入院するならいつがお得?医療費控除の対象項目は?介護・不動産売買・相続などの優遇制度を上手に活用しよう

2024年2月5日(月)12時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

税金の控除や医療費の自己負担額を減らすなどの優遇制度を活用できていない人は多い、と税理士の板倉京さんは言います。どのタイミングでどんな制度が使えるのかを知っておくことが、老後のお金対策の第一歩です(構成=村瀬素子 イラスト=古谷充子)

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【医療】に関する制度


年齢を重ねるとともに、医療費はかさみがちに。医療費の自己負担を減らすためには、使える公的医療制度を積極的に活用するとよいでしょう。

>>入院時期が選べる場合は月をまたがない


入院などで医療費がかさんでも、「高額療養費制度」があるため、一定の限度額を超えた分は払い戻されます。

限度額は年齢や所得によって異なり、仮に70歳未満で年収約370万円未満ならば、月5万7600円です。

高額療養費は月単位で計算されるため、入院時期を選べるならば、月をまたがないほうが自己負担額を抑えられます。

>>医療費控除で節税


健康保険や高額療養費制度でカバーできなかった医療費には、「医療費控除」が使えるかを確認しましょう。対象となるのは治療目的の費用で、治療費のほかに、保険適用にならない入院中の差額ベッド代、通院にかかる交通費など。それらの合計金額が年間10万円(もしくは所得の5%)を超えると、超えた部分が控除の対象となります。

これらの医療費控除を受けるには、確定申告が必要です。その際の裏技は、生計を同じくする家族の中で(同居していなくても、親が子どもの扶養に入っている場合なども含まれます)一番所得の高い人が家族全員分をまとめて申告すること。

医療費控除できる金額が増えるうえに、所得税率が高ければ還付金が増えます。

>>控除のグレーゾーンを見落とさない


医療費控除は予防目的の費用が対象にならないため、人間ドックは対象外。ただし、人間ドックで重大な病気(がん、心疾患、高血圧、糖尿病などのほか、メタボも含まれます)が見つかり、その治療を続けた場合は人間ドック代も医療費控除の対象にできます。

ほかにも、腰痛など治療目的で資格者による整体の施術を受けた費用は控除の対象に。医師の診断のもとで買った補聴器、白内障など目の病気のためのメガネも対象内です

【介護】に関する制度


介護保険制度の介護サービスを利用する場合、自己負担は1〜3割です。ただ、1ヵ月あたりの限度額を超えた分が戻ってくる「高額介護サービス費」という制度があります。また、介護保険を使って受ける医療系のサービスは、医療費控除の対象になることも。

控除の対象となる費用には細かいルールがあるため、施設などが発行する領収書を持参して役所などで確認しましょう。

>>世帯分離で負担額を減らす


高額介護サービス費の自己負担限度額は、世帯の所得が高いほど高く設定されます。たとえば介護を受ける人に所得がなくても、仮に年収700万円の子どもと同世帯にしている場合、自己負担限度額は月4万4400円に。

一方、介護を受ける人の所得が国民年金のみの単身世帯ならば限度額は1万5000円となり、約3万円もの差が出ます。介護を受ける人の収入が少なく、家族の誰かが収入が高い場合は、「世帯分離(同居する家族が世帯を分けて住民票を登録)」すると自己負担額を減らすことが可能に。

ただし世帯分離によって健康保険料なども変わり、メリットが得られないケースもあるので、必ず役所で確認してください。

>>医療・介護費を合算する


医療費と介護費の両方がかさむ場合は、「高額医療・高額介護合算療養費(高額介護合算療養費)」制度を利用すると、さらに自己負担額を抑えることができます。

たとえば世帯年収約370万円未満の場合、医療費と介護費を合わせた限度額は年60万円(70歳未満)ですから、超えた分は役所に申請し、払いすぎたお金を取り戻しましょう。

【家】に関する制度


老後を見据えて、住み替えや家の売却を検討している人は多いでしょう。不動産の売買は大きなお金が動くため、税金の控除や特例を知らないと多額の税金を払うことになりかねません。

>>売るなら、住まなくなってから3年以内に


自宅など不動産を売却する際は、買ったときよりも高く売れた場合にのみ税金がかかります。

仮に2000万円で買った自宅が5000万円で売却できたとすると、利益はざっくりと3000万円。この金額は所得としてみなされるため、所得税と住民税がかかってきます。税率は、家の所有期間が5年を超えていた場合は約20%、5年以下の場合は約39%です。

ただし、住まなくなってから3年後の12月31日までに売却すると、3000万円の利益までは税金がかからないという「居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例」があります。その3年間、人に貸して家賃収入があっても大丈夫です。

>>相続した空き家は2027年までに売却を


親から相続した家を売る場合、相続した日から3年後の12月31日までに売却すれば、先の自宅売却時と同じく3000万円分が控除対象となる「空き家特例」が使えます。対象は、新耐震基準が設けられた1981年5月31日以前に建てられた家屋。相続後は空き家のままで誰も住んでいない、などの条件があります。

この特例が適用されるのは、2027年12月31日までの売却に限られるため、売るつもりの家があるならば早めに検討しましょう。

なお、自宅売却も空き家売却も特例を受けるための条件は複数あり、確定申告が必要です。税務署や税理士に相談したうえで手続きをしてください。

【相続】に関する制度


相続税対策の前に、財産を洗い出してノートなどにまとめ、分け方を決めておきましょう。相続の申告期限は10ヵ月。それを過ぎると、税金を安くする特例が使えなくなります。財産がいくらあるかわからない、相続内容で揉めるなどしていると、いつの間に期限が過ぎてしまうもの。

ただし、相続税の申告書とともに「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署に提出すれば、いったん相続税を納めても、期限後に一定の要件のもと特例の適用を受けられます。

>>減税効果の高い生前贈与を選択


相続税対策の一つに、「生前贈与」があります。年間110万円までの贈与は課税されないという「暦年贈与」の非課税枠を使ってコツコツ贈与すれば、相続税の節税に。

これまで本人が亡くなる3年前までの贈与分は相続税の計算対象でしたが、2024年以降の贈与からこの期間が7年になることが決定しました。そのため、相続税対策の効果は減少したと言えるでしょう。

一方で、60歳以上の父母、または祖父母などから18歳以上の子や孫に財産贈与をする場合に利用できる「相続時精算課税」制度の改正が注目を集めています。

2500万円まで(1回でも分けて贈与してもよい)は贈与税がかからないものの、相続時に精算されて課税対象になるという制度ですが、2024年以降、年間110万円以下の贈与は無期限で相続税の計算対象にしなくてもよい、と改正されます。

>>生命保険を活用する


相続税対策として簡単で確実なのは、実は生命保険です。相続人1人につき500万円の非課税枠があり、たとえば子どもが3人いる場合、死亡保険金が1500万円の生命保険に加入しておけば、亡くなったときに子どもたちが受け取る1500万円に相続税はかかりません。

また、老後資金が不足した際に解約して使うこともできるので、使い勝手もよいと言えるのではないでしょうか。

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