「そこは謝るところだよね?」指摘しても「最後まで謝らない夫」への対処法と子どもへの影響
2025年4月20日(日)22時5分 All About
夫から「ありがとう」「ごめんね」という言葉が出てこないことに気づいたのは、結婚後のことだった。約束を破っても「事情があるから」と言って謝らない。子どもへの影響も心配だ。謎多き「謝らない夫」、どのように対処すべきなのだろうか。
夫が謝らない人だった
「結婚してから気づいたんですよね。夫がお礼や謝罪を言葉にしない人だということに。どうして気づかなかったのか、今でも自分を呪いますけど」自嘲気味にそう言うミチコさん(40歳)。6年前にマッチングアプリで知り合った男性と電撃的に結婚した。彼女の一目惚れだったという。
「ものすごくイケメンというわけではないんだけど、私のタイプだったんです。ちょっと薄めの顔立ちで、でも全体的にはほわんとした雰囲気で。優しい人だなと思ったし、実際、悪い人ではありません」
話題が豊富で考え方はポジティブ、仕事にも真摯(しんし)に取り組んでいる。2人で一緒に働いて家庭を作っていけたら楽しいだろうなと思ったという。それは外れてはいなかった。ところが唯一、ミチコさんが気になるのは「ありがとう」と「ごめんね」という言葉が彼から出てこないことだった。
「それまで互いに1人暮らしだったから、それなりに生活ペースができていた。でも一緒に生活するにあたって、いろいろすり合わせたほうがいいこともある。だから取り決めしたんです。家事の分担とか食事はどうするかとか。基本的にはそれぞれ自分のことはやろうということになったんですが、食事だけは時間が合えば一緒にしようと」
「何か悪いことした?」
あるとき、早く帰れると分かったミチコさんが「夕飯作っておくね」と連絡すると「7時までには帰れる。楽しみにしてる」と返信があった。ところが待てど暮らせど、夫は帰ってこない。「先に食べるよ」と連絡しても返信もない。「結局、夫が帰ってきたのは9時近かった。連絡くらいできなかったのと聞くと『いろいろ事情があってさ』って。いや、そこはまず謝れよという話でしょ? その後も言い訳は続いたけど、最後までごめんとは言わなかった」
その後も似たようなことが続き、あるときミチコさんは「あなたは謝らない人なの?」と聞いてみた。
「すると彼はびっくりしたように『は?』って。ごめんって言わないよねと言うと、『オレ、何か悪いことした?』と。約束を破るのは悪いことじゃないのかなと言ったら、事情があるからねって。事情があったら謝らなくてもいいのかとびっくりしました」
なにやら禅問答のようになっていき、ミチコさんは混乱したという。
謝る習慣がないという夫
とはいえ、仕事においては夫も時々「申し訳ございません」と言っているらしい。それはあくまで仕事をスムーズに進めるための方便で、「犯罪的に悪いことをしたわけじゃないけど、仕方がない」というのが夫の言い分だ。「日常生活で犯罪的に悪いことをしたわけじゃないから、謝る必要はないと考えているみたいです。子どものころ、親からこういうときは謝るものだと教えられなかったのか、友達とケンカして仲直りするとき、ごめんねと言い合わなかったのかと尋ねたら、そういう記憶はない、と。彼の両親は基本的に普通の人たちに見えたけどなあと思い、次に義両親に会ったとき観察してみたんです。
義母の好きなお菓子を渡したら、『わあ、うれしい。これ、おいしいのよね、大好き』とは言ったけど、確かにありがとうとは言わなかった。義父が料理を作ってくれたんですが、ちょっと失敗したらしく、義母がチクッと皮肉ったんですよ。でも義父はやっぱり『ごめんね』とは言わなかった」
もちろん、言わなくてもすまながっている風情はあったから気持ちは伝わらないではないのだが、それでも「ごめんね、焦げちゃって」と一言あれば印象は変わるのになとミチコさんは思ったそうだ。
息子は「ごめんね」「ありがとう」が言える子に
「どうやら夫一家は、“法律上罪になりそうな案件”ではない限り、謝罪はいらないと思っている節がある。なんだその妙なルールとは思いますし、不思議でならない。彼らに自覚がないのも謎です。私たちには3歳になる息子がいるんですが、しつこいくらい『こういうときは、ごめんねって言うの』『ありがとうは?』と言っています。保育園の先生に『お宅の息子ちゃんは、いつも大きな声でありがとう、ごめんねって言っています。そのおかげでみんなが言えるようになってる』と言われてホッとしました」
ありがとうとごめんねは、人間関係における「魔法の言葉」でもある。もちろん、言っておけばいいというものではない。心あっての言葉ではあるが、この二言は生きていく上でも重要なはず。
「夫は相変わらず、この2つの言葉とは無縁の世界で生きていますが、私はやはり時々指摘してしまう。そのたびにやはり謎の論理で言いくるめられてしまう。そのうち息子に真正面から指摘されたら、少しは考えが変わったりするのか。長い目で見てみようと思っています」
価値観が違うといえばそれまでだが、謎多き夫であることは確かなようだ。
亀山 早苗プロフィール
明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(フリーライター))