海外旅行の落とし穴、空港でATMを使ったばっかりに
2025年4月25日(金)17時1分 読売新聞
美しいブラジルの夜景。親切な人が多く、旅先では危ない目にあわなかったのに…
犯罪にはいつ巻き込まれるかわからない。カードの不正利用にあってしまった。調べてみると、海外旅行で日本人がやりがちな行動に「落とし穴」が潜んでいた。ゴールデンウィークで海外旅行に出かける人も多いこの時期、被害に遭わないために、注意するポイントを調べてみた。(デジタル編集部・大森亜紀)
ある日突然「海外ATMのご利用がありました」
朝起きてスマートフォンを見ると「海外ATMのご利用がありました」とメールが届いていた。立て続けにアメリカドルで208ドルずつ2回、日本円にすると約6万円が口座から引き出されている。日本にいてカードも手元にあり、覚えがない。
あわててカード会社に電話したら、「ペルーのATMから引き出されたようです」。ペルー……。行ったことすらない。すぐにカードを止め、再発行の手続きをした。
心当たりは、その1か月ほど前に南米に行ったことだ。被害にあったのは、海外旅行用のクレジット機能がついたプリペイドカード。でも、このカードは空港内で2度しか使っていない。ブラジルとアルゼンチンに到着後、空港内の両替所近くにあったATMで現地通貨を引き出した。両替所より手軽に引き出せ、街中にあるATMより、空港のATMの方が安全だと思ったからだ。
しかし、この考えが間違いだった。
実は危ない?空港内のATM
調べてみると、外務省の「海外安全ホームページ」に3月25日に「サンパウロ州の空港内に設置されたATMでスキミング被害が発生(邦人被害)」という注意喚起のお知らせが載っていた。2月24日の朝、ブラジルのサンパウロにあるグアルーリョス国際空港の両替所付近のATMを使い、後日、7万6000円を不正利用されたという。おそらく私が使ったのと同じATMだ。
スキミングとは、キャッシュカードやクレジットカードの磁気情報を専用機器で読み取ること。「すくい取る」という意味の英語「SKIM」が語源で、盗んだ情報から偽造カードが作られるなどして、不正に使われる。
在サンパウロ日本国総領事館にメールで問い合わせたところ、なんと同じ空港で2023年に2件、21年にも1件、同様の手口とみられる邦人のスキミング被害が起きているそうだ。考えてみれば、海外から到着すると、現地通貨を引き出す旅行客がおり、その国のATMに不慣れなために不正に気づきにくい。「スキミングの狙い所」なのかもしれない。
確かに、私が使ったATMも1台ぽつんと置いてあり、ほかのATM機と比べて、怪しいところがあるか、見分けることは難しかったように思う。外務省によると南米に限らず、ヨーロッパなどでも空港のATMで被害が起きているようだ。つまり、空港の中なら安全と思いがちなところに危険が潜んでいた。
人の往来が少ないところのATMは使わない
それなら、どうしたら被害は防げたのだろう。
領事館では次のようなアドバイスをくれた。
・ATMをやむを得ず使用する場合には、空港や人の往来が少ない場所に設置されているATMは避け、管理者が近くにいる銀行支店内等のATMを使用してください。ATM使用の際には、カード挿入口や暗証番号等を入力するキーパッドに不審な装置等が無いか確認してください。
・ATM使用後は通帳記帳やインターネットバンキング等で口座の残高を後日確認して、不明な引き出し等がないかを確認してください。もし不明な引き出しがあった場合、銀行やカード会社に連絡して口座を一時凍結する等の必要な措置を速やかにとってください。
・空港のATMは使用せず、たとえば、日本出発時に、少額の米ドル現金を用意しておき、空港到着後に有人の両替所で現地通貨を入手するという方法も考えられます。
私も、今回の被害に気づけたのは、カードを利用するたびにメールで通知が届く仕組みだったからだ。でも、なぜにペルーなのか。私の情報が国境を越えて、どこかに出回ってしまっているのだろうか、と思うと、怖い。旅行中に使った別のクレジットカードも含めて、明細に怪しい支払いがないかをこれまで以上に点検せねばと思う。
ちなみに領事館によると「現地警察への通報・届出は、原則被害者から行うことになっている」そうで、そのATMはまだ空港内にある、かもしれない。
オンライン予約にも注意
私の被害はプリペイドカードだったが、もし口座から引き落とすクレジットカードをATMで使っていたら、もっと被害額が多くなっていたと思う。
日本クレジット協会の統計によると、クレジットカードの不正利用に伴う被害額は2024年で約555億円にも上っている。私のように偽造されたカードによる被害は国内が1・7億円で海外は4・2億円。海外の方が被害にあいやすいようだ。
最近では偽サイトにクレジットカード情報を入力させて情報を抜き取るフィッシングサイトの被害も目立っている。旅先でのホテルやレストラン、現地発ツアーなどを自分で予約する際には、特に注意が必要だ。そちらの被害の方が急増中で、国内の被害額は約378億円、海外でも136億円とかなりの被害額となっている。サイトが本物かどうか、URLなど含めて確認した上で利用したい。
勝手に引き出されたお金は、明らかな不正使用だと証明されれば、10万円まではカード会社が補償してくれる、という。良かった。カードに補償があるのかどうかも海外旅行に行く前にチェックしておいた方が良さそうだ。