5500万年前に人類以前の文明が存在した可能性をNASA科学者が指摘! 地球史のミステリー「突発的温暖化事件」とは?

2024年1月13日(土)20時0分 tocana


 地球誕生から46億年。この長い年月の中で文明を築き上げたのは人類しかいない。人類の直接の祖先である新人類が誕生したのがわずか20万年前。地球の歴史から見れば、人類の歴史はほんのわずかでしかない。ここで1つの疑問が浮かんでくる。本当に人類以前に文明は存在しなかったと言い切ることはできるのだろうか?


 過去にNASAゴダード宇宙研究所の気象学者ゲイヴィン・シュミット博士と、米・ロチェスター大学の天文学者アダム・フランク教授が、科学誌「International Journal of Astrobiology」に、人類以前の文明の存在を示唆する極めて斬新な論文を公開し、大きな話題となったことがある。


 米誌「The Atlantic」オンライン版によると、フランク教授らは、まず、人新世(人類が地球環境に大きな影響を持つようになった近年の地質学的時代区分)が、未来に残す痕跡は何かと考えた。たとえば、建築物や機械製品などが思いつくが、数百万年後に残っている確証はない。フランク教授によると、最有力候補として挙がったのは、化石燃料を燃やした際に生成される放射性炭素だという。


 化石燃料を燃やすと炭素が大気中に放出され、これが同位体に分解されていく。より多くの化石燃料が燃やされると、大気中において同位体の占める割合も大きくなる、「シューズ効果」と呼ばれる現象が起こる。また気温上昇も放射性炭素の増加に伴うため、長期に渡って観測することが比較的容易であり、未来の科学者は人新生における大気の大きな変化に必ずや気付くだろうという。


 そして、この方法は人類以前の文明を探るためにも使うことができる。人類以前に顕著な気温上昇や放射性炭素量の増加が見られれば、少なくとも化石燃料を使用した文明がかつて存在した1つの証拠になるというわけだ。


 そして驚くべきことに、5500万年前にそんな時代があったのだ。これは「暁新世・始新世境界で突発的温暖化事件」(PETM)と呼ばれ、まだ原因が特定されていない地球史上のミステリーだ。この期間、地球の気温は急激に上昇し、現在の気温よりも15度も高く、南極でさえ21度の気温があったという。また、炭素と酸素の同位体比率が、人新世、つまり現在と近かったことも判明しているそうだ。


 5500万年前の文明ならば、当時の建築物は完全に風化しており、その痕跡は大気や地質の変異にしか残されていないと考えられる。そして、その文明を築き上げたのは人類でないことは間違いない。


 だが、研究者らによると、PETMと人新世には決定的な違いがあるという。PETMにおいて、同位体の増減は数万年のスパンで起こったが、人新世においてはより短いスパンで急激に二酸化炭素を放出しているという点だ。フランク教授によると、地球上には現在よりも二酸化炭素量が多い時代はあったが、現在ほど急激に二酸化炭素が大気中に放出されている時代はないという。やはりPETMは自然的異常として見られるべきなのだろうか……。


 だが、ここには1つの難問があるとフランク教授は指摘している。もし、人類以前の文明が極めて短期間しか続いていなかったとしたら、その痕跡を見つけることは容易ではない、ということだ。精密で斬新な検知技術がなければ、そのような超古代文明の痕跡を地質や大気から発見することは困難を極めるだろう。


 また、現在の我々はエネルギーを化石燃料に頼っているが、よりエコでクリーンなエネルギーの生産方法が確立されれば、その分、地球へのダメージが少なくなるため、未来に残す痕跡も少なくなるという。最終的にフランク教授は、今回の研究を「それ(人類以前の文明)は見つけようとしなければ、発見できないものなのです」と、まとめている。


 人類以前の文明を発見するには至らなかったが、この手法は地球以外の惑星にも応用できるだろう。たとえば、古代火星文明の痕跡が火星の大気や地質の変異として残っていることも考えられる。人類以前の文明が火星で見つかる可能性はまだ残されているのかもしれない。


参考:「The Atlantic」、「Metro」、ほか


 


※当記事は2018年4月の記事を再掲しています。

tocana

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