日本の電気自動車の最高到達点? 日産「アリアNISMO」に試乗!

2024年3月13日(水)11時0分 マイナビニュース

日産自動車のフラッグシップEV(電気自動車)「アリア」に高性能な「NISMO」バージョンが登場する。ただでさえ速いアリアにモータースポーツ直系のNISMOスパイスをふりかけた「アリアNISMO」はどんな仕上がりなのか。日産のテストコース「グランドライブ」で発売前のプロトタイプに試乗した。
アリアはNISMOでどう変わる?
デビュー後に長らく受注がストップしていたことで、街で見かけることがほとんどなかった日産のEV「アリア」。生産体制が落ち着いたことで、先ごろ受注が再開したのは朗報だ。
このタイミングで登場するのが、トップモデルとなるアリアNISMOだ。試乗会場となったグランドライブには、NISMOの訴求色となる「ステルスグレー/ミッドナイトブラック」の「B9 e-4ORCE」と「プリズムホワイト/ミッドナイトブラック」の「B6 e-4ORCE」の2台(どちらもプロトタイプ)が置かれていた。
グレードを示すバッジが付いていないので、唯一の識別点はルーフのアンテナがツイン(B9)かシングル(B6)かといったことぐらい。それぞれのパワートレインは、B9が最高出力320kW/435PS(ノーマル比+41PS)、最大トルク600Nm(同±0)の前後モーターと容量91kWhの駆動バッテリーの組み合わせ、B6が最高出力270kW/367PS(ノーマル比+27PS)、最大トルク560Nm(同±0)の前後モーターと容量66kWの駆動バッテリーの組み合わせとなる。どちらも、後輪側のモーターだけノーマルモデルに比べ出力がアップしている。
開発を担当した饗庭貴博チーフプロダクトスペシャリスト(CPS)によると、スタビリティを求めて強烈なダウンフォースを生み出すボディ形状を追求しすぎてしまうと、逆にEVとしての電費に影響が出てしまうので、そのあたりの按配には苦労したとのこと。NISMOのレーシングテクノロジーを応用することで、結果的に航続距離は10%程度のダウンに抑えられた。
NISMO専用のEVサウンドが聞こえた!
前出の饗庭CPSによると、アリアNISMOの車重は「GT-R NISMO」より500kgも重い2,220kg。トルクは同レベルの600Nmだ。開発陣が目指したのは、より速く、気持ち良く、安心して走れるクルマなのだという。ハイパワーなB9バージョンで早速コースインだ。
この日はあいにくの小雨模様だったので、最初はスタンダードモードで様子見。ミシュランが専用開発した「パイロットスポーツ」のEVタイヤと、専用チューニングのシャシー、パワステ、ブレーキの性能がとても高い次元にあることがすぐにわかったので、2周目からはNISMOモード&ワンペダルモードに入れてスピードを上げてみた。
すると、アクセルの反応が一気に鋭くなる。濡れた路面をガッチリとグリップしながら、自由自在な加減速をできるのが気持ちいい。コース途中にあるS字のアップダウンポイントは、こんな路面状況では普通ならトラクションが抜けてしまいそうで怖いのだけれど、アリアNISMOは高いスピードを保ったままシレッとクリアしてしまう。2t以上もある重いクルマを操っていることを頭の片隅に置きつつも、それを忘れてしまいそうになるほど機敏でスムーズな走りにちょっと驚く。
試乗車は「BOSEサウンドシステム」を装着していたので、NISMOモード時には専用サウンドが車内に鳴り響いた。アクセルONでは「クイィィィィーン」という高周波の金属音、アクセルOFFでは「ブォォォォン」という低周波というふうに音色が変化する。慣れてくると音とクルマの挙動がマッチし始めて、まるでクルマと対話しているような一体感が味わえる。考えたらこの音、テレビから聞こえてくる「フォーミュラE」のモーターサウンドにそっくりではないか。音色については「社内のスタッフにも好き嫌いがある」(饗庭CPS)というけれども、何はともあれクルマの走りには「音」が必要なのだと筆者は感じた次第だ。
日産のトップガン、アリアNISMOの速さを語る
加速力も予想通りとはいえ、やっぱりスゴイ。特に80km/h以上の高速側。国内の最高制限速度である120km/hまでは、そこからあっという間に到達してしまう。「NISMO tuned e-4ORCE」のトラクションと加速力は、もう異次元の世界だ。
試乗後に話を聞いたNISMO CARS評価ドライバーの神山幸雄氏(“トップガン”とか“神ドライバー”と呼ばれている)によると、「アリアNISMOはドイツのアウトバーンで200km/h以上の巡航ができましたし、ニュルブルクリンクではなかなかのタイムをたたき出してくれました。ちなみに、筑波サーキットでは1分8秒が出ます」とのことだ。
アリアNISMOのターゲットユーザーは、40代後半で年収1,300万円以上のビジネスオーナーだという。アーリーアダプターへの提供が一通り終了して“凪”の状態になったEVにとっては、こうしたモデルを投入することで、新たな購買層を増やす必要があるのかも。価格は「B6 e-4ORCE」が842.93万円、「B9 e-4ORCE」が944.13万円だ。
原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら

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