福岡県に600年の歴史をもつ最高級茶葉が存在した!銘茶「八女茶」を知っていますか?

2024年2月8日(木)12時30分 婦人公論.jp


全国きっての高級茶葉「八女伝統本玉露」の魅力とは——(『八女茶——発祥600年』より)

高品質な玉露の生産地である福岡県八女。そこで作られる八女茶の栽培方法は室町時代から受け継がれ、600年を迎えました。全国きっての高級茶葉「八女伝統本玉露」の魅力とは——

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全国的にも高く評価される銘茶


八女茶とは主に福岡県内で作られたお茶の統一ブランド名で、主な生産地は県南地域の八女市、筑後市、みやま市、広川町、うきは市などに広がっています。

福岡県南部に広がる九州最大の筑後平野は、農産物の栽培に理想的な気候風土にあり、特に八女地方は、古来よりお茶の栽培が盛んに行われてきた土地柄です。

一級河川・筑後川と矢部川流域は筑後平野南部に位置し、肥沃な土壌と豊富な伏流水に恵まれています。日中は気温が高く、しかも夜間は冷え込む特有の内陸性気候に加え、降雨量も多く、茶栽培に適した自然条件を満たしています。

こうした気候と土壌を生かし、さらに伝統ある技法を用いて丹念に栽培・製造される八女茶は、八女地方の代表的特産品の一つであり、味・香り・色の3点を兼ね備えた銘茶として全国的にも高く評価されています。

都道府県別茶生産量


令和3年度の調べによると、全国の茶栽培面積は3万8000ヘクタールで、福岡県は1520ヘクタール。また、全国の荒茶生産量は7万8100トンで、福岡県は1650トン(農林水産省「作物統計」より)となっています。

福岡県は茶栽培面積全国5位、荒茶生産量全国6位の位置づけにあり、シェアは小さくとも、実は古くからの主産地の一つなのです。

お茶の主産地にはそれぞれ特徴がありますが、福岡県は煎茶、玉露とかぶせ茶の生産に強みを持っています。

現在の八女茶の茶生産農家数は約2000(農林水産省「作物統計」より)戸を数え、平坦部では煎茶、かぶせ茶、山間部では玉露が多く生産されています。


主なブランド茶産地マップ(『八女茶——発祥600年』より)

八女茶の種類と特徴


八女茶の代表的な種類と特徴を紹介します。

【煎茶】自然光下で栽培し、摘み採った新芽を蒸して揉み、乾燥して製造したもの。さわやかな香りとうま味・渋味が調和し、緑茶のなかで最もよく飲まれている代表的なお茶。上級品ほどうま味や香りがある。


煎茶(『八女茶——発祥600年』より)

【玉露】稲わらや寒冷紗などで収穫前16日以上20日間前後の棚被覆を行い、日光を遮って栽培した茶葉を煎茶と同様に製造したもの。うま味の素となるアミノ酸の含有量が多く、逆に、渋味の素となるタンニンなどが少なく、うま味が豊富なコクのある味わいに特徴がある。


玉露(『八女茶——発祥600年』より)

【てん茶(抹茶)】玉露と同様に、被覆資材を用いて栽培した茶葉を蒸し、揉まないで乾燥させたもの。てん茶を茶臼などで微粉末状に製造したものが「抹茶」で、香りや味わいが深いのが特徴。飲料や菓子、アイスクリームの原料としても使われている。

【かぶせ茶】わらや寒冷紗(かんれいしゃ)などで収穫前7日以上の被覆栽培を行い、煎茶と同様に製造したもの。玉露と栽培方法は似ているが、被覆をする期間が短い。玉露と煎茶の間に位置し、玉露のような香りとうま味、煎茶のさわやかさを両方楽しめる。


抹茶(『八女茶——発祥600年』より)

量より質を求めて


八女茶の特徴は、新芽の数を少なくして葉を大きくしっかり育てる芽重型(がじゅうがた)の栽培方法を採用していることです。このため、八女茶の収穫は、ほとんどが二番茶までしか摘み採りません。

お茶の品質や味は、葉を摘む時期によって差がでます。

若く柔らかいうちに摘んだものが一番茶(新茶)で、これ以後は摘採の順に二番茶、三番茶と呼びます。一番茶は長い休眠状態を経て萌芽するのでアミノ酸類の含有量が十分に高まりうま味感が増加します。

芽重型で芽を育てたお茶は、強いうま味とコクを味わえます。他産地の緑茶に比べて味が濃厚であること、苦渋味が少ないことが八女茶の最大の特徴です。

福岡県の荒茶生産量が栽培面積の割に少ないのは、こうした量より質を重視した芽重型の栽培や、その摘採回数が少ないことによるものです。


『八女茶——発祥600年』(監修:福岡の八女茶 発祥600年祭実行委員会/中央公論新社)

茶栽培に適した「冷涼多雨」の地


お茶の品質は生産地の気象条件や土壌条件から大きな影響を受けます。茶樹は温暖で湿潤な地域で育てやすい植物のため、特に気温と降水量に左右されやすい性質を持っています。

気象条件としては、年間の平均気温が14〜16℃くらいであること。年間降水量が1300ミリメートル以上で、生育期間にあたる4月から9月までは1000ミリメートル以上が目安となります。

八女地方の気象は、日中の気温が高く、夜間は冷え込む内陸性気候で、矢部川流域の山あいでは朝、夕に霧が多く立ちこめます。加えて、年間1600〜2400ミリメートルと降水量も多く、いわば「冷涼多雨」。高級煎茶や玉露、かぶせ茶などの栽培には、非常に適した環境にあります。

昔から山間地で育ったお茶はおいしいとされていますが、実際、銘茶の産地といわれる地域は、八女地方のような川沿いの山間地に多く、朝夕に濃い霧がかかるところが多いようです。

なぜ、山間地のお茶はおいしいのでしょうか。

山間地は、平地に比べると日照時間が短く、気温も低く、さらに昼夜の温度差が大きいのが特徴です。そのため新芽の成長が遅く、摘み採る時期も遅れますが、新芽がゆっくりと伸びるので、うま味成分が長く保たれるのです。

また、周囲の木々が茶畑に自然な日陰を作ることによって、カテキン類が少なく、アミノ酸類は多くなる傾向があります。つまり、苦味や渋味が控えめで、うま味や甘味が多く含まれた茶葉に育つというわけです。


伝統本玉露生産者の山口孝臣さん(『八女茶——発祥600年』より)

※本稿は、『八女茶——発祥600年』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

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