ハウステンボス、「仮想通貨」の実験スタート ビットコインやNEMとはどう違うの?
2018年1月31日(水)6時0分 Jタウンネット
長崎県佐世保市内のテーマパーク「ハウステンボス」が始めた、独自の「仮想通貨」導入の実験が、ネット上で注目を集めている。
ビットコインの価格下落、コインチェックのNEM(ネム)流出など仮想通貨の環境が変わる中、一体どうなってしまうのかと見られているからだ。
信用担保のため、50億円相当の金1トンを購入
「テンボスコイン」。ハウステンボスが2017年11月6日に出したニュースリリースによると、仮想通貨にはこんな仮称が付いている。
ハウステンボスの担当者にJタウンネットが18年1月30日までに聞いたところでは、この通貨を使った実証実験が17年12月下旬から3か月間の予定でスタートした。
1テンボスコイン=1円としており、当面は、電子マネーの形で、社員約1300人を対象に行う。社員は、スマートフォンの無料アプリでテンボスコインをチャージし、社員食堂や施設内店舗などでQRコードを読み取って使用する。テンボスコインのシステムは、IT企業アイリッジの「MoneyEasy」を採用した。
テンボスコインの信用を担保するため、17年に約50億円相当になる金1トンを購入した。ハウステンボスでは、このシステムを「金本位制」だとし、もし導入すれば仮想通貨として世界初だとしている。
12月16日には、購入した金の一部8億円相当を公開する「黄金の館」を施設内にオープンさせた。天井や壁に金箔を貼ったほか、6000万円相当の金塊を持つ体験ができるコーナーなどがある。
ハウステンボスの一般来場者に対しても、18年度中にはテンボスコインが使えるようにしたい計画だ。そのために、金をテンボスコインの発行量に見合った6トンにまで上積みすることも検討している。テンボスコインは、グループ企業の旅行会社「エイチ・アイ・エス」などのほか、施設周辺でも使えるように、広く流通させる考えだとしている。
「ビットコインなどと違い、円と連動させる」
ハウステンボスは、将来の金需要に備えて、モンゴルの金鉱山を購入するアイデアも温めている。地権者から採掘権を取得し、鉱山を開発するためだという。
仮想通貨の流出問題が最近騒がれていることから、ツイッター上などでは、ハウステンボスの試みにも様々な意見が出ている。
これに対し、ハウステンボスの担当者は、「テンボスコインは、ビットコインやNEMなどとは全然違います」と取材に説明した。
「大前提として、テンボスコインの価値を仮想通貨の市場とは連動させません。連動させれば、投機マネーとして、価値が乱高下して、お客さまに迷惑をかけてしまいます。価値は我々がコントロールし、円と相互交換が可能にします。電子マネーと違うのは、チャージしても現金に換えられるという点です」
具体的には、三菱東京UFJ銀行が導入を目指している円と連動の仮想通貨「MUFGコイン」と同じようなスタイルを考えているそうだ。つまり、キャッシュレス化で客の利便性を増すための仮想通貨ということになる。
信用を担保するための金は、あくまでも客に安心感を与えるためのもので、金本位制と言っても、テンボスコインとの交換は考えておらず、疑似的な表現だとしている。