お受験と子どもの成長 【馬場典子 コラムNEWS箸休め】

2024年2月11日(日)10時0分 OVO[オーヴォ]

 友人のお子さんが小学校受験をしました。賛否両論ある「お受験」ですが、その子の場合、積極的に発言ができるようになり、学ぶことの楽しさも知り、それだけでも良かったと思えたそうです。

 私語厳禁という第1志望校の受験当日。見るからに記念受験の子がいて、無邪気に周りに話しかけていたそうです。塾の教えは「そうした子の相手をしてはいけない」。本人もその教えを守っていたものの、最後の最後で琴線に触れる話につい反応してしまったそうです。結果は不合格。私語で全てが決まるわけではないと思いますが、大きな減点要素ではあるようで・・・。確かに、話をきちんと聞くことも大切ですが、好奇心旺盛なこともすてきなこと。受験のテクニックとはいえ、話しかけてくる人を無視することを是とするかのような教えに、友人も私も、複雑な思いでした。

 別の学校では、絵を描く時に、色えんぴつのケースをなかなか開けられなかったそうです。そこで手を挙げて、どうしたのかと聞かれて初めて「開けてください」とお願いしたのですが、「自分で開けてください」と言われたそうです。10分ほど格闘してやっと開けられた時には、絵を描く時間は残りわずかで・・・不合格。もちろん絵だけで決まるわけはありませんが、塾の先生に聞くと、基本的に質問すること自体望ましくなく、「開け方を教えてください」だったらまだセーフかもしれないけれど・・・とのこと。でも、周りの邪魔をしないようにと声も出さずに待ち、泣きもせず諦めもせず一人で最後まで頑張ったことは、誇らしいことに思えます。実社会では、知らないことや分からないことをそうと言えずに問題になってしまうことも多いのだから・・・。

 わが子に不合格を伝えるのは、タイミングも伝え方もやはり悩んだそうですが、当の本人は「次は国立を頑張ればいいんだよね!」と前を向き、自ら勉強も続けたといいます。

 ところが、国立は3校全て抽選で外れてしまい、スタートラインに立てず、頑張ることすらさせてもらえませんでした。さすがにその時は、とても悔しがり残念がり、長時間顔を覆って堪(こら)えていたそうです。抽選がいかに厳正であるかが証明されたような気もしますが、もし複数校抽選が通った子がいたとするなら、1校も通らなかった他の子にもう少しチャンスが回ってきてもいいのでは、と思わずにいられません。

 一方で、本気で悔しがるということは、結果を真正面から受け止めていないとできないことです。つらいけれど、とても大事で、だからこそ強くなれる気がします。子どもの純粋さ、真っすぐさ、強さに胸を打たれました。実際、今では第1志望だった学校の中学受験を頑張る! と宣言。合否以上に大きなものを得たようでとても頼もしいです。結果は大切ですが、結果をどう受け止めるかが、もっと大切なのだと教わりました。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No. 6からの転載】


馬場典子(ばば・のりこ)/東京都出身。早稲田大学商学部卒業。1997年日本テレビに入社し、情報・バラエティー・スポーツ・料理まで局を代表する数々の番組を担当。2014年7月からフリーアナウンサーとして、テレビ・インターネット番組・執筆・イベント司会・ナレーションなど幅広く活動中。大阪芸術大学放送学科教授も務める。

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