現存するアメリカの近親婚家族・ウィタカー家とは? 精神障害を抱えた15人の“きょうだい”を世界中が支援

2023年3月8日(水)14時45分 tocana

 歴史の浅いアメリカではあるが、その地理的な懐の深さゆえに“陸の孤島”に先祖代々住み身内だけでコミュニティを形成する「近親婚家族」が今もその血脈を繋いでいる。社会的にもモラル的にも賛同することはできないそうした近親婚家族には、実は人々に愛されているファミリーも少なくない。そうした家族の1つがバージニア州の集落に暮らすウィッタカー家である。


動画公開後一躍注目された近親婚家族、ウィッタカー家

 自由を求めてヨーロッパから多くの人々が“新世界”アメリカに移り住んできたのだが、まだ手つかずの土地を広く占有して居を構えたがゆえに、皮肉なことにその地域の社会的交流が著しく低下して地理的にも的にも隔絶文化された閉鎖的コミュニティが出来上がってしまったケースもある。極端な例ではその地域で何代にもわたって近親者による結婚が繰り返されたりもするのだ。


 そうした「近親婚家族(inbred family)」には“青い肌の一族”として知られるケンタッキー州の「ファゲイト一族」などが挙げられるが、バージニア州オッドの集落に住むウィッタカー家は、ドキュメンタリー映画監督が取材したことでたちまち多くの人々に知られるようになった。


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 ドキュメンタリー映画監督のマーク・ライタ氏は2004年に最初にウィッタカー家を訪れて取材したのだが、その後に本格的な取材を行い映像ドキュメンタリー『Inbred Family-The Whittakers』を制作し、2020年にYouTubeで公開して多くの注目を集めた。動画をリンクすることはできないので興味のある向きはタイトル名で検索していただきたい。


 ドキュメンタリーによれば、集落の一軒家にはウィッタカー家の4人のメンバーと数匹の犬が住んでいる。4人はそれぞれ、一定の間隔で犬のように吠えるレイ、ローリーン、肥満気味のティミー、そしてこの中で唯一会話によるコミュニケーションが可能とされる名を名乗らない匿名女性だ。レイとローリーン、匿名女性の3人は兄弟姉妹で60〜80歳ほどと考えられ、ティミーは匿名女性の甥であるということだ。


 ライタ氏が2004年に初めて訪問した時には、フレディーという男性も一緒に住んでいたが、心臓発作で亡くなったという。葬式をするお金がないので、自宅の庭に亡くなった遺体を埋めたということで、映像ではその埋めた場所をレイが監督に教えてくれている一幕も綴られている。


■15人のきょうだいの両親が「二重いとこ」

 ある意味では仕方のないことであるとは思うが、屋敷の中はなかなか酷い散らかりようである。


 キッチンもバスルームもトイレもすべて汚れてゴミやモノが散乱しており、イヌが到るところを徘徊し寝そべっている。バスルームを見る限りシャワーを浴びている者はいないようであったという。自発的なメンテナンスも期待できそうにはない。


 ウィッタカー家の家系図を調べたところ、15人のきょうだい(兄弟姉妹)の両親が父方と母方の両方の祖父母が共通する「二重いとこ」だった。残念ながら家族メンバーのかなりの者が近親婚が原因と考えられる精神的な障害のため、普通のコミュニケーションが取れない状態にある。


 とはいえ動画を見る限りは、レイもローリーンもティミーもライタ氏の語りかけている内容は理解しているように見える。


 ライタ氏は2020年の訪問でウィッタカー家が経済的にかなり困窮状態にあることを理解し、個人的に現金と食料を提供するとともに、クラウドファンディングを行うことを思いつきウィッタカー家のための「GoFundMe」キャンペーンを実施した。


 2021年のキャンペーンでは約4万6500ドル(約650万円)の寄付が集まり、老朽化した屋根と窓の修理と、ロレーヌとティミーの心臓発作治療の医療費に充てられたということだ。


 ドキュメンタリー動画をYouTubeで公開したことでウィッタカー家がこれまで以上に世に知られるようになり、ファンと支援者もまた増加し、ウィッタカー家はアメリカで最も有名な近親婚家族の1つになったのである。


 2004年の時点よりも幸福に暮らしていそうなウィッタカー家ではあるが、メンバーの高齢化で一族の存続がどうなるのかわからないが、人々の支援を受けながらいつまでも元気でいてほしい。



参考:「Daily Star」、「Legit」ほか

tocana

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