90歳団地ひとり暮らしの多良美智子「旅は欲ばらず、目的をしぼったほうが印象に残る。日帰り旅行は荷物も軽く、宿泊代もかからないおトクさも」
2025年4月9日(水)12時30分 婦人公論.jp
「朝早く出れば、日帰りでも丸々1日使えます。宿泊しないので荷物は軽いし、宿泊代も節約できます」(写真提供『90年、無理をしない生き方』すばる舎/撮影:林ひろし)
85歳で孫と一緒に始めた、古い団地でのひとり暮らしを紹介するYouTubeチャンネル『Earthおばあちゃんねる』が人気となり、著書も累計18万部の大ヒット。それでも、毎日の暮らしは変わらないと話す多良美智子さん。90歳を迎え、体の衰えはあっても「無理をしない」生き方で、日々機嫌よく暮らしています。そんな美智子さんの90年の人生を振り返った著書『90年、無理をしない生き方』から、いくつになっても機嫌よく過ごす秘訣を紹介します。
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朝早く出れば丸1日使える、おトクな日帰り旅行
35年ほど前、テレビで「無言館」の特集を見て、行ってみたいと思い立ちました。長野県上田市にある、戦没画学生の慰霊美術館です。
日帰りで、ひとりでぱっと行ってくるつもりでしたが、行きづらい場所にあります。
絵手紙のお友達に、時刻表を見るのが好きでいつも電車の時間を調べてくれる人がいたので、「日帰りで行く方法があるか調べてもらえない?」とお願いしました。
すると、「日帰りで行けるわよ。私も行きたい」とのこと。それを聞いていた他の絵手紙仲間も、「日帰りなら、私も行きたい」と言い出し、結局5人で行くことになりました。
私は、「日帰りでゆっくりできないから、新幹線代がもったいないわよ」と言いましたが、みんなには「夫や子どもがいるから泊まりがけは難しい。日帰りのほうがいい」と逆のことを言われました。
朝早い新幹線に乗って、無言館に到着。館内に入ったとたん、戦争で亡くなった画学生たちが残した絵を見て、みんなで感動しました。
ひとりひとりの経歴を読んだら、「画家を目指して希望に満ちて、学校に通っていたのだろうな」と思って涙が出てきました。
無言館を出てからはタクシーに乗り、運転手さんに「おいしいお蕎麦屋さんを教えてください」とお願いして連れて行ってもらいました。
その後、新幹線で東京駅まで戻って、夕食を食べて解散。日帰りだったけれど、絵を見てお蕎麦を食べるという目的は達成し、十分楽しめました。
朝早く出れば、日帰りでも丸々1日使えます。宿泊しないので荷物は軽いし、宿泊代も節約できます。それに、家族が戻ってくる時間までに帰れるのは、主婦にとっては都合がいい。
「旅は欲ばらずに、目的をしぼったほうが印象に残る」という新しい発見もできました。
『90年、無理をしない生き方』(著:多良美智子/すばる舎)
京都へ夜行バスの旅
時刻表を見るのが好きなお友達とは、京都へ宿泊なしの旅行をしたこともあります。
目的は、北野天満宮の骨董市に行くこと。夜行バスで行き、1日京都に滞在して、また夜行バスで帰りました。
前日の夜にバスに乗り、朝6時に京都に着きます。うどん屋さんで朝食をとり、すでに始まっている骨董市へ。午前中いっぱいを使って品物選びをしました。
古い着物を1枚1枚見ていたら、店のご主人が「それでは時間がかかる。気に入ったものをみんな持って、隅っこでじっくり選んだらいいよ」と教えてくれました。
お友達と隅っこで「これどう?」「いいね、買おう」と言って、古くて安い絣の着物などを箱いっぱい買い込みました。宅配便で家に送ったので、その後は身軽に旅が続けられました。
午後は、1日500円(当時)のバス周遊券で、紅葉がきれいなお寺めぐり。
帰りは11時の夜行バスだったので、夜ご飯まで食べられ、1日たっぷり楽しめたリーズナブルな旅でした。
もちろん、泊まりがけで行った楽しい旅もあります。でも、お金がない、時間がないなどの制約があったときも、旅は楽しめました。
「青春18きっぷ」を乗り継いで東北まで行ったこともあります。何十年経っても忘れられない思い出になっています。
※本稿は、『90年、無理をしない生き方』(多良美智子:著/すばる舎)
の一部を再編集したものです。
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