冷えが原因で脳出血や脳梗塞、心筋梗塞にも…。呼吸法は腹式で。お風呂は肩までしっかり全身浴!
2025年1月21日(火)12時0分 婦人公論.jp
イラスト:小林マキ
手足の先が冷える末端冷え症。痛みやしびれを感じたり、夜眠れないなど、日常生活に支障をきたすことも。専門家に解消法を聞きました(イラスト/小林マキ 取材・文・構成/岩田正恵《インパクト》 デザイン/米山和子《プッシュ》)
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筋肉量の減少は冷えの進行に拍車
寒い季節になると、手足の先が冷えてつらいという声が増えてきます。
「筋肉の働きや細胞の活動によってつくられた熱は、血流で体中に運ばれます。しかし、まずは心臓や胃腸といった内臓を温めようと体の中心部に優先して運ばれるため、末端には届きにくく、手や足の先が冷えやすくなるのです」と解説するのは、冷え症に詳しい血管外科の林忍先生。
体の熱の一部は、筋肉でつくり出されるため、筋肉量の減少は冷えの進行に拍車をかけます。
「女性は男性に比べて筋肉量が少なく、そもそも生み出せる熱量が少ないのですが、加齢や運動不足によって筋肉量が減ると、ますます熱をつくりにくくなってしまいます」(林先生。以下同)
鉄分不足、血行不良も悪影響を及ぼす
鉄分不足も問題だそう。
「細胞は酸素が供給されることで熱を生み出しています。鉄分不足になると、酸素を運んでいる血液中のヘモグロビンが欠乏するため、細胞に十分に酸素を届けることができなくなるのです」
熱は血液にのって体をめぐるため、血行不良も悪影響を及ぼします。
「座りっぱなしなど、長時間同じ姿勢を取り続けたり、運動不足やストレスが重なったりすると、血行不良に陥ります。また、衣類による締め付けや便秘でお腹まわりの血管が圧迫されることも血流が滞る一因に」
冷え自体は病気ではないものの、「万病のもと」ともいわれ、放置すると血流がさらに悪化し、頭痛や腰痛、肩こり、肌荒れ、むくみなどさまざまな不調を引き起こす恐れがある、と林先生は注意を促します。
「血行不良が慢性化すると、次第に血管の弾力が失われ、動脈硬化症の要因になるのです。動脈硬化症は脳出血や脳梗塞、心筋梗塞の原因となり、命をおびやかしかねません。重大な病気に発展する前に改善に取り組みましょう」
イラスト:小林マキ
冷えを感じる前に温め、呼吸法は腹式で
手足の冷えを解消するには、足りない熱を補う必要があります。手軽にできるのが、cに体を温めること。
「まずは、体表近くに太い血管が通っている首、手首、足首のいわゆる『三首』や腹部をカイロや腹巻きで温めましょう」
寒い時期は体がちぢこまり、呼吸も浅くなりがちなので、腹式呼吸を意識して。
「口からゆっくりと6秒くらいかけて息を吐き、お腹をへこませたら、鼻からゆっくりと3秒くらいかけて息を吸い、お腹を膨らませます。これを5〜10分程度、繰り返しましょう。お腹まわりの筋肉がよく動くことで血行が促進されます」
心臓から遠い足は特に血流が滞りやすいため、下半身もしっかりと温めるようにしましょう。
「エアコンやストーブに加えて、床暖房やこたつ、ホットカーペットなど足元を温めてくれる暖房器具を使うのが有効です」
お風呂は肩までしっかり全身浴
お風呂は毎日、全身浴をすること。
「39℃の湯船に30分以上、またはうっすらと汗をかくくらい、肩までしっかり浸かりましょう。入浴前に軽く体を動かしたり、筋トレをしたりすると、代謝が上がり汗をかきやすくなります。また、入浴後にストレッチをすると、さらなる血行促進が期待できます」
手湯や足湯の場合は、心地よいと感じる温度の湯を洗面器に張り、手首・足首まで浸します。手は5〜 10 分、足は10〜15分が目安です。
食事法やストレッチなど、その他の末端冷え症対策については、次回から紹介します。