「ジブリ風AIアート」がSNSで炎上!? 政治利用にアメリカZ世代が抱く不信感とは?

2025年4月27日(日)20時50分 TOKYO FM+

ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40〜18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。
4月23日(水)のテーマは「ジブリっぽいAIアートが大炎上! アメリカZ世代のAI懐疑論その① AIアートに未来はあるのか?」。SNSで話題になった「ジブリフィケーション(ジブリ風AIイラスト)」について、ラボのメンバーが意見を交換しました。

※写真はイメージです


◆SNSで「ジブリ風AI画像」が炎上 その理由は?
すでに生活のあらゆる場面に溶け込んでいるAI。仕事や勉強に、生成AIを使っている人も多くいるはずです。アメリカのテック業界も現政権も、AIで世界での競争力を高めるために躍起になっています。
ところが実は今、アメリカZ世代の間ではAIに対する不信感が高まっています。成人したZ世代の過半数が、AIに不安を抱いているというデータもあります。デジタルネイティブで、誰よりもテクノロジーを駆使している世代であるはずのZ世代が、なぜAIに不信感を抱いているのでしょうか?
実は彼らのAIへの不信が表面化した大きなきっかけは、世界的に有名な日本のアニメである「スタジオジブリ」の画風を模したAIアートの炎上でした。
「ジブリフィケーション(ジブリ風AIイラスト)」として、宮﨑駿アニメ風のAIアートをSNSに投稿するブームが起こったことは、日本でも報道されました。純粋に楽しんでいたジブリファンもいたなかで、炎上が起こった理由は、そのアートの“政治利用”でした。
メアリー:生成AIのChatGPTが新しいイメージメーカーを発表したけれど、スタジオジブリの映画を片っ端から学習させたんだろうね。誰でもジブリ風のアートを作ることができるようになったんだ。もちろん誰も「ジブリ」だとは言っていないけど、見れば一目瞭然だよね。
それも生成AIアートを作っているのは一般人だけじゃないんだよ。ホワイトハウスやイスラエル国防軍までがトレンドに乗って、ジブリのAIアートを生成して自分たちの宣伝をしたんだ。正気の沙汰とは思えないよ。
それもありえない内容だった。ホワイトハウスのX(旧Twitter)は、トランプ政権に強制送還されそうな移民が手錠をかけられて泣いていたり、警察から逃げたりしている様子をジブリ風のイラストで表現してポストした。イスラエル国防軍も、軍を宣伝するアートをジブリ風画像で作っている。悪いけど、宮﨑駿は戦争に反対しているんだよ。彼の映画の多くは、戦争がいかに悪かを描いているというのに。
ノエ:宮﨑駿は戦争だけじゃなくてAIも好きじゃないと思う。彼の映画は、ただ戦争に反対しているのではなく、タブー的な先端技術がもたらす危険な未来に警鐘を鳴らしている。汚職とか強欲とか、人間の本性が創り出すものに対してだよ。だから「こうしたAIアートは宮﨑駿が望んだものではない」という意見が多いんだ。まあそれは別としても、なんだかものすごく嫌な感じがするアートではあるよね。
アメリカZ世代の多くは、「となりのトトロ」や「風の谷のナウシカ」など、宮﨑駿の手がけたジブリアニメに共感しながら育った若者たちです。そうしたジブリの画風を模したAIアートが不法移民の強制送還を面白おかしく表現したり、イスラエル軍のプロパガンダとして使用されたりと、政治的に利用されたことが彼らの怒りを買ったのが炎上の最大の理由だと考えられます。
さらにはジブリ作品の画風をAIに学習させてアートを生成する行為は、「明らかな盗用ではないか」という指摘もされており、AIにおける著作権にどう対処していくべきかという論争も大きくなっています。

(左から)ミクア、シェリー、ヒカル、ノエ、シャンシャン、メアリー/©NY-Future-Lab


◆AIアートには「魂も理性もない」?
その一方で、AIアートがあっという間に日常のものになりつつあるのも確かです。例えば、アメリカのアート・オークションを代表するクリスティーズで、この春にAIアートがおよそ1億円で落札されたことも話題になりました。
こうしたAIアートに関して、ラボのZ世代はどう感じているのでしょうか?
ノエ:僕はAIにもAIアートにも反対する気はないよ。AIは避けられない人類の進歩の一部だと思うからね。それにAIを創作活動に取り入れるアーティストによって、クールなアートがたくさん作られてきたのも間違いないと思う。
メアリー:うーん……。アートに関しては、私はAIに反対だな。ただAIをツールとして使って、それを商品として売るのでなければ、それはそれでいいのかもしれないけれど。でもAIアーティストと呼ばれるような人たちが、オンライン上で活動しているケースが増えているように感じるんだ。つまり、ボット(アプリやプログラム)に何を入力すればいいかを知っているだけで、お金をもらっているような人たちのことだよ。
自分の技術を上げるために何年も費やしてきたアーティストたちの作品が、AIロボットの学習のために盗用されて、芸術センスも何もない人に利用されているのって本当にがっかりする。AIが作ったアートには魂も理性もない。ミスをしてやり直すというような人間的なものも一切ない。ただ人が怠けるようになっているんだと思うよ。
アートって良いものを作るために、たくさんの努力を払わなければならないはずなのに。こうなると、作るほうも買うほうもみんなAI化しているとしか思えない。
「AIアートにはクールなものもある。創作活動に利用するのはいいのではないか?」という意見に対し、「AIを使うのは、アートという最も人間的で時間がかかる営みを否定することになるから、どうしても賛成できない」という意見も飛び出すなど、AIアートに対する見解は真っ二つに割れました。
成人したZ世代の過半数はAIに不安を抱いているというデータがありますが、一方で、ほぼ1年前の調査では、Z世代の4割がAIをポジティブに感じている数字がありました。この1年間でAIの目覚ましい発展があり、それを取り巻く環境も激変しました。今では、近い将来多くの仕事がAIに奪われるという論調が高まり、就職したばかり、またはこれから職を得ようとする若いZ世代の未来に影を落としているのも間違いありません。
「AIに最も近い場所にいるデジタルネイティブが、AIの未来をどう考えているのか? 次回はそれについて彼らの本音をお届けします」と、シェリーは話題を締めくくりました。
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4月23日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2025年5月1日(木) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40〜18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/

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