電車の発車メロディーはどうやって決まる? 茨城・牛久駅で『オー・シャンゼリーゼ』が流れる理由とは

2025年3月7日(金)21時25分 All About

電車の発車メロディーはどのように決められているのか、「All About」鉄道ガイドの野田隆が解説する。

電車に乗る際、ホームで耳にする発車メロディー。普段何気なく聞いているメロディーだが、どうやって決まっているかご存じだろうか? 発車メロディについて、「All About」鉄道ガイドの野田隆が解説する。
(今回の質問)
発車メロディー(駅メロ)はどうやって決まる?
(回答)
国鉄時代はけたたましいベルだった駅の発車合図は、民営化でJRになってから各社、耳にやさしい駅メロディが主流となっていく。あらかじめ用意された何種類かのメロディーが駅によって選ばれていたが、そのうちご当地駅メロがはやりだした。

分かりやすいご当地駅メロ


例えば、JR蒲田駅の『蒲田行進曲』、東京メトロ日本橋駅や三越前駅の『お江戸日本橋』、銀座駅の『銀座カンカン娘』(銀座線)『銀座の恋の物語』(日比谷線)は、採用された理由がよく分かるだろう。

高田馬場駅の『鉄腕アトム』がご当地駅メロの始まり

しかし、パッと聴いて、なぜこの駅でこの曲? と事情通でないと分からないものもある。JR山手線高田馬場駅の駅メロはアニメ『鉄腕アトム』主題歌。これは、物語の中で主人公アトムが高田馬場にある科学省で2003年4月7日に誕生したという設定になっていること、番組制作を担当した「手塚プロダクション」が高田馬場に事務所を置いていることにちなんだもの。
2003年3月1日からJR山手線高田馬場駅で発車メロディーに使用されている。アトムの誕生年を迎えたことを記念して、この駅メロが誕生した。これが大変好評だったので、各地でご当地駅メロが雨後の竹の子のごとく生まれたといわれている。

恵比寿駅と牛久駅の駅メロ採用理由

同じJR山手線の恵比寿駅は映画『第三の男』の主題歌が使われている。かつて恵比寿駅に隣接してビール工場があり、その出荷のために駅が設置されたという歴史がある。そのビール工場とはヱビスビールのことで、テレビCMのBGMが映画『第三の男』のテーマ曲を使っていたことにちなんでいる。 ちょっと分かりにくいのが、JR常磐線牛久駅2番線上りホームの『オー・シャンゼリーゼ』。華やかなフランスの首都パリをイメージした曲想と駅周辺の風景とはミスマッチのような気がする。
調べてみると、牛久市内にある日本初の本格ワイン醸造場「牛久シャトー」にちなみ、ワインの本場フランスをイメージして選ばれたとのことだ。

ゆかりの作曲家・作詞家の曲

JR中央線・三鷹駅の『めだかの学校』、国分寺駅の『電車ごっこ』、八王子駅の『夕焼け小焼け』は、それぞれ地元に縁のある作曲家(三鷹駅&国分寺駅)、童謡作家(八王子駅)の曲を選んでいる。

人気アニメの曲、春日部駅&大泉学園駅

人気アニメの曲が選ばれているのは、高田馬場駅のほか、東武鉄道・春日部駅の『オラは人気者』(クレヨンしんちゃん主題歌)、西武池袋線・大泉学園駅の『銀河鉄道999』が有名。春日部駅は、しんちゃんの物語の舞台であり、大泉学園は、作者の松本零士さんが住んでいただけでなく、アニメ・スタジオがあり、アニメの街として売り出していることが選曲の理由だ。

電車ワンマン化で駅メロが消滅!?

このように人気沸騰の感があるご当地駅メロだが、残念なニュースが伝わってきた。JR南武線は電車のワンマン化に伴い、これまでは、車掌がホームにあるボタンを押してきた川崎市内の7つの駅の駅メロが廃止される見込みだ。登戸駅の『ぼくドラえもん』、武蔵溝ノ口駅の平原綾香『Jupiter』などが聴けなくなるという。
惜しむ声が多いだけに、何とかならないものかと思う。
この記事の筆者:野田隆
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL「D51」を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。近著に『シニア鉄道旅の魅力』『にっぽんの鉄道150年』(共に平凡社新書)がある。
(文:野田 隆)

All About

「発車メロディ」をもっと詳しく

「発車メロディ」のニュース

「発車メロディ」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ