新しいのにどこか懐かしい…ふんわりだしまきがおいしい、京都の鉄板焼き酒場

2025年5月2日(金)6時0分 JBpress

(岡本ジュン:ライター)

仕事や出張の後、美味しいお酒と食事を楽しみたい…自分だけの贅沢な時間を過ごせる、間違いないお店をグルメライターの岡本ジュンさんが紹介する新連載。ぜひご期待ください。(JBpress)


鉄板が奏でる、おいしい音と香りに魅せられて

 カラリと引き戸を開けた瞬間から、ほっこりとした空気が漂っていた。「あれ、初めてなのになにかとても安心感がある」。それがこの店のファーストインプレッション。最初に訪れた日は、隣に大阪弁の女性2人が陽気に飲んでいて、すぐに気さくな会話に巻き込まれたのであった。

 店のカウンターにひとり立つのは、若き店主・米田奈央さん。この方が“とよこさん”かと思ったら、そうではなかった(笑)。店名は、京都市内で鉄板焼き屋を営んでいる祖母の名をいただいたという。

「おばあちゃんの店には子供の頃から毎日のように入り浸っていました」と奈央さん。だからその店で育ったようなもの。いつしか祖母のように、みんなに愛される店を持ちたい。そんな気持ちが降り積もり、鉄板焼きがメインの酒場をオープンさせたのだ。新しいのにどこか懐かしい気持ちになるのは、そのルーツにあったのだ。

 夢を実現したのは弱冠26歳。店主としてはまだまだ若いけれど「早く店が持ちたかったんです」とにっこり。奈央さんはふんわりした語り口ながら、きびきびと手際がよく、実に頼もしい。これも祖母譲りの才能なのかもしれない。


名物は目の前の鉄板で焼き上げる「だしまき」

 壁の黒板メニューには「かす汁」、「小芋煮」、「タコきゅうりもみ」など、鉄板焼きだけではない季節のお惣菜が並んでいる。「赤ウインナー」や「椎茸焼き」、「ナス豚炒め」に「焼きそば」、「たまご炒飯」と、鉄板メニューもどれも魅惑的だ。

 その中でも「初めてきた人はだいたいこれを頼んでくれはりますね」と教えてくれたのは「だしまき」。とくに中に明太子を入れた「明太だしまき」が人気だ。「だしまき」に使う卵もおいしそうだなぁと思ったら、たくさん使うので鶏屋さんから直接仕入れているのだとか。なるほどそれなら鮮度がいいのもうなずける。

 開店前は、京都の人気店で掛け持ちをしながら学んだという奈央さん。さらに祖母からも料理を伝授してもらったという。焼き物から焚き物まで、長年愛されてきた店の味もしっかり受け継いでいるのだ。

 オーダーが入ると、コテを器用に操って、様々な料理を仕上げていく。その手つきは鮮やかで、みるみる料理ができあがっていくのを眺めるのも楽しい。そしてカウンターに漂うおいしそうな匂いに、食欲が喚起されるのだ。他の人が頼んだ料理を作るのを見ているうちに、思わず唾をゴクリ。次の瞬間には「こちらもそれをください!」と口から出てしまっている。

 お酒はレモンサワーやハイボール、今どきのセレクトがきいているワインに日本酒と何でもあり。でも夕方早めのひとり飲みなら、サッポロラガービール、通称“赤星”をチビリチビリというのもオツかもしれない。

 営業は午後2時から。ランチを逃した中途半端な時間のちょい飲みにもピッタリだ。早め開店の理由を聞いてみると、「自分も休みの日にはだいたい2時くらいから飲みたいので」と教えてくれた。

 場所は京都市役所を北へ上がったあたり。人気エリアだけれど、店の近くは静かで、小さな入り口は知る人ぞ知る佇まいだ。庶民派の鉄板焼きと京都の今どき感が絶妙に交わるここは、京都の行きつけにしたくなる一軒だ。

住所:京都府京都市中京区河原町通二条上ル清水町352-4
TEL:075-211-2014
営業時間:14:00〜20:00

筆者:岡本 ジュン

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