茶道家だけがたどり着く内面の磨き方とは?なぜお稽古をするうちにマイナスの感情が消えるのか?心を解放してくれる「お茶」の効能について【2023編集部セレクション】

2024年5月15日(水)6時30分 婦人公論.jp


お茶のお稽古が、執着を手放すきっかけとなったようです(写真提供:photoAC)

2023年に配信したヒット記事のなかから、あらためて読み直したい「編集部セレクション」をお届けします。(初公開日:2023年11月10日)。
******世界的にも情勢が安定せず、厳しい環境に置かれている人や不安な心でいる人が多い中、あらためて日本文化の良さの学び直しを提唱するのは、茶道家の竹田理絵さん。茶室を開設して10ヵ国以上の国々で点前を披露し、日本の伝統文化を伝えてきた竹田さんいわく、「置かれた環境に左右されることなく、心穏やかに日々を過ごす」考え方が、茶道を通じて得ることができるとのこと。些細なことが気になり、ストレスをためないようにする心構えとは——。

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執着しない


皆さんも毎日の生活の中で、ひとつの小さな失敗や行き違いが気にかかり、なかなか頭の中から離れないことはありませんか。

悲しくなったり落ち込んだりして、ネガティブな感情に執着してしまうこともあるのではないでしょうか。

人間ですから、そういったこともあって当然です。執着とは、ひとつのことに心をとらわれて、そこから離れられない状態のことです。

執着を捨てることができれば、そのようなストレスから解放されるのはわかっていても、なかなか簡単にはいきません。けれども、それをずっと引きずることは良くありません。

生きやすくなる


つきまとうマイナスの感情を手放す努力をすることで、心の余裕が生まれ、生きやすくなります。

お稽古にいらした生徒さんが、「会社で嫌なことがあり、1週間ずっと落ち込んでいましたが、無心でお点前を続けていたら、いつの間にかそのことから離れることができて、立ち直るきっかけになりました」と喜んでくださいました。

お茶のお稽古が、執着を手放すきっかけとなったようです。

きっかけは何でも良いのです。友人との楽しいおしゃべりでも、美味しいものを食べることでも。とにかく他のことに目をむけることが大切です。もちろん、自宅やオフィスでお茶を点てるのも良いでしょう。

ひとつのことに執着せず、さまざまなことを柔らかな気持ちで受け入れていくと、毎日が心穏やかで生きやすくなりますよ。

目的から逆算して無駄を省く


毎日慌ただしく過ごしていると、時間がいくらあっても足りなくて、「効率よく物事をすませたい……」と思う人は多いですよね。

お茶事やお茶会の裏方は、準備することが多く、開始時間も決まっているため、手際よく動かなくてはなりません。

開始時間から逆算して、しなければならないことや順番などの時間割を決めていきます。

茶室の内外を掃除する、庭に水を撒く、花入れに花をいれる、床の間に軸を掛ける、炉に炭を入れる、お釜のお湯を沸かす、お茶道具を整える、お菓子を盛る、お抹茶をこす……などなど、粛々と目の前の仕事をこなしていきます。

時間割を組むことで、無駄を省き、手際よく仕事を行うことができるのです。

無駄を省くことが習慣に


お稽古中、私はよく生徒さんに「『空手(からて)』を意識しましょう」と伝えます。

お茶会でお客様にお茶を差し上げた後、そのまま空の手で戻るのではなく、空になった菓子皿やお茶碗がないか目配り、気配りをして、持ち帰ります。

海外でのお茶会では、充分な準備時間のない中でお点前を披露しなければいけないこともあります。そのような時も、日頃の習慣で手際よく身体が動き、無駄を省くことができます。

このように、時間の無駄を省くためには、開始時間から逆算する習慣をつけて行動することです。それが習慣化してくると、きっと手際も良くなり、「時間が足りない……」と焦ることもなくなるはずです。


時間割を組むことで、無駄を省き、手際よく仕事を行うことができるのです(写真提供:photoAC)

今を大切にする


茶道では、昨日でもなく明日でもない、今日の今、目の前のことだけに集中します。

心配事や不安があるとどうしてもそのことを考えてしまい、目の前のことが疎かになります。やらなければいけないことがあっても、「あれが解決してからにしよう」と、先伸ばしにしてしまうことがあるかもしれません。

人生は、選択の連続です。

その選択を行う上で、今を大切にする、今に集中することは重要です。

「卒啄(そつたく)同時」という禅語があります。

これは卵から産まれ出ようとする雛が内側から卵をつつくのと、外側から親鳥がつつくタイミングが合うことで、無事に殻が破れて雛が産まれる、という意味です。

気付いた時に行動する


このように、何事にも絶好のタイミングがあり、それを逃してしまうとチャンスは巡ってこないということを表しています。

昨日も明日も、すべては「今」の繰り返しです。

今、この一瞬を大切に行動することで物事のタイミングをつかむことができ、ひいては自分の人生が変わり、後悔のない充実した人生を送ることができるはずです。

自分だけが作ることができる自分の人生のために、いまベストを尽くしてみませんか。

※本稿は、『「お茶」を学ぶ人だけが知っている——凛として美しい内面の磨き方』(実務教育出版)の一部を再編集したものです

婦人公論.jp

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