北極~南極を制した日産「アリア」はほぼノーマル? 実車でわかった意外な事実

2024年3月29日(金)7時30分 マイナビニュース

北極から南極への過酷なドライブを終えた日産自動車の電気自動車(EV)「アリア」が日本にやってきた。EVは寒さに弱いと聞くが、過酷なミッションを完遂したアリアにはどんなカスタムが施されているのか。実車を確認してみると、意外にもそこまで大幅な変更点が見つからないことに驚いた。
EVで極寒の地は走れる?
2023年3月29日〜12月25日の約10カ月で「1823年時点の北磁極」から「南極点」までを踏破する「Pole to Pole」プロジェクトを成し遂げたアリアが横浜の日産グローバル本社に現れた。挑戦したのはクリス・ラムジー&ジュリー・ラムジー夫妻。総走行距離は約3.3万kmに及ぶ。
ノルウェーで普及率が80%を超えているとはいうものの、EVが「寒さに弱い」というのはニュースなどでもよく聞く話だ。極地を走ればバッテリー周りに何かトラブルが発生してもおかしくない。ところがラムジー夫妻によると、地球上で最も過酷な環境下でも、アリアの走りには何ら影響がなかったという。
北極〜南極間を踏破したアリアのカスタムは3つだけ?
とはいえ、とんでもないカスタムを施したうえでミッションに挑んだのだろうと思っていたのだが、実際に北極〜南極間を走り切ったアリアは、意外にもノーマルに近い状態だった。
聞けば、「自分たちが購入するEVで、こんなこともできる」と理解してもらうことが重要というラムジー夫妻の考えから、あえてカスタムは最小限にとどめたそうだ。
アークティック・トラックスが実施した主なカスタムは「39インチタイヤの装着」「緊急時用の牽引/リフトポイントの装備」「スキッドプレートの装着」の3点。いずれも、今回のチャレンジにおける悪路走破と安全性を考えれば手を入れざるをえないポイントだといえる。
EVならではのカスタムだと思えたのが「スキッドプレートの装着」だ。床下にバッテリーを搭載するEVだけに、ゴロゴロと岩が転がっているような地形を走行しているとき、バッテリーに岩がぶつかってしまったり、岩の上に乗り上げてしまったりすれば、破損や走行不能になってしまう可能性がある。そうしたトラブルを未然に防ごうというアイデアだ。
なぜ日産はオフィシャルパートナーになったのか
歴史的なチャレンジといえる「Pole to Pole」だが、この企画、日産発信で動き出したわけではない。簡単にいえば企画したのはラムジー夫妻で、日産が受諾したことで実現したそうだ。
日産はアリアの提供をはじめ、専門的な技術アドバイスや遠征資金のサポートなどさまざまな面でプロジェクトに関わっているというが、そもそもなぜ、日産はオフィシャルパートナーになることを決断したのか。日産 グローバルブランドパートナーシップ マネージャーのダン・フレッチャーさんはこう話す。
「いくつか理由はありますが、まず、日産としても、『EVでできること』を示したいという思いがりました。EVのいわゆるネガティブな部分、充電に関する話や『悪路は走行できないだろう』という固定観念を打ち破りたかった。そのなかで、彼らが挑戦しようとしているプロジェクトのスケールを聞き、日産の思いとも合致するし、また実際にそれが実現可能な計画であるとも考えましたので、サポートすることに決めました」
フレッチャーさんによれば「これはまったくの偶然」だそうだが、欧州でのアリアのローンチタイミングと合っていたことも、同プロジェクトを後押しした理由なのだという。
「北極〜南極間を走破したEV」という称号は欧州でアリアを販売するうえでも役に立ちそうだが、もしも失敗していれば、マイナスプロモーションにもなりかねなかった今回のプロジェクト。そのあたりについてフレッチャーさんは、「モンゴルラリーに参加していたこともあって、もともと彼らを知っていました。EVに対する情熱は本物ですし、彼らであれば、必ず達成してくれると信じることができました。おまけに、彼らは日産のお客さんでもありますからね(笑)」と話していた。
なお、今回紹介したアリアは3月31日まで日産グローバル本社ギャラリーで公開中だ。
安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。 この著者の記事一覧はこちら

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