DV原因の離婚の場合はリスクやデメリットも…離婚後の「共同親権」導入、他国の制度などを専門家が解説

2024年3月24日(日)6時0分 TOKYO FM+

モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜〜金曜6:00〜9:00)。3月14日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「離婚後の"共同親権"は家族関係の多様化につながるのか?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。

※写真はイメージです


◆「単独親権」と「共同親権」の違いとは
3月8日(金)、離婚後にも父親・母親の双方が親権を持つ「共同親権」の導入を柱とした民法などの改正案が国会に提出されました。14日(木)の衆議院本会議で趣旨説明をし、質疑がおこなわれました。
そこで今回は、「離婚後の"共同親権"導入」について塚越さんに解説いただきます。
ユージ:塚越さん、まずは「親権」について教えてください。
塚越:親権は、成年に達していない子どもの世話や教育、子どもの財産管理をおこなうために、父親・母親に認められる権利および義務のことを指します。親権は子どもの利益(=幸せ)を最優先に考えて行使すべきとされ、子どもが18歳の成人になるまで行使できます。基本的には、婚姻関係が成立している両親は共同親権になります。
ユージ:その親権を、両親が離婚した後にどうするのか? というのが今回の改正案の話ですね。
塚越:今の日本の法律では両親の離婚、あるいは事実婚のような場合は、父親か母親の一方が親権を持つ単独親権しか認められていません。今回は両親が離婚しても、協議してどちらも親権が持てるようにするということになっています。
改正案では、協議離婚の場合に親権を単独か共同にするかを決めるのですが、合意できない場合は、家庭裁判所が親子関係などを考慮して親権者を定めます。その際には一方の親に虐待やDV(ドメスティック・バイオレンス)がないかなどを調査し、「子どもの利益」を考慮して、単独か共同親権かを判断するということです。
また、法の施行前に離婚が成立していても、裁判所に親権変更を申し立てて認められれば、単独から共同に変更することも可能になります。
◆親権争いによる「子どもの精神的な負担」を減らせる?
吉田:離婚後の”共同親権”導入のメリットは何でしょうか?
塚越:この問題は賛否が分かれているのですが、まずメリットは、親権争いによる子どもへの精神的負担を軽減できることです。離婚後もお互いが協力して子育てをするので、負担が偏らなくなります。子どもがどちらか一方と生活を共にしていても、離婚後の面会交流のトラブルが少なくなると言われています。
基本的に共同親権は、子どものことを父と母で話し合うのですが、進学先を公立校か私立校にするかといった重要事項では、両親の意見が折り合わないと裁判所が判断することになります。一方で(食事や習い事などの)日常生活のこと、緊急手術を受ける必要があるといったような急ぎの場合は、一方の親だけで判断できるようにするとのことです。
養育費については、取り決めがなくても子どもと同居している親が、別居している親に養育費を請求できる「法定養育費制度」を創設し、支払いが滞った場合は財産差し押さえなどができるようにするということです。
◆DVなどが原因で離婚の場合はリスク・デメリットも
ユージ:そんな共同親権ですが、導入反対の声も上がっていますね?
塚越:DVなどが原因で離婚したケースは、単独親権でDVした側は関わらないほうが良いです。しかし現在の日本では、密室で起きるDVは証拠を出せなかったり、暴言などの精神的なDVの場合は、裁判所が判断できなかったりする場合もあります。
そうしたなかで共同親権が認められてしまうと、加害者に住所などを知られるリスクがありますし、引っ越しをするにも、もう一方の親権者の許可が必要になるため、反対される恐れもあります。離婚を第三者(裁判所)が裁くので、どうしても円満にはならないことが多くなるのですが、こういったリスクも考える必要があります。
また、共同親権になった場合、一緒に住んでいない親が異議申し立てをすることが増えて、家庭裁判所の業務が圧迫されることも予想されます。アメリカでは一方の親権者が法的な申し立てを連発するlegal abuse(法的虐待)が問題にもなっています(※一方の親権者が法的な異議申し立てを連発する嫌がらせ行為。裁判所のリソースを圧迫すると同時に、法的虐待を受ける側の親権者には対応労力やストレスがかかり、裁判費用の支出で経済的なダメージも受ける)。
両親の関係が悪い場合、やはり対立が多くて子どもについての決定がこじれる可能性があり、賛成派の意見である「協力した子育て」が、むしろ難しくなるという意見もあります。
さらに言うと、調停や親子の面会をサポートする民間の第三者機関も、運用面で混乱することが考えられます。
◆養育費不払いは刑事罰の対象 「共同親権」を導入する他国の状況は…
ユージ:塚越さんは、離婚後の共同親権の導入についてどう思いますか?
塚越:私は、今の状況で適切に運用できるかというと、やはりマイナス面のほうが多いと思います。未成年の子がいる夫婦の離婚件数は年間およそ10万件で、子どものことを考えれば非常に重要な問題です。
例えば、共同親権を導入しているドイツだと、養育費の不払いには刑事罰が課されるなど、厳しい制度が導入されています。日本もより厳しくする必要があります。アメリカの場合は、離婚するときに養育計画書を裁判所に提出する必要があり、(子育てにおけるさまざまな方針を)細かく厳しく決めます。そういうことをしないと、共同親権のマイナス面が大きくなってしまう懸念のほうが強いかなと僕は思います。
逆に言うと、最初から両親が円満離婚で合意した場合にのみ「共同親権」を与える方法もあります。とはいえ実際は対立したり、DVなどを受けたりして離婚する人も多いので、そういう人たちにとってはむしろマイナス面が強くなる可能性があります。
この法律は子どもの意見を尊重することが大事になっています。どこまで子どもの意見を尊重できるのか議論が必要ですし、(共同親権を導入するとなれば)家庭裁判所の人員ももっと増やさなければなりません。子どもの意見を尊重することを念頭に議論するなら、もっと本腰を入れて対応しなければいけない問題だと思います。

吉田明世、塚越健司さん、ユージ


<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜〜金曜6:00〜9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/

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