東京五輪…経済的損失は延期約6,408億円、中止約4兆5,151億円

2020年3月19日(木)18時15分 リセマム

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東京オリンピック・パラリンピックが、新型コロナウイルスの影響で予定通りに開催できなくなった場合、延期は約6,408億円、中止は約4兆5,151億円の経済的損失が推測されることが2020年3月19日、関西大学の分析結果から明らかになった。

 新型コロナウイルス感染症が世界的に蔓延し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を危惧する人が国内外で増えてきている。IOCのバッハ会長はWHOの助言に従うと発言し、アメリカのトランプ大統領は1年程度の開催延期について言及している。

 関西大学の宮本勝浩名誉教授は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックが、万一中止または延期になったときの経済的損失を推計した。経済的損失とは、大会が延期または中止になったときに発生する新たな費用と、開催により期待されていた経済効果が失われる金額の合計を意味する。

 今回の経済効果(経済波及効果)の推定には、東京オリンピック・パラリンピック準備局が2017年4月に発表した「東京2020大会開催に伴う経済波及効果(試算結果のまとめ)」を参考にしている。

 宮本名誉教授によると、2020年東京オリンピック・パラリンピックの経済効果は、「大会開催前」「大会開催中」「大会開催後」の3種類に分類できる。一般的には大会開催中の経済効果がもっとも大きいと考えがちだが、宮本名誉教授は「本当は大会開催前の経済効果や大会開催後の経済効果のほうがはるかに大きい」と解説。東京オリンピック・パラリンピック準備局の「東京2020大会開催に伴う経済波及効果」でも、大会終了後の経済効果は大会期間中の3倍以上と予測している。

 東京オリンピック・パラリンピックが1年間延期されたときの経済的損失については、競技場や選手村などの施設の1年間の維持・修理・管理の費用として約225億円、大会に関係する各種スポーツ団体が五輪に合わせて再び準備する1年間の必要経費となる約3,900億円などを合計して約4,225億円と試算。「大会延期で失われる経済効果」については、東京オリンピック・パラリンピック準備局の「東京2020大会開催に伴う経済波及効果」が示した項目をもとに約2,183億円と算出した。

 大会延期にかかる諸費用の約4,225億円と、1年間の大会延期で失われる経済効果の約2,183億円を合計し、東京大会が1年間延期されたときの経済的損失の総計額は約6,408億円とした。なお、中止による経済的損失には、新型コロナウイルスの影響で観光客が減少する影響は含んでいない。そのため、観光客の減少や国民の消費減などを考慮すると、マイナスの影響はさらに拡大すると考えられるという。

 宮本名誉教授は「1年間大会を延期しても経済的損失はほとんどないとか、経済効果は変わらないとか言うのは間違いであり、かなり大きな経済的損失が予想されることになる」としている。

 一方、2020年東京オリンピック・パラリンピックが中止された場合、延期に伴う諸費用は発生しないが、大会開催による経済効果の大部分が失われることになる。東京オリンピック・パラリンピック準備局の「東京2020大会開催に伴う経済波及効果」によると、直接効果の経済効果は約5兆2,162億円。ただし、設備整備費はすでに投資・消費済のため、中止になっても経済効果の約1兆7,538億円には影響しないため、その分を引き、失われる直接効果の経済効果を約3兆4,624億円と推定した。

 大会中止で失われるレガシー効果の経済効果については、「スポーツ、都民参加・ボランティア、文化、教育・多様性などのレガシー効果」の経済効果の約1兆7,028億円は約5割が失われるとして約8,514億円と仮定。「経済の活性化・最先端技術の活用などのレガシー効果」の経済効果の約20兆1,257億円の約1%が失われると仮定して約2,013億円とし、あわせて約1兆527億円と推測。

 東京オリンピック・パラリンピックが中止されたときの経済的損失の総額は、「失われる直接効果の経済効果」約3兆4,624億円と、「失われるレガシー効果の経済効果」約1兆527億円をあわせて約4兆5,151億円とした。

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