横浜美術館が全館オープン「もっと気軽に美術館へ」無料で楽しめるエリアが拡張【現地リポ】

2025年2月20日(木)21時15分 All About

約3年の改修工事を経て、2025年2月8日、横浜美術館が全館オープン。より市民にひらかれた「じゆうエリア」が設けられ、気軽に足を運べるようになりました。

2021年3月から大規模改修工事などで休館していた横浜美術館が、2025年2月8日に全館リニューアルオープンしました。より市民にひらかれた「じゆうエリア」が設けられ、「もっと気軽に美術館を訪れてほしい」という思いが込められています。どこが変わったのか、リニューアルしたポイントを紹介します(画像は内覧会にて筆者撮影)。

横浜美術館について

横浜美術館は1989年11月3日、横浜市西区のみなとみらい21地区に開館しました。竣工は1988年で、開館前は横浜博覧会(会期:1989年3月25日〜10月1日)のパビリオンの1つとして使用されていました。
建物の設計を担当したのは建築家の丹下健三です。迫力のあるシンメトリーな外観と、吹き抜けが開放的なグランドギャラリーが特徴的。国際的な港町、横浜にふさわしい美術館として、1万4000点超の作品を収蔵(2024年3月時点)し、開港以降の近・現代美術を幅広く鑑賞することができます。
大規模改修工事のため、2021年3月から休館していましたが、第8回 横浜トリエンナーレの開催(2024年3月15日〜6月9日)、2024年11月の一部事業再開を経て、2025年2月8日に全館リニューアルオープンとなりました。
2020年4月に6代目横浜美術館館長に就任した蔵屋美香さんは、「横浜美術館は、展示室は意外に狭く、フリースペースの方が大きいという特殊なつくりになっています。
その意図を探ると、都市計画と一体となって美術館が建てられた経緯から、美術館の前の広場と中のスペースを1つのものとして自由に使ってもらえるように、という丹下さんらの思いが込められていることが分かりました。その思いをより“見える化”したのが『じゆうエリア』です」と、改修の意図を説明しています。
より市民にひらかれた「じゆうエリア」を中心に、生まれ変わった横浜美術館を紹介します。

正面入口に「大しかく看板」とオープンスペースを設置

外観で変わった点は、正面入口に「大しかく看板」が設けられたこと。この看板には展覧会の情報が掲示されています。同行者と待ち合わせをする際の目印にもなります。
そして、美術の広場に面したスペースに、オリジナルデザインのピンク色のテーブルと椅子が置かれたことも大きく変わった点。ここは誰もがくつろげるオープンスペースです。
什器やサインに使われているピンク色は、柱などに見られる御影石の中のさまざまなピンク色を抽出したものです。

グランドギャラリーの天井がガラス張りに

設計者である丹下健三は光が入る空間として、グランドギャラリーの天井に開閉式ルーバーを設置しました。しかし、そのうち故障して動かなくなってしまったそうです。
今回の大改修ではこの開閉式ルーバーが修理され、スムーズに開閉できるようになりました。当初の構想でもある、季節や時間によって天井からやわらかい自然光がふりそそぐ大空間を感じられます。
さらに、グランドギャラリーに透明で開放感のあるエレベーターを新設。車イスやベビーカーでも新しいルートで展示フロアまで上がることができます。

無料で過ごせる「じゆうエリア」

グランドギャラリーを中心とする無料で入れる場所は「じゆうエリア」とネーミングされ、より自由にひらかれた空間に生まれ変わりました。展覧会を見ない方もぶらりと訪れ、アートにふれながらのんびりと過ごせます。
正面入口の奥は「まるまるラウンジ」。ここにもオープンスペースと同様にピンク色のオリジナルのテーブルや椅子が設置されています。ここで作品について会話したり、併設するカフェの飲み物を楽しんだりできます。
さらに、3階展示室前のホワイエまで無料エリアを拡張。グランドギャラリー全体を見渡しながら、誰もが自由に過ごせる場所となっています(飲食は不可)。
大階段の途中には、子どもと一緒に楽しめる「くつぬぎスポット」も設けられました。このほか、館内の授乳室を増やし、調乳器も新たに導入。子育てファミリーにもひらかれています。
グランドギャラリーの大階段エリアでは、左右対称にひろがる階段の踊り場のかたちに着目。横浜美術館の建物のあちこちに見られる「まる」と「しかく」を隠しテーマにした彫刻作品が展示されていますので、ご覧あれ。

新設された2つのギャラリーは無料で観覧OK

美術の広場側には、無料で入場できる「ギャラリー8」と「ギャラリー9」を新設。横浜ランドマークタワー側にある「ギャラリー9」はガラス張りとなっていて、陽の光が射し込み、外の景色も見渡せる開放的な空間となっているだけでなく、美術館の外からも作品を鑑賞できます。

美術情報センターが「美術図書室」に

休館前は3階にあった美術情報センターが地上階へ移り、「美術図書室」となりました。誰でも無料で利用でき、室内のみで閲覧が可能です(貸し出しはありません)。
明るい光が入り込むスペースには、24万冊を超える国内外の展覧会カタログや専門書、雑誌と映像資料が所蔵されています。9割が書庫にあるため、調べて出してもらってください、とのことです。

横浜の特色ある商品をそろえたミュージアムショップ「MYNATE」

ミュージアムショップは「MYNATE(ミナト)」として生まれ変わりました。店名は「MY」=「私(たち)の」と「NATE」=「生まれる(ラテン語)」を組み合わせた造語で、「地域の文化と本のあるお店」をコンセプトとしています。
横浜美術館のオリジナルグッズやアートにまつわるグッズだけでなく、横浜市内で活躍する作家や企業、クリエーターの商品、地域色に富んだ商品もそろうのが特徴です。もちろん、展覧会に合わせた商品も展開。

新たな館内カフェでは「馬車道十番館」のケーキが味わえる!

館内のカフェは「馬車道十番館 横浜美術館 喫茶室」となりました。運営するのは、馬車道に本店を構える横浜十番館。本店の馬車道十番館と同じケーキやデザート、軽食、ドリンクを味わいながらゆったりと時間を過ごせます。
セルフサービスなので、ドリンクなど本店よりもリーズナブルな価格で提供されているものも。横浜土産として人気の「ビスカウト」の販売もあります。一部メニューはテイクアウトもできるので、屋外の席でグランモール公園を眺めながら味わうのもおすすめです。

蔵屋館長「無限の可能性を持つ子どもたちに“何か”に出会うチャンスを」

蔵屋館長は「じゆうエリア」について、次のようにコメントしています。
「無限の可能性を持つ子どもたちは、何かに出会うチャンスがなかったゆえに、その才能が花開かないという人はたくさんいるのではないかと考えました。無料でうっかり見ちゃったら、こういう道もあるんだ、こういう風になってもいいんだと気付いて、未来への道が思わぬ方向に開けていくかもしれません。
美術館というのはそういう場所でありたい。横浜美術館でそれを見える形にしたい。その1つが『じゆうエリア』です。あらゆる人を歓迎する横浜美術館へ、足を運ぼうと思っていただくきっかけとなればうれしいです」。
横浜美術館リニューアルオープン記念展「おかえり、ヨコハマ」も2月8日〜6月2日まで開催されています。新しく、明るくなった横浜美術館へ、ふらりと訪れてみてはいかがでしょうか。
「横浜美術館」情報
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
TEL:045-221-0300
開館時間:10:00〜18:00 ※入館は閉館30分前まで
休館日:木曜、年末年始 ※詳しくは公式Webサイトで確認を
(文:田辺 紫(横浜ガイド))

All About

「美術館」をもっと詳しく

「美術館」のニュース

「美術館」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ