世界最古の3D地図をフランスの洞窟で発見!旧石器時代の人々が刻んだ風景

2025年2月4日(火)21時5分 カラパイア


Credit: Dr Médard Thiry


 1万3000年前、旧石器時代の人々は洞窟の床に自らの世界を彫り込み地図を作っていた。それは単なる平面的な地図ではない。川や谷、湖沼など周囲の地形を立体的に再現したものだ。


 フランスの遺跡内で発見されたこの地図は、人類が洞窟の床に刻んだ「世界最古の3D地図」の証拠となるもので、当時の人々が自然をどう理解し、記録していたかを教えてくれる貴重な手がかりとなる。


世界最古となる旧石器時代の立体的な地図を発見


 フランス・イル=ド=フランス地域圏エソンヌ県にある「セゴニョール3洞窟遺跡」内で、巨大岩塊の床に刻まれた、約1万3000年前の後期旧石器時代の立体的な「世界最古の3D地図」が発見された。


 フランスのパリ鉱業学院とオーストラリアのアデレード大学の研究チームは、洞窟の床に刻まれた溝や突起が人為的に作られたものであり、周辺の地形を意図的に表現したものであることをつきとめた。


旧石器時代の地図はどのようなものだったのか?


 「地図」と聞くと、現代の地図のように正確な縮尺や方角を示すものを想像するかもしれないが、旧石器時代の人々が作ったのはそういったものではない。


 この立体的な3D地図は、エコール川の流れや低地の湿地、谷の傾斜など、地形の特徴を的確に表現している。


 エコール川は、セーヌ川の支流の一つで、フランスのイル=ド=フランス地方を流れる小さな川だ。当時、この地域の地形や生態系に重要な役割を果たしていたと考えられており、この川の周辺には、旧石器時代から人々が暮らしていた痕跡が多く見つかっている。


 今回の研究[https://www.adelaide.edu.au/newsroom/news/list/2025/01/13/worlds-oldest-3d-map-discovered]によると、これらの彫刻は当時の人々にとって極めて重要だった「水の流れ」を理解しやすくするためのものだった可能性が高いという。


深いくぼみはエコール川が作り出した大きな平地(平野)を表している。
はっきりとした線は、谷の斜面が始まる位置を示している。
中心部に刻まれた細かい溝は、エコール川の流れやその氾濫(はんらん)した際の水路を再現している。

これにより、当時の人々が地域の地形や自然環境をどれほど正確に把握していたかがわかる。



エコール川渓谷の洞窟底の地図。Credit: Dr Médard Thiry


石器時代の人々が水と自然に込めた深い意味


 この地図は、単に地形を把握するためだけに作られたわけではない。


 セゴニョール3の洞窟には、もうひとつ興味深い発見がある。


 それは、馬の彫刻と女性器を模した彫刻だ。この彫刻の構造には、雨水が流れ込むような設計が施されている。


 このように水と地形が結びつけられた仕組みは、当時の人々が水に対して深い意味を見出していたことを示している。


 洞窟内で彫刻が配置されている場所と3D地図の場所は、わずか2〜3mしか離れておらず、これらの二つが何らかの形でつながっている可能性も指摘されている。


 雨水が馬の彫刻を通じて床の溝を流れる仕組みは、生命の誕生や自然の循環といった象徴的な意味を持っているのかもしれない。


 研究を主導したメダール・ティリー博士は、「この洞窟の地図や彫刻には、単なる実用性を超えた自然観や生命観が込められている可能性が高い」と語る。



セゴニョール3洞窟の床の3次元地図の眺め Credit: Dr Médard Thiry


 今回の発見は、約3000年前の青銅器時代に作られた岩板地図が「最古」とされていた記録を大きく更新するものだ。


 新たに発見された3D地図は、さらに1万年前の旧石器時代にさかのぼったもので、人類が驚くべき技術と知恵を持っていたことを証明している。


 今回の発見には、考古学だけでなく、地質学や地形学といった学問分野の専門家が協力した。研究チームは2017年から現地調査を重ね、洞窟の床に刻まれた地形が人為的に作られたものであることを証明した。


 ティリー博士は、「異なる分野が協力することで、このような洞窟の地図が古代人の手によるものであると分かった。発見は一瞬ではなく、地道な調査と観察によって得られるものだ」と語る。


 セゴニョール3洞窟での発見は、私たちに多くのことを教えてくれる。古代人が持っていた自然環境に対する深い洞察力と、それを形にする技術。そして何より、自然との共存を大切にしていた価値観だ。


 アデレード大学のアンソニー・ミルンズ博士は、「この地図は、単なる地形の表現を超え、石器時代の人々が自然や水の流れにどれだけ注意を払い、それを象徴的に理解していたかを示している。」と述べている。


 この研究は『Oxford Journal of Archaeology[https://doi.org/10.1111/ojoa.12316]』誌(2024年12月24日付)に掲載された。


References: World’s oldest 3D map discovered | Newsroom | University of Adelaide[https://www.adelaide.edu.au/newsroom/news/list/2025/01/13/worlds-oldest-3d-map-discovered] / https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ojoa.12316[https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ojoa.12316]

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