陽光に当たると溶けて採取が容易になった。


 樹脂には芳香があり、蜂蜜のような味わいでありマナの特徴とよく似ていることから、一部の学者たちはタマリスクの樹脂がマナである可能性があると解釈したのである。


 しかし、タマリスクの樹脂は主に砂糖でできており、イスラエルの民が40年間生き残るための食糧としては栄養が偏り過ぎているといえる。また、パンやケーキを樹脂で作るというのはきわめて難しい。


 さらに、タマリスクの木の樹脂は6月と7月にしか採取できないといわれており、多めに採って一晩保存したとしても腐ることはない。こうしたことから、“タマリスク説”は却下されたのだ。


 ほかの何人かの研究者は、イスラエルの人々に提供されたマナは一種の地衣類(lichen)であったと信じているようだ。


 地衣類は菌類のうちで藻類を共生させることで自活できるようになったものであるが、聖書には地衣類の落下についてのいくつかの記述が確かにあるのだ。これにより、研究者たちはマナが地衣類であると胸を躍らせたのだが、地衣類の特徴もまた旧約聖書のマナの特徴と一致しているとはいえない。


 これまでのところ自然界でマナに該当するものはなく、タイムマシンに乗って旧約聖書の時代に戻り、唯一マナを口にしたことのあるイスラエルの民に聞くしかないのだろうか。


 もしこの時代の人類にエイリアンの関与があったとすれば、彼らエイリアンによって提供された“完全栄養食品”であったのかもしれない。イスラエルの民を救った謎の食べ物、マナについて今後何か新たな動きないか引き続きチェックしていきたい。




参考:「Ancient Origins」、ほか

tocana

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