92歳の樋口恵子と88歳の下重暁子が「健診や人間ドックはほとんど受けない」と語るワケ。下重「やむなく大腸の内視鏡検査を受けたら…」【2024年下半期ベスト】
2025年1月30日(木)13時0分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
2024年下半期(7月〜12月)に配信したものから、いま読み直したい「ベスト記事」をお届けします。(初公開日:2024年10月27日)
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総務省統計局が令和6年9月に公開した「統計からみた我が国の高齢者」によると、65歳以上の人口は3625万人と過去最多だったそう。高齢化が進むなか、92歳の評論家・樋口恵子さんと88歳の作家・下重暁子さんは「女性は75歳を過ぎると、医療のお世話になることがぐんと増える。75歳が老いの分かれ目」と語っています。そこで今回は、お二人の共著『90前後で、女性はこう変わる』から一部を、お二人の対談形式でお届けします。
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人間ドックは受けない。自分の体の主治医は「自分」
下重 私は、人間ドックは受けない主義。区から届く健診の案内も見ないふりをしてますし、あまり褒められたことではないかもしれないけれど、乳がん検査のマンモグラフィーも受けたことがないんです。樋口さんは、どうしてますか?
樋口 大学で教職についていた50代の頃は、定期健診を受けなさいというすすめもあったので受けたりしていましたが、それ以降はほとんど受けていません。以前、和田秀樹さんと対談した際、80をすぎたら健診や人間ドックは受けなくてもいいとおっしゃってました。いろいろな数値など“知らぬが仏”だからって(笑)。それを聞いて、安心しました。
下重 まぁ、80すぎたら、調べたらきっとなにかしら出てくるでしょうしね。要は、それが老化ということですから。だから、あえてそれを暴き出す必要もないし、本当に具合が悪くなったり違和感を抱いたら、医者に行けばいい。私はそう考えています。
以前、聖路加国際病院の日野原重明先生とご一緒に車で講演会に行くとき、日野原先生も「健診はあまり受けない」と言われました。ただ60歳をすぎてからは、年に1回、誕生日の近くに、日本赤十字社医療センターで簡単な血液検査と検便はしています。誕生日を目安にしていると忘れにくいし、日赤は家の近くにあるので、近場が一番と思って。
樋口 それは鉄則。近場が一番!
大腸の内視鏡検査
下重 昨年、検便でわずかに潜血(せんけつ)が見つかったけど、認めたくなくて(笑)。再度検査してもらったら、やっぱり潜血反応が出たの。それでしかたなく、大腸の内視鏡検査を受けることにしました。
そうしたらポリープが見つかったので、内視鏡で取り除くことになったんです。あれ、腸の内部が映っている画面を見ることができるので、けっこう面白いのよ。
『90前後で、女性はこう変わる』(著:樋口恵子、下重暁子/幻冬舎)
樋口 どんなふうに?
下重 大腸の中がピンク色できれいなのよ。ピカピカ光っている。
樋口 そこで「あら、私ってなんてきれいなの!」と思ったのね。
下重 そうなの。本当にきれいだな、と思いました。ところがポリープのところだけ、汚いの。なるほど、と納得しました。「先生、どこを取るんですか?」とか、いちいち質問するので、先生も看護師さんもちょっと困っていたけど(笑)。
私がしゃべりすぎるから、「あなたみたいな人は珍しいですね。みんな、無言で真剣な表情ですよ」と言われて。私、真剣じゃないように見えたのかしら。
内視鏡検査は前日が大変
樋口 自分の腸の内部を見るのが初めてだったら、質問したくなる気持ちもわからなくもないですが……。
下重 私はたいがいのことは面白がる性質(たち)みたい。それに自分の腸の中を見る機会なんて、滅多にないじゃない。
樋口 ポリープを取り除くとき、痛みはあるんですか?
下重 ちょっと違和感はあるけど、痛くはなかったです。ただ、前日の準備がとにかく大変でした。食事は制限されるし、2リットル近くの水みたいな下剤を飲んで、腸の中のものを全部出す作業に辟易(へきえき)しました。
その飲まなきゃいけない下剤には風味づけがしてあるものの、とにかくまずい。しかも、何度もトイレに駆け込まないといけない。あんな思いはもうしたくないから、内視鏡検査なんて二度と受けるものか! と心に誓いました。
自分の「勘」を信じる
樋口 でも、検査に引っかかったら、病院はまた内視鏡検査を受けさせようとするんじゃない?
下重 実は数カ月前にちょっとだけ下血し、内視鏡検査の勧誘を受けたところです。「主治医と相談します」と返事を引き延ばしていたタイミングで、検便を含む検査をひととおりしました。検便は2日分ですが、なにもひっかからず、胸をなでおろしたところです。
ちなみにポリープを切除したとき、医者は「放っておいたら、がんになりかねなかった。いいタイミングでした」とおっしゃるんですけど、私はあんまり信用していません(笑)。
樋口 ご自分の“勘”のほうを信じているのね。
下重 はい。非科学的と言われそうですが——。そういえば5、6年前だったか、血液検査でなにかよくない数値が出たのか、再検査するようにと言われて。でも、何カ月も行かなかった。気にしていないわけじゃないんですよ。再検査して決定的なことを言われたらイヤだな、という気持ちもあったんでしょうね。
それと、自分でなんとなく自分の体のことはわかるから。なにも症状がないのに、再検査に行きたくなかった。翌年の血液検査ではなんともなかったので、やっぱり自分の勘が当たっていたのかな、と思います。
※本稿は、『90前後で、女性はこう変わる』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
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